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働き方改革で「やりがい」減少!?コミュニケーションが職場を救う

2020年03月06日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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近年、大企業を中心に進んでいる働き方改革。労働時間削減やリモートワークの実施など、さまざまな施策を講じて労働環境の改善に努めている。しかし、働きやすさを重視した結果、もうひとつの課題が浮かび上がってきたという。(清談社 真島加代)

働きやすくなったら
やりがいがなくなった

「働きやすさ」を改善するだけでなく、「やりがい」をアップする施策も考える必要がある Photo:PIXTA

 2019年4月に働き方改革関連法が施行されてから、自身の働き方に変化を感じている人はいるだろうか。法施行から半年後の2019年10月に、Great Place to Work(R) Institute Japan(以下、GPTWジャパン)が“働きがい”に関する調査(*)結果を発表した。

「2018年版と2019年版の調査結果を比較したところ『働きやすさ』が改善された企業の数が、低下した企業の数を上回りました。各企業の職場環境は整備されつつあるようです」

 そう話すのはGPTWジャパンシニアコンサルタント・今野敦子氏だ。GPTWジャパンは、アメリカを拠点に世界60カ国で各国企業の「働きがい」に関する調査・分析を行っている専門機関、Great Place to Work(R) Instituteの日本法人。同社のアンケートは「働きやすさ」に関する設問と「やりがい」に関する設問で構成されているという。

「『働きやすさ』の設問はワークライフバランス、労働環境、福利厚生に関する内容で、『やりがい』の設問は経営・管理者層への信頼、仕事への誇りや意味付け、連帯感や一体感など。合計58問を点数化して集計しました。参加した199社のうち、『働きやすさ』の改善がみられたのは104社(52%)。前年よりも大幅に改善されたのは『仕事と生活のバランスをとるように推奨されている』『必要なときに休暇がとれる』など、働きやすさに関する項目でした」

 残業禁止やリモートワークの推奨など「企業が従業員の『働きやすさ』を重視して改革を進めた結果だろう」と今野氏は分析する。

「しかし同時に、199社のうち107社(54%)の『やりがい』が低下したという結果が出ました。つまり、従業員は働きやすくなったものの、仕事へのやりがいが感じられなくなってしまったのです。これは“働き方改革の功罪”といえます」

 とくに大きく低下したのは「会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う」という仕事への“誇り”と、「経営・管理者層は事業を運営する能力が高い」という、管理者への“信頼”、2つの「やりがい」要素だったという。

(*)…『「働きがいのある会社」調査2019』/対象:参加企業199社/期間:2017年10月~2018年9月(2018年調査)、2018年10月~2019年9月(2019年調査)の2カ年の結果を比較。

コミュニケーションの質と量の低下が
モチベーションも下げる

今野敦子/Great Place to Work Institute Japan・シニアコンサルタント。名古屋大学大学院経済学研究科(経営管理学)修了。 フランス国立ボンゼショセ工科大学MBAコース取得後、外資系航空会社、医療系商社の人事部を経てリクルートマネジメントソリューションズに入社。人事領域において、採用・制度設計・人材育成など一連の業務に携わる。2009年、GPTWジャパン設立メンバーとして立ち上げに参画

 従業員のやりがいが低下した要因は「職場のコミュニケーションレベルの低下にある」と、今野氏は指摘する。労働時間を削減するために、社内イベントや面談など、職場でコミュニケーションを図る機会も廃止したことが、やりがいの低下を招いたという。

「会社として企業のビジョンや組織のゴールを明確に示していても、各職場で上司とメンバーの交流が減ると、会社のゴールと自らの仕事が結びつかず、会社に不信感を抱くケースもあります。個人が自分の仕事に誇りを持てないと、最悪の場合、モチベーションの低下を招きかねません」

 また、各人がバラバラに仕事を進めると、進捗の確認漏れや作業のダブりが発生。結果的に業務に“無駄”が生じて、生産性を下げる可能性も。何より、従業員のモチベーションの低下は、離職率にも影響する。せっかく働きやすくしても、従業員が辞めてしまえば元も子もない。

