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ヒートテックはなぜ暖かい?「身近なモノ」で科学がわかる!

2020年03月13日 06時00分更新

文● 左巻健男(ダイヤモンド・オンライン

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「ヒートテック」はなぜ暖かいのか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

常に変化し続ける環境や科学技術の進歩に伴い、複雑化する現代。しかし、そういった自然現象や科学技術を紐解いてみると、自分たちの身の回りにあるモノや出来事に置き換えて説明することができるのです。そこで今回は、『科学はこう「たとえる」とおもしろい!』(青春出版社)から、自然現象や科学現象がより身近に感じられる「たとえ」をいくつか紹介します。

「ヒートテック」はなぜ暖かい?

 古くから、羊毛(ウール)の繊維は、人体から出ている水蒸気を吸収して水にする能力が高く、その時の凝縮熱で温かくなる性質がありました。しかし、羊毛は「高価格・モコモコしてしまう・家庭で洗濯できない」という難点がありました。そこで、羊毛などよりも繊維を細くし全体の表面積を増やすことで水分を多く含むようにした合成繊維が開発されました。これが「吸湿発熱素材」です。

 日本では、2003年にユニクロが「ヒートテック」を発売し、定番商品となりました。化繊メーカーでは、水分吸収率が低い化繊にいかに多くの水蒸気を捉えさせるかでしのぎを削っています。なお、吸湿発熱素材でも、水分が飽和すればむれるし、冷えてしまいます。

 吸湿発熱素材を活かすためには保温性が重要です。保温性には空気が大いに関係しています。ウールのセーターを例にとると、網目が粗いため通気性がよくてスースーするように思いますが、ウールは熱伝導率が低いために冷やされにくく、細かいケバが空気を留めるために網目にある空気が移動しにくく体温を保持する効果が高いです。このため、体温によって温められた網目の空気が体をおおい、外気をさえぎってくれます。

 水鳥の羽毛は、細い繊維どうしの隙間に空気を多く含みます。羽毛からなるダウンジャケットなどは、布地に含まれる空気の割合が98%以上の素材で羽毛を包んでいるので断熱保温性に優れています。

 コットン(綿)は、繊維のない部が中空構造であるため、そこに大量の空気をためやすく保温性にも優れています。

 ヒートテックでは、レーヨンの外側に極細に加工されたアクリル(マイクロアクリル)を配しています。これを使うことで、繊維と繊維の間にできるエアポケット(空気の層)が大きくなるようにしているのです。

「氷河の動き」は「キャラメルの性質」と同じだった!

 先日、南極で観測史上初めて最高気温が20℃を超えたことが話題となりました。そんな南極で多く見られる氷河。「氷河」とは、地上に降り積もった雪(積雪)がしだいに厚くなって氷となり、重力によって流動するようになったものをいいます。

 降ったばかりの雪(新雪)は、結晶と結晶の間が空気で満たされていて、その密度は約0.05~0.15 g/立方cmです。積雪が厚くなると、上からの重みで空気が抜けていきます。密度が約0.83g/立方cm以上になると、結晶と結晶の間の空気はつながりを絶たれ、気泡になって閉じ込められます。これを「氷河氷」といいます。

 南極で新雪が氷河氷になるには数百年の時間がかかっています。新雪が降り積もれば氷河氷はどんどん積み上がっていくはずですがそうはなりません。南極大陸のように全域の氷が融けない低温域では、氷河氷が海に流れ込んで氷河から分離して海に浮かぶ氷山になります。新しく雪が増える分と減っている分のバランスがとれているのです。とすると、氷河氷は流動していることになります。まさに「氷の河」なのです。

