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新名所「ご縁横丁」で始めたデータに基づいた戦略と企画作り

よみがえった出雲大社の商店街、成長継続の鍵はAirレジ・Airペイだった

2020年03月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: リクルートライフスタイル

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 60年に1度となる「平成の大遷宮」を機に、往年の人通りがよみがえった出雲大社前の神門通り商店街。参拝客を惹きつける新名所「ご縁横丁」を成長させるべく、各店舗で導入したのはリクルートライフスタイルのPOSレジアプリ「Airレジ」と決済サービス「Airペイ」だった。

「ご縁横丁」でフル活用されているAirレジ・Airペイ

猫一匹通らない商店街のV字回復

 恋愛のパワースポットとして有名な「出雲大社」。「平成の大遷宮」を2013年に行なったことで参拝者は急増しており、現在も参拝客は年間600万人にのぼっている。特に人気なのが大遷宮とともに開業した出雲大社前の「ご縁横丁」だ。「出雲のいいもの、おいしいもの」をコンセプトに、地元の特産品を販売する11店舗が軒を連ねており、2016年には予想より3年早く買い物客が100万人を突破した。

 今や大人気となったご縁横丁だが、かつては観光地として魅力の乏しい「シャッター通り商店街」だった。ご縁横丁を擁する神門通り商店街は、1912年の国鉄大社駅の開業により参拝者で賑わったものの、1960年代のモータリゼーションの流れとともに車での参拝客が増え、駅から歩いて参拝する客がどんどん減っていく。1990年にはJR大社線が廃止になり、神門通り商店街は「平日は猫一匹も通らない」と言われるくらいさびれた商店街となった。

閑散とした2007年当時の神門通り商店街。アスファルトの道路で横断歩道もなかったという

 確かに、私が訪れた2010年も、出雲大社の周りはかなり閑散としていた。平日で天候が悪かったのを差し引いても、観光地とは思えない寂れ方だった。出雲大社の駐車場に乗り付けた観光バスから出てきた観光客たちは、商店街を見ることもなく、出雲大社の本殿に直行・直帰して、あっという間に次の観光地に立ち去っていったのを覚えている。

 日本全体で見ても商店街の空き店舗数は増加傾向で、最新の調査では約7割の商店街が「衰退している」「衰退の恐れがある」と言われている。インバウンドの増加はあるもののの、人口減少や高齢化などの問題があり、存亡の危機に瀕した商店街は多い。これに対して、神門通り商店街が13年間で約3倍にまで出店数を増やすことができたのは、平成の大遷宮を機に、行政と地元民がタッグを組んださまざまな施策が実を結んだからにほかならない。

出雲大社詣でにストーリーを作る「ご縁横丁」の誕生

 まず平成の大遷宮の参拝者増加に備えて市で行なったのが、出雲大社近くの景観統一だ。従来、出雲大社と神門通り商店街の間の道路はアスファルトで、横断歩道もなく参拝者が観光しにくかった。これを参道にふさわしい石畳の道路に変え、横断歩道を新たに設置。景観を損なう電柱も地中化し、観光地としての導線や景観を整えた。

 この自治体の取り組みに、地元商店街も応えた。リードしたのは、100年続く地元老舗和菓子屋「坂根屋」の三木康夫氏。大阪のイベント会社に就職した後、地元出雲に戻ってきた三木氏は、坂根屋で働く傍ら、平成の大遷宮前にもかかわらず寂れていた神門通り商店街を盛り上げる「ご縁横丁」を構想したという。

ご縁横丁を統括する三木康夫氏

 三木氏がご縁横丁で目指したのは、いわば参拝客を魅了するコンテンツ作り。行政による景観や導線の整備により、出雲大社の周りは美しくなった。しかし、参拝客が参拝した後、なにを買ったり、なにを食べたりすればよいかのストーリーが欠けていた。箱があっても中身がなかったのだ。

 確かに人気の観光地にはストーリーが存在する。古都鎌倉であれば、参道を経由して鶴岡八幡宮に参拝し、小町通りでスイーツやコロッケを食べ歩きするのがストーリーだ。また、寅さんで有名な葛飾柴又であれば、帝釈天にお参りした後に、草団子やうなぎを食べるというのがストーリーと言える。

 では、出雲大社はどうすればよいか? 三木氏は地元企業でよいものを提供している事業者を募り、出雲大社前という一等地にご縁横丁を開業させた。飲食店やお土産屋など11店舗で構成され、島根産ののどくろ使用した「のどくろ丼」や紅白団子をあじらった縁起のよい「出雲ぜんざい」、縁結びの願いがこめられた「勾玉(まがたま)」のほか、もちろん名物の出雲そばもある。

