このページの本文へ

人工クラゲ開発がカニカマに化けた!失敗から生まれたヒット商品列伝

2020年03月21日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

“失敗は成功の元”とはよく言ったものだが、日頃私たちが目にしているものの中にも、大きな失敗によって生まれ、業界を変えるほどの大ヒットを記録した商品が数多く存在する。失敗を成功へと導く秘訣をメーカーに聞いた。(清談社 真島加代)

カニカマはもともと
人工クラゲだった!?

人工クラゲの商品化には失敗したが、その研究を応用して誕生したのがかに風味かまぼこだ

 メーカーがさまざまな試行錯誤を重ねてカタチにする商品。その中には、失敗を経て誕生し、後に大ヒットにつながったものもある。本稿では“失敗”と“偶然”から生まれた、ふたつの超人気商品を紹介しよう。

“カニ風味のかまぼこ”と聞けば、多くの人が「カニカマ」を思い浮かべるだろう。多くの人に愛されているカニカマは、失敗と偶然の産物だという。1972年に世界初のカニ風味かまぼこ「かにあし」を開発した、水産練り物メーカーのスギヨに話を聞いた。

「実は当初、食用の人工クラゲを作るのが目的だったんです。カニカマが生まれた1972年頃は、日本と中国の関係が悪化して中国産クラゲの輸入量が激減し、水産珍味業界は代替品の開発が急務でした。その際、当社にもクラゲのコピー品開発の依頼が寄せられてプロジェクトが立ち上がったんです」(スギヨ広報担当・林俊宏氏)

 スギヨは「人工クラゲ」開発のために研究所を設立し、外部から専門家を呼び寄せて大規模なプロジェクトを発足。トライアンドエラーを繰り返した結果、昆布やワカメに含まれるアルギン酸に卵白を加えて塩化カリ溶液に漬ける方法で、口当たりの良い「人工クラゲ」の生産に成功したという。

「見た目、味ともにクラゲと遜色ないものが出来上がりました。しかし、これにしょうゆを入れると、原料の寒天に戻ってしまうことが判明。しょうゆが使えず調理できないため、人工クラゲの商品化は幻となりました」(同)

 人工クラゲは世に出なかったものの「せっかく生み出した製法を応用できないか」と、再び研究の日々がはじまったという。

「試行錯誤が続くなか、たまたま試作品を切り刻んで食べたところ、3代目社長・杉野芳人が『食感がカニに似ている』と感じたそう。これをきっかけとして、人工クラゲの開発から『人工カニ肉』の開発へとシフトしたのが、カニカマの原点です」(同)

まるでズワイガニ!
最高級カニカマ「香り箱」

 プロジェクトの方針を大きく変えて、同年に世界初のカニ風味かまぼこ「かにあし」を発売。発売直後から大きな話題となり、競合他社もカニカマ事業に参入するなど、食品業界にも影響を与える存在になったという。人工クラゲの失敗を成功につなげられた理由は「スギヨの社風にある」と、林氏は話す。

「当社の社風は、業界に先駆けて商品を開発し『世の中を驚かせて、お客様を喜ばせよう』というもの。世の中にない新しいものを作りたい、という思いがあります。当時もまた『人工クラゲ』という目的にこだわらずに、さまざまな可能性を模索できたのでは、と考えています。また、現行の商品を改良したり、新たな切り口で提案したりと、メーカー視点だけでなくお客様視点の発想を重視する開発型企業なので、多様なアイデアを取り入れていく傾向があります」(同)

同社を代表する最高級カニカマ「香り箱」。スギヨの合言葉通り「本物よりおいしいかも」と、ネットで話題になっている

「開発型企業」の言葉通り、同社のカニカマもさまざまな進化を遂げている。なかでも、注目を集めているのが最高級カニカマ「香り箱」だ。

「『香り箱』は“本物のカニよりもおいしいカニカマ”を合言葉に開発しました。形状や味、色合いなど本物のズワイガニの脚肉と見まごうほどの完成度が話題になり、多くのメディアでも紹介されています。練り物コーナーではなく、鮮魚コーナーに陳列されているのも『香り箱』の特徴です。スギヨとともに、水産練り物業界全体の売り上げの成長にもつながっていますね」(同)