「コミュニケーションが取れている企業では、お互いの仕事の進捗をこまめに確認し合いながら、自分の仕事の方向性を柔軟に修正し、必要があれば協力し合いながら仕事をするので無駄が生じません。また、会社の一体感を重視している企業は、勉強会や運動会などのイベントに力を入れたり、会社のビジョンや価値観を社内で共有するために、社長と従業員が交流する機会を作ったり、従業員のやりがいにも目を向けています」

 近年注目されている“時短”や“効率化”と逆行した施策に思えるが、丁寧なコミュニケーションは業務の無駄を回避し、従業員のモチベーションアップにもつながる。コミュニケーションの質を下げるのと、業務の効率化はまったくの別ものなのだ。

ミーティングで
「ありがとうカード」の交換

 今野氏は“働きやすさ重視”の会社でも「管理職の立場から、部署・チーム単位でコミュニケーションの低下を改善できる」と話す。具体的な改善策を聞いた。

●1on1ミーティング
 いわゆる上司と従業員の個人面談。週1~2回の頻度で行うのが望ましいという。

「面談の内容は業務の進捗確認だけでなく、プライベートや今後のキャリアについてなど、パーソナルな面も話し合う時間をきちんと取るのがポイントですね」

●職場ミーティング
 会社の情報共有や業務の確認を行う「朝礼」やグループの「定例会」も、ぜひ活用してほしいと今野氏。

「職場ミーティングは、全員が集まる貴重な場です。この機会を利用して、よい働きをした人に感謝を記した『ありがとうカード』を渡したり、従業員同士でカードを交換したりする企業もあります。また、在宅勤務をしている従業員にはテレビ会議での参加を認める事例もありますね」

 GPTWジャパンが選出した“働きがいのある会社”のひとつ、ディスコでは、社長と従業員が顔を合わせるミーティングを、全国の支社で年間50回以上も開催している。他社に比べてミーティングの回数が圧倒的に多く、経営層と従業員の直接的な交流を大切にしているという。

●ランチ会、誕生日会
「上司や他の部門の管理職とメンバーのランチを会社負担で支援する方法。ランチという目的があるとリラックスして会話ができ、仕事やキャリアの相談もしやすくなります。回数を限定する企業や、会社のミッションやビジョンについて話し合うのを条件に会社負担のランチ交流を認めるなど、さまざまな事例があります」

 上司の自腹となると負担がかかるので、会社が支援する体制を整えられるとよい。終業後の飲み会は若手社員に敬遠されがちだが、ランチならば気軽に参加してもらえそうだ。

従業員の「やりがい」を軽視すれば
業績アップは見込めない

●オフィスの整備、工夫
 職場環境の改善にもつながる方法だが、コミュニケーションの活性化を重視したオフィス作りがポイントになる。

「個人のデスクを仕切るパーテーションをなくして上司に話しかけやすい雰囲気を出したり、フリーアドレスにしてさまざまなメンバーの隣に管理職が座れるように工夫したりする企業もありますね。新たな制度やITを導入してコミュニケーションを促進するのが目的です」

 また、オンライン上でカードを送り合えるサービスも登場している。たとえば、オウケイウェイヴでは、“感謝の気持ち”を表すデジタルグリーティングカードを従業員同士で送り合えるシステム「OKWAVE GRATICA」を開発し、自社だけでなく、他社への無償提供も実施。導入企業は、メンバー同士で感謝の気持ちを伝えやすくなり、同社の従業員満足度がアップしたという。

「働きやすい環境が整っても、従業員が『やりがい』を感じられない状況では、個人の能力を十分発揮するのは難しく、企業成長のための業績アップは見込めません。企業が従業員の『やりがい』にも目を向けられるかどうかが、働き方改革成功のカギを握っているかもしれませんね」

 職場環境を整えるのは大前提。さらに上を目指すなら、従業員の“やりがい”もきちんと満たす、本当の働き方改革を行う必要がありそうだ。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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