「すし日本海」ののどくろ丼

 各テナントも三木氏の熱意とご縁横丁のビジョンに共感し、二つ返事で快諾し、出店が一気に増えたという。こうして平成の大遷宮以降も観光客は減ることなく、人気を継続させてきた。出雲大社ではなく、ご縁横丁を目的地としている観光客も増えてきている。

Airレジの導入効果は軽減税率・消費税対応だけじゃない

 V字回復は成功したが、ご縁横丁の成長を継続させるためには、コンテンツをアップデートが必要だった。初めての訪問客はもちろん、リピートする参拝客も新鮮に感じるコンテンツ作り。これを実現するために、ご縁横丁が採用した手段の1つが、煩雑な業務を減らし、企画の時間を捻出できるPOSレジアプリの導入だった。

 2019年10月の消費増税・軽減税率の施行により、ご縁横丁の各店舗はレジの買い替えを迫られていた。税制変更による負担を極力小さくし、経営に影響が出ないようにすることは各店舗の喫緊の課題だったという。この課題を解決すべく、ご縁横丁の店舗に導入されたのがリクルートライフスタイルの「Airレジ」だった。

 「0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ」を謳うAirレジは、文字通りiPad・iPhoneとインターネット接続があれば、どこでも利用できるレジアプリ。注文の入力や会計、売り上げ分析まで多彩な機能を持ち、レシートを出力するプリンターや現金を収容するキャッシュドロアなどの周辺機器を使えば、より便利に利用できる。消費税の変更はもちろん軽減税率制度にも対応している。

 Airレジを全11店舗中9店舗で導入したところ、現場スタッフからは使い勝手のよさが評価された。「スムーズに使い始めることができ、操作がカンタンで不満なく使えている。メニューや選択個数が見やすく、打ち間違いが減った」「レジ操作がカンタンになり、レジ締めもラクになった。リアルタイムで在庫管理ができるため、日々日々の仕入れ量を調整しやすくなった」などの声を得た。逆に経営者はいつでもどこでも売り上げが見られるという点に評価が集まり、「混んでいるため近隣の店舗や本部からヘルプを入れた方が良いな、という判断が数字を見てできた」「対昨年同月比を見ていきたいと考えており、そのようなデータも自動で蓄積されてカンタンに見れるようになるのが良い」などの声が出たという。

スムーズに導入でき、打ち間違いも減ったと語る出雲ぜんざい餅の宮本さん

Airペイの導入でキャッシュレスにも対応 次の企画は進む

 さらに6店舗ではAirレジといっしょに使えるお店の決済サービス「Airペイ」を導入し、クレジットカードだけではなく、電子マネーやQR決済に対応した。導入後2ヶ月で、ご縁横丁全体でのキャッシュレス決済比率は1.6倍に増加し、2020年には半分にまで達するのではないかと見られている。台湾や中国などのインバウンドでのキャッシュレス需要はますます増えると見込まれるため、商店街としていち早く手を打った形だ。

 AirレジとAirペイの導入は単に消費増税や軽減税率に対応できただけではなく、前述したとおり、マネージャー業務が軽減したことで、2ヶ月に1回実施している店長会議ではコンテンツの企画に集中できるようになったことだ。また、議論がAirレジの売り上げデータを元にした建設的な内容となり、戦略的な施策を打てるようになった。「数値が見えているから、次どうするかが明確になる。Airレジが入ったおかげで、各店舗のマネジメントのために僕が細かく動く必要なくなりました」(三木氏)

Airレジを見ながらの店長会議の模様

 実際、神門通り商店街における新規開業の店舗や施策は加速している。2019年は出雲発の婚約指輪・結婚指輪の専門ブランド「出雲結(イズモユイ)」のほか、ギネス世界記録のねがい雛と飲食物販、レンタル着物併設店「ねがい雛ミュージアム IZUMONO-en」、プレミアム生タピオカ専門店、道の駅ご縁広場「出雲物産館」が出店。交流する空間のある宿やクラフトビール屋も用意し、営業時間を深夜までにするなどナイトタイムエコノミーの検証も行なうという。

 どんな素晴らしい観光資源があっても、そのよさをアピールし続け、観光客に理解してもらえなければ成長は難しい。その点、ご縁横丁では危機意識を共有した意思あるメンバーが連携し、コンテンツを継続的に、タイムリーに投入している。そして、こうしたクリエイティブな企画に時間を捻出するために、Airレジ・Airペイのようなテクノロジーを一体となって導入したわけだ。今回紹介したご縁横丁の取り組みは、今後の地方創生を盛り上げる上での大きなヒントに思える。生まれ変わった出雲にまた訪れたくなった。

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(提供:リクルートライフスタイル)

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