 スギヨのカニカマは、海外進出もスタート。失敗を乗り越えたスギヨの開拓魂は、市場の拡大にも大きな影響を与えているようだ。

売れ行きの悪かった商品が
大ヒット商品に化けた

 続いては、ポッカサッポロフード&ビバレッジの「じっくりコトコト こんがりパンシリーズ」。2019年現在、カップスープ売り上げナンバー1を誇る同社のパン入りのカップスープにも、失敗と偶然の歴史があった。

 じっくりコトコトこんがりパンシリーズが登場した2002年は、カップスープの黎明期だった。

「当時、ちまたではスープ専門店がオープンし、食事としても楽しめるボリューム感のあるスープの存在が浸透し始めていた時代でした。しかし、朝の汁物としてのニーズが確立していたインスタントスープ市場は伸び悩んでいたんです」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ経営戦略コミュニケーショングループ・杉浦邦和氏)

 インスタントスープ市場を活性化するために、ポッカサッポロ(現・ポッカサッポロフード&ビバレッジ)は、当時人気を博していたスープ専門店にヒントを得てボリューム感があるスープの開発をスタートしたという。

松浦氏も「味覚的にも、サラダの味をジャマしておいしくなかった記憶が…」と苦笑する「こげぱんクルトン」。切ない

「食べごたえを楽しむスープの第1弾として『パスタ入りスープ』を開発しましたが、すでに競合他社のパスタ具材が人気を博していました。我々はパスタに代わる具材を発見しないかぎり、カップスープでは生き残れないと感じ、より革新的なスープの具材を探すことになりました」(同)

 さまざまな具材をスープに入れては試す日々。そんななか、偶然杉浦氏の目に留まったのが、売れ行きが芳しくなかった2002年発売の「こげぱんクルトン」だったという。

「クルトンとは、焼いたり揚げたりしたパンを細かく刻んだ食品です。今ではサラダのトッピングとして定着していますが、当時はあまり一般的ではなく、クルトン市場自体が小さかった。しかもクルトンの焼きを強くした『こげぱんクルトン』は、味の主張が強くニッチな商品だったため、残念ながら売り上げが伸びませんでしたね」(同)

 失敗作と思われていた「こげぱんクルトン」だったが、試作品のカップスープに入れて食べてみると「さまざまな発見があった」と松浦氏は振り返る。

灯台下暗しだった
パン×スープの組み合わせ

「『こげぱんクルトン』は、パン生地を2度焼きしてあるので、通常のクルトンよりもカリッとした食感と香ばしさが特徴です。サラダのトッピングとしては主張が強かったのですが、スープに入れるとクルトンの特徴が際立ち、とてもおいしく感じられました」(同)

 こげぱんクルトンとスープとの相性はバツグン。また、食べごたえがあり、満腹感が得られることから、追い求めていた“食べる具材”の条件を満たす味わいだったという。

「そもそも“こんがりパンとスープ”は、多くの人が一度は口にした経験があるごく普通の食べ方。とても身近な組み合わせなのに、当時はどのメーカーもパン入りカップスープを商品化していなかったので、すぐさま商品化に踏み切りました。また、当時私自身がトーストしたパンをスープに浸して食べるのがマイブームだったのもひらめきに役立ちました」(同)

2019年12月現在、カップ入りスープのナンバー1に輝いた「こんがりパン コーンポタージュ」。気軽に1品足せるのが人気の理由だという

 松浦氏のアイデアによって、ありそうでなかった「パン入りカップスープ」は誕生した。新しい商品…と考えると斬新な具材に目が行きがちだが、パンとスープという一見普通の組み合わせが、新たな可能性を導きだすケースもあるのだ。

「私たちが開発中に意識していたのは、新しさとお客様のニーズ。このふたつが合致する商品を作り出すために、さまざまな具材を試して『おいしさ』と『新しさ』を、あらゆる角度から繰り返し考察した結果、こんがりパンを入れるというひらめきにつながったと考えています」(同)

 2002年の秋に販売をスタートした「じっくりコトコト こんがりパン」は順調に販売数を伸ばした。2011年に発売された「こんがりパン コーンポタージュ」はカップ入りスープの売り上げナンバー1に輝き、累計販売個数5億を超えるメガヒット商品になっている。

 スギヨとポッカサッポロ、両社に共通するのは「多角的な視点」と「徹底した試行錯誤」だった。“偶然”と言ってしまえばそれまでだが、その偶然は開発者たちの努力がもたらすもの。彼らの粘り強さこそが、成功の秘訣なのかもしれない。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