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インバウンド需要蒸発で「2・四半期連続マイナス成長」、回復はいつか

2020年03月04日 06時00分更新

文● 森田京平(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

1-3月期の実質GDP
前期比年率2・8%減の見通し

 実質GDP(国内総生産)が2019年10~12月期に前期比年率▲6.3%(前期比▲1.6%)と急落したことは、記憶に新しいが、新型コロナウイルス問題で訪日観光客の減少や輸出減少で、今年1~3月期も連続の「マイナス成長」になる情勢だ。

 中でもインバウンド需要への「依存度」は、2003年のSARS禍の頃に比べ格段に高まっているが、2月以降、最も多い中国本土からの訪日客は“蒸発状態”だ。

 中国からの訪日客は例年、夏に増えるので、夏までに新型ウイルスの問題が収束するかどうかが、当面のポイントになる。

 昨年10~12月期のマイナス成長の主因としては、主に3つの要因が考えられる。

(1)同年10月の消費税率引き上げによる消費の反動減と実質所得の目減り、(2)暖冬による季節性の高い消費行動(スキーなど)の抑制、(3)台風19号に代表される天災で、企業の生産活動や消費者の行動が鈍化したことだ。

 増税や台風といった一時的な要因が作用したとはいえ、同時期の経済成長率は主要国の間で、日本が突出して低かった(図表1参照)。

 問題は、その上で現在の2020年1~3月期がどうなるかだが、筆者は、2020年1~3月期も、日本の実質GDP成長率は前期比年率▲2.8%(前期比▲0.7%)に落ち込むと見ている。

 この場合、実質GDPは2四半期連続で前期比マイナスになり、いわゆる「テクニカル・リセッション」に該当する。しかも、その場合、2020年の成長率も▲1.1%(2020年度では▲0.3%)と落ち込むだろう。

インバウンド需要急減
輸出減で設備投資先送りも

 1~3月期もGDPが落ち込むと考えるのは、言うまでもなく新型肺炎(COVID-19)問題の影響がある。

 第1に、新型肺炎によって、中国からの観光客を中心にインバウンド需要(非居住者家計による日本国内での直接購入)が落ち込む。これはサービス輸出の急落という形でGDPの足を引っ張る。

 第2に、中国で製造業の生産活動が一時停止に追い込まれたことで、モノの輸出も減少を免れない。さらにはそれが、国内での設備投資の先送りにつながるだろう。

 第3に、感染を避けるため、消費者の出足が落ちることで、モノ・サービスを問わず、個人消費が落ちるだろう。

 こうしたことを考えると、実質GDPは昨年10~12月期に続いて、1~3月期も前期比マイナスを記録する可能性が高い。

SARSやH1N1の頃より
格段に高まった依存度

 中でも今後の景気は、とりわけ新型肺炎の影響によるインバウンド需要(サービス輸出)の下振れがどの程度続くか、に左右される側面が大きい。

 2019年10~12月期時点で、日本のインバウンド需要は年間4兆円台半ば、つまりGDPの0.8%程度を占めている(図表2参照)。

 これに対して、SARS(2003年)やH1N1(2009年)が問題になった頃の日本では、インバウンド需要は年間1兆円にも達しておらず、その存在感は、今と比べて格段に小さかった。

 インバウンド需要が急速に増えてきた背景に、訪日外国人客数の目覚ましい増加がある。

 10年前の2010年には861万人だった訪日外国人客数は、直近の2019年には3188万人と、一気に3000万人の大台を超えた。

 特に増加が目立ったのが中国本土からの訪日客数で、2019年に1000万人に迫った(図表3参照)。

 つまり、訪日外客数の約3分の1が中国本土からだ。これに対して、日本からの出国者数は年間2000万人にとどまる。

 このように「訪日」が「出国」を大幅に上回ることで、旅行収支(サービス収支の一部)はGDPの押し上げに貢献してきた。それが今回のCOVID-19問題で、一転して旅行収支は強い下押し圧力にさらされている。

中国本土からの訪日外客数
1月の90万人超えから2月は「蒸発」

 日本政府観光局(JNTO)は1月分までの「訪日外国人客統計」を発表している。

 COVID-19による日本のインバウンド需要や景気に対する影響を探る上では、にわかに注目度が高まっている統計といえるだろう。

 ただ同統計では、2019年12月分および2020年1月分は「概数」という位置付けで、いくつかの国籍別の詳細は確認できない。例えば、欧州からの訪日外客数は「概数」段階では発表されない。

 今年1月分の統計を過去の1月分と比べると、COVID-19の震源地となった中国本土からの急増ぶりが見て取れる。

 実際、今年1月には、中国本土からの訪日客数は初の「90万人超え」を記録した(図表4参照)。

 ところが、中国政府は新型肺炎の拡散防止の一環として、1月27日、国外への団体旅行を禁止した。したがって、2月以降は、中国本土からの訪日者数がほぼ蒸発することが確定している。

日本の夏が好きな中華圏
収束すれば回復の期待

 一般に、訪日外国人客数が最も増える時期は4~7月、つまり春から初夏にかけてだが、国籍別に見ると、異なる季節性がある。

 中国本土など中華圏からの訪日実質客数が増えるのは、一般に夏であり、一方で欧米からの訪日客数はむしろ夏を避ける傾向がある(図表5参照)。

 中華圏については1~2月の春節休暇がよく知られているが、中華圏の人々にとっては春節は海外ではなく故郷に帰る機会であり、一方、夏場が海外旅行に出かける時期のようだ。

 このことは、新型肺炎の収束が夏場よりも前に実現すれば、中華圏からの訪日外客数の増加局面に間に合う可能性があることを意味する。

 しかも今年の夏場は、東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)が開催される。

 東京2020については、中止あるいは1年延期といった声も出てはいるが、新型肺炎問題を夏場に間に合う形で収束方向に向けられれば、(1)東京オリンピック・パラリンピック開催、(2)夏場の中華圏からの訪日という2つの経路を経て、2020年後半には、マイナス成長から回復へと景気の視界が晴れるのではという期待を持つことができる。

(クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト 森田京平)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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