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神戸市立小の教諭間「いじめ」問題で2人免職、刑事事件の見通しは

2020年03月05日 06時00分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

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教員いじめ問題の懲戒処分に関する会見で謝罪する神戸市教育委員会の長田淳教育長(手前から2人目)(2月28日撮影) Photo:JIJI

神戸市教育委員会は2月28日、市立東須磨小学校の教諭4人が後輩の教諭に暴行や暴言などを繰り返していた問題で、弁護士3人の調査委員会が多数の悪質な嫌がらせを認定した蔀俊教諭(34)と柴田祐介教諭(34)を免職、女性教諭(45)を停職3カ月、男性教諭(37)を減給10分の1(3カ月)とする懲戒処分を発表した。兵庫県警は暴行容疑などで詰めの捜査を進めており、4人は近く書類送検されるとみられる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

原因は「加害教諭の資質」

 4人のほか、調査委の報告でハラスメント行為が判明した女性教諭(40)に懲戒ではない文書訓戒処分とした。

 また、パワハラが認定されたほか威圧的な態度で教諭らが相談しにくい環境にしたとして芝本力前校長(55)を停職3カ月、市教委への報告が不十分で問題への対応も不適切だったとして仁王美貴校長(55)を減給10分の1(3カ月)、教諭間の人間関係を的確に把握していなかったとして藤原高広元校長(62)を戒告とした。

 処分に先立ち、調査委は同21日、映像が拡散し批判のきっかけとなった男性教諭(25)に激辛カレーを無理やり食べさせるなど、計125項目の暴力や暴言、セクハラなどを嫌がらせ行為と認定する報告書を公表した。

 報告書は、25歳教諭を含め20代の男女4人が被害を受けていたと認定。原因として加害教諭の「個人的資質」を上げたが、管理職側の責任についても言及した。

 蔀教諭については25歳教諭にカレーの件などのほか「死ね」「くず」などと暴言を浴びせるなど89項目、柴田教諭は児童の前で殴ったほか女性教諭に悪質なセクハラを続けていたなどとして34項目を認定し、最も重い処分とした。

 停職となった女性教諭はカレーの件を含め、25歳教諭を「ポチ」と呼ぶなど13項目を認定。減給の男性教諭は足を踏むなど7項目と少なかったが、校長の指導後に報復と受け止められる言動などが悪質とされた。

 管理監督責任者の芝本前校長は25歳教諭に「俺を敵に回していいんか」などと恫喝(どうかつ)していたとして、報告書は「前校長の姿勢自体が原因の一端」と強調。

 高圧的で「パワハラが過ぎる」との指摘や「プチヒトラー」などと評する教職員もいたと指摘した。

子どもじみた行為の数々

 では、報告書が認定した行為は具体的にどんな内容だったのだろう。一部を抜粋した。

 ▽膝蹴りや両脚を抱えて振り回すなどプロレス技を掛けた▽LINEグループから脱退させた▽携帯電話から女性教諭にセクハラと受け止められるメッセージを送らせた。

 ▽養生テープで拘束し放置した▽かばんに空き瓶や氷を入れ机にごみを置いた▽顔や服に冷却スプレーを掛けた▽車で送迎させた▽手足を持ってプールに放り投げた。

 ▽更衣室のロッカーに大量のドッジボールを入れた▽激辛ソースを飲ませた▽暗い体育館や校舎屋上の物置部屋に閉じ込めた▽ふくらはぎにテープを貼りすね毛を抜いた▽運動会の準備中に指を金槌(づち)で打った。

 ▽髪や服を接着剤やのりまみれにした▽財布から免許証やカードをばらまいた▽車の屋根に乗り蹴った▽バスケットボールを繰り返し当てた▽頭に使用済みの雑巾を乗せた▽スケジュール帳にペンで乱雑に書き込んだ。

 ▽車内で灰皿代わりに使ったペットボトルの水をまき散らす▽首をボールペンで突く▽両手の人さし指で「浣(かん)腸」▽模造紙の芯で尻を打ちあざやみみず腫れができた▽携帯電話のパスワードを誤入力で使えなくした。

 ▽校長に呼び出されて指導を受け「何を言った」と述べた▽菓子やコーヒーの粉を口に入れた▽熱湯入りのやかんを顔に近付けた。

 などなど「幼稚園児か?」と、読んでいて恥ずかしくなるような項目が羅列されていた。

あきれる調査委、市教委は謝罪

 実際に、記者会見した調査委の渡辺徹委員長も「信じられないようなものもある。本当に子どもがやっているような行為」「全容を解明できたかは分からない。闇があると感じた」と感想を述べた。

 そして、「パワハラが過ぎる」と多くの教職員が指摘したにもかかわらず、芝本前校長が事実関係を否定し続けたことに「強い違和感を持っている」と批判するなど、歴代校長らの責任にも言及した。

 調査委に続いて記者会見した市教委の後藤徹也次長は「学校生活の混乱で心に傷を負った児童や保護者におわびする」と謝罪。

 再発防止について触れ「基本的な人権感覚から取り戻す必要がある。取り返しのつかない不信感を子どもに与えてしまった」とうなだれた。

 その夜に開かれた保護者会では、新型コロナウイルス流行の影響で、児童の通うクラスの教室に保護者が集まり、市教委幹部や仁王校長が別室からテレビ画面を通じて説明。

 処分を受けた教諭らの「相手の気持ちを考えられる立派な大人になってほしい。先生のようにならないで」などと反省するコメントが読み上げられた。

 保護者からは「管理職の処分が甘い」「コメント以外は報道で知っている内容ばかり」「今回の問題を受け、しっかり立て直してほしい」などの声が聞かれたという。

逮捕ではなく書類送検の可能性

 冒頭、加害教諭4人は書類送検される可能性が高いと書いたが、「なぜ逮捕しないのか」と納得できない読者の方も多いかも知れない。

 東京・池袋で母子2人が死亡、9人が重軽傷を負った暴走事故の際も、ネットに「上級国民は逮捕されないのか」などと怒りの投稿が相次いだ。

 しかし、逮捕というのは刑罰ではなく、刑事訴訟法199条の規定で「被疑者が逃亡する虞(おそれ)がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない」場合はできないのだ。

 4人はいずれも調査委に事実関係を認めているとみられ、異議申し立てをするとは思えない。

 おそらく県警の任意聴取にも被害届の内容を認めているだろう。だから証拠隠滅の恐れは考えられない。

 そして処分も受け入れる意向だろうから、いまさら逃亡することもあり得ず、県警からすれば逮捕する必要は全くないのだ。

 加えて、県警はいつでも書類送検できたはずだが、全国紙社会部デスクらの話を聞くと、調査委と市教委のメンツに配慮して処分を待ったという印象を受ける。

 そして、刑事処分は一般的に「社会的制裁を受けたかどうか」は重要な要素だ。だから今回、公務員としては最も重い「懲戒免職」を含む処分を受けたということで、書類送検、略式起訴、罰金刑というのが自然な流れだろう。

「あれだけひどいことをして、甘いのではないか」という意見もあるだろうが、殺人や重篤な後遺症が残るような傷害を負わせたわけでもない。

 加害教諭らの人生はもう詰んだのだ。警察・検察も鬼ではない。当然ながら刑事処分は受けてもらうが「もう十分、社会的制裁は受けた」という判断をするのが妥当なところだろう。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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