 南極大陸のように1年中低温域で積雪の融解が起こらないところの氷河(寒冷氷河)が、なぜ動くのでしょうか?これは「粘弾性による塑性変形」が原因と考えられています。

 氷は圧力がかかると融ける性質があります。寒冷氷河でも氷河の底面には上からの重みで大きな圧力がかかるのですが低温下なので融けるまでにはなりません。季節によっては積雪が融けるような温暖氷河では、氷河の底面が融けて底面に薄い水の膜ができます。温暖氷河が動くのは底面の水の膜の上をすべりやすいからです。寒冷氷河は1年に数メートルないし数十メートルですが、それよりも温暖氷河はずっと動くスピードが大きいです。

 ここでは南極大陸のような寒冷氷河が流動する原因を見てみましょう。固体は、力を加えると伸縮したり変形したりします。硬い岩石でも押せば(目に見えないくらいですが)縮みます。押すのを止めれば元に戻ります。このようなばねのような性質を弾性といいます。すべての固体は弾性を持っています。この時の変形が「弾性変形」です。

 一方、飴玉やキャラメルは1日置いておいてもそのままです。しかし何カ月も置いておくと変形していたり表面がくっついたりします。この変形も塑性変形です。これは長い時間がたつと飴玉は蜂蜜やシロップのような粘り気のある(粘性を持つ)液体のような性質を持つからです。

 実は物体は100%弾性を持っているのではなく、多かれ少なかれ粘性も持っています。氷河氷も短時間では固体の性質(弾性)を示しますが、長い時間では粘性も示すのです。つまり、南極大陸にあるような「氷河氷」と「キャラメルや飴玉」は固体ですが、長い時間がたつと液体のような性質を持つという点では同じなのです。

「インターネット」は「伝言ゲーム」で説明できる!

 URLを入力すると、全世界どこでもすぐにつながるインターネットのサイト。普段何気なく使っていますが、よく考えてみるとこれは不思議です。パソコンやスマホはどうやって、目的のコンピューターへの経路を見つけて、瞬時につなげられるのでしょうか。

 インターネットのしくみは、バケツリレーや伝言ゲームのようなもので成り立っています。あなたのパソコンやスマホがインターネットにつながっている時、それはインターネットの端にあるプロバイダという会社のコンピューターにつながっているだけです。スマホであれば、それは電話会社のコンピューターかもしれません。

 パソコンやスマホは、インターネット向けの通信内容を何も考えずにプロバイダのコンピューターに丸投げします。そこには宛先のIPアドレス(とポート番号)が書いてあります。プロバイダのコンピューターは、さらに数個の別のコンピューターにつながっていますが、「IPアドレスがこの範囲ならこのコンピューターにつなげる」という簡単なリストを持っているだけです。

 そして宛先に書かれたIPアドレスに従って、つながっている数個のコンピューターのどれかにデータを丸投げします。プロバイダのコンピューターからデータを受け取ったコンピューターも同じです。さらにつながっているコンピューターのどれかに、まるで伝言ゲームのようにデータを丸投げしていくのです。

 なお伝言ゲームなのでたまにデータの内容を間違えますが、コンピュータ―の場合は、間違えると検出できるようになっています。間違えた場合は前のコンピューターに再送してもらいます。こうして、ほとんどのデータは無事に相手先に届きます。

 しかし、たまにはコンピューターが故障していたり、メンテナンスしていたりして、止まっていたりします。もしデータが届かないと、丸投げしようとしたコンピューターは「おかしいな」と気付き、IPアドレスの範囲と投げるコンピューターのリストを修正して別のコンピューターに投げます。さらに、つながっているどのコンピューターにも届かないなら、諦めて前に投げてきたコンピューターにエラーを返します。こうしてエラーがなくなるまでデータは戻り、その過程でネットワークの各コンピューターが丸投げリストを修正します。そうして、新しく選ばれた経路で何とか届くようにします。

 またコンピューターはどんなに頑丈でも、世界中で見ればしょっちゅう故障したりメンテナンスしたりしていますから、送り方のリストは日々常に更新されて、いつでも無事に届くよう自動的にメンテナンスされているのです。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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