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「家事代行王者」ダスキン、格安業者が太刀打ちできない魅力とは

2020年03月19日 06時00分更新

文● 大来 俊(ダイヤモンド・オンライン

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格安事業者が次々に参入し、市場全体も伸びている家事代行業界にあって、今なおシェアトップに君臨しているのが、「元祖」のダスキン。日本で同社が初めて提供したお掃除代行サービス「メリーメイド」は、高価格にもかかわらず、圧倒的な品質の高さを誇っている。

スタートアップも狙う
家事代行ビジネス

価格は高いが、品質の高さはピカイチ。今もファンを着実に増やしている

 近年、共働き夫婦や単身世帯、高齢者世帯が増える中、家事の負担を減らすために家事代行サービスを利用する家庭が増えている。家事代行業の2017年の市場規模は前年比4.4%増の830億円で、2020年は940億円まで成長する見込みだ。

 最近では、ITを活用したベンチャーやスタートアップの参入も目立ってきている。例えば「タスカジ」は、利用者と家事代行者をマッチングさせるサービス。利用者は登録された個人の家事代行者をスマホで選び、直接やり取りして、掃除・洗濯、料理・作り置き、整理収納など依頼する家事の内容を決める。

 家事代行者ごとに実際に利用した人のレビューや実績などが掲載され、選ぶ際の目安になる。マッチング機能以外のサービスを省き、1時間1500円~という業界最安値で提供し、手軽に利用できる点も魅力だ。ただし、家事代行者によってスキルに差があり、料金も異なる。

 一方、スマホから簡単に予約できる「カジー(CaSy)」も注目株。家事代行を請け負うのは、タスカジのような個人ではなく、カジーが採用し、研修を受けたスタッフだ。見積もるための事前訪問はなく、掃除や料理など依頼内容に応じて適切な家事代行者が作業日に訪問する。

 料金はどの家事代行者でも1時間2190円~と、一律で分かりやすい。新型コロナウイルスの感染拡大を止めるため、政府から全国一斉休校の要請があったことを受け、家庭では子どもたちの昼食をどうするかが課題。それに対し、5日分の弁当のおかずを作り置きするプランを割引価格で提供するなど、ニーズに即応するビジネス巧者でもある。

 こうしたスマホで簡単に予約でき、低価格の家事代行サービスが新興勢力として台頭していることも市場拡大につながっている。従来、日本では「家事は自分でやる」が当たり前だったが、今は若い世代を中心に家事代行を「賢い選択の1つ」「必要経費」と見る向きも多くなってきている。家事のアウトソーシングは国内の家庭に着実に広がっているのだ。

業界屈指の掃除品質を支える
“フルスペック”なやり方

 この伸長する家事代行サービスを1989年に日本でいち早く始めた先駆者が、ダスキンが展開する「メリーメイド」だ。米国で家庭向けの掃除サービスを展開していたメリーメイド社と提携し、スタートさせた。

 だが、和室や畳、浴槽があり、オーブンではなくガスコンロを使うなど、日本家屋の特長や生活習慣は米国と異なる。米国流の掃除マニュアルは通用せず、日本向けにゼロからマニュアルを作成。テレビCMや地道なチラシの配布によって認知を広げ、今まで日本になかった家事代行サービスの市場を、孤軍奮闘で切り開いていった。

洗剤は風呂場だけでも浴室用の中性洗剤、タイルや水垢用、カビ取り剤、研磨材など7種を使い分け、水滴は1滴も残さず拭き上げる

 当初から定評があり、今も業界屈指といわれているのが、サービスの品質の高さだ。例えば、家事のうち掃除のみを代行する「お掃除おまかせサービス」。掃除は、掃除用具のレンタルや販売を展開してきたダスキンの得意分野だが、そのこだわりようが半端ではない。

 まず、事前訪問して利用者と綿密な打ち合わせをして見積もりを出す。そして、当日は同社オリジナルの洗剤やクロス、スポンジ、掃除機などを持参したスタッフがチームで訪問して作業をする。

「洗剤は風呂場だけでも浴室用の中性洗剤、タイルや水垢用、カビ取り剤、研磨材など7種を使い分け、水滴は1滴も残さず拭き上げる。リビングではテーブルの裏も椅子の脚も床も拭き上げて、窓の桟の汚れも隅々まで除去する。家中がホコリ一つなくピカピカになり、室内の空気まで変わったと感じるほどプロの仕上がりになる」と、メリーメイド事業部長の梶原千左氏は話す。

デジタル技術を駆使せず
顧客の生の声を拾う

 こうした高水準のサービスは、30年以上かけて培ってきたノウハウを凝縮し、時代に合わせて更新してきた約500ページ以上のマニュアルと、スタッフへの研修や教育の賜物だ。

高品質を支えるのは、30年以上かけて培ったノウハウを凝縮したマニュアルと、徹底した教育体制だ

 新人はまず1週間の教育を受け、半年にわたるOJTで育成。その後も月1回の勉強会で知識とスキルを磨く。スキルアップすると、現場をまとめるキャプテンになり、さらに新人を教育するトレーナーに昇進するなど組織体系も充実。掃除技術の社内コンテストや年間で優秀なチームを表彰する制度も設けている。掃除技術を向上させ、保持する仕組みが整っているのだ。

 また他社にはない特徴が、47都道府県全てにFC店舗を展開し、その数は約770店舗に及ぶ、“地元密着型事業”を展開している点。「店舗の責任者が目の届く範囲で人を雇用し、研修を行っている。トラブルがあればすぐに急行し、定期的に利用者宅へ訪問して声を聞くなどケアも手厚い。利用者は行き届いたサービスを安心して受けられることが差別化のポイント」(メリーメイド事業部)。

「タスカジ」のマッチングのような、省力化を図るための今どきのデジタル技術を使っているわけではない。むしろ、利用者と直に会って綿密に打ち合わせをして顧客の生の声を拾い、作業技術も人から人へ手間暇をかけて伝承している。そうした隅々まで行き届いた“フルスペック”なやり方を貫いているのが、他社には見られないメリーメイドの真骨頂なのだ。

レベルの高さに
競合他社から嘆き節も

 現在、メリーメイドでは、「お掃除おまかせサービス」に加えて、利用者の自宅にある用具を使い、掃除や洗濯、布団干し、アイロンがけ、買い物などを代行する「家事おてつだいサービス」、利用者と一緒に片付けや収納を行う「おかたづけサービス」も展開している。

 それぞれの料金はタスカジやカジーに比べると確かに高い。「お掃除おまかせサービス」は、4週間に1回の定期コース(浴室、洗面所、トイレを掃除)で1回当たり税抜き1万7000円かかる(東京・神奈川の場合)。だが、一度使うとその仕上がりに満足し、使い続けるリピーターは後を絶たない。

 メリーメイドのサービス提供件数は2013年度の73万9245件から、18年度は87万7525件へ、年間売上高は同期間で97億1800万円から111億2700万円へ右肩上がりで増えている。家事代行サービス市場のシェアは約10%で首位だ。

 業界では、あまりにサービス水準が高いことから、「ダスキンが家事代行のレベルを引き上げていくので困る」といった嘆き節も聞かれる。利用者だけでなく、競合他社のプロをも唸らせるほどの圧倒的な品質があれば、家事代行も強気の価格設定で攻められる。メリーメイドは高付加価値ビジネスの成功例として、他業界も含めて安易な低価格路線に走りがちな風潮に、一石を投じているといえるだろう。

(大来 俊/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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