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絶望感しかない日本の若者が「保守化」せざるを得ない理由

2020年02月29日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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右肩上がりの経済成長が望めない日本社会。その社会情勢のなかで、「そこまでお金がなくても最低限の生活ができればいい」と考える保守的な若者が増えているといわれている。いまの若者がなぜ保守化してしまったのか、若者の意識の変化について、関東学院大学経営学部教授で、著書『若者保守化のリアル』(花伝社)がある中西新太郎氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

若者を世代で
一くくりにできない現代社会

自由を求める気持ちが希薄で、「ルールを守る方がラクでいい」と考える若者たちが増えている Photo:PIXTA

 一口に若者といっても、どうくくっていいのか意外と難しい。人によって若者像はそれぞれ異なり、大学生までと考える人から、社会人になっても若者だとイメージする人もいるからだ。

 特に現代社会において、世代で分けることは簡単ではないと中西氏は語る。

「国際的に若者の定義は21歳までとしていますが、たとえば日本の行政では、34歳までとなっています。以前は高校や大学を卒業後、社会人となった場合、大人として扱われていましたが、いまでは就職できたとしても、低賃金で生きていくことに精いっぱいなため、一人前とはいえなくなっている。そのような社会背景があることから、より一層、若者と大人の境目がわかりづらくなっているといえます」(中西氏、以下同)

 職に就き、親元を離れて独立するのが一般的だった傾向が崩れてきたのは、バブル経済崩壊以降の1990年代後半である。

 その時期は就職氷河期といわれ、これまで当たり前であった就職ができない若者たちがあふれ、のちに経済白書で97年はフリーター元年と命名されるほどだった。
 
「いまの若者は積極性がない」といわれるようになったのも、その時期にあたると、中西氏は指摘する。

「簡単に言いますが、戦後最大ともいえるような不景気による社会環境の影響があまりに大きかったのも確か。就職氷河期を経験していない上の世代が、若者たちの気質のせいだと、責任を押し付けるような見方をしていました。フリーターだけでなく、ニートや引きこもりの問題も出てきて、若者が消極的になってきたというイメージが定着し始めたといえます」

自由よりもルールに
縛られることを望む若者たち

 若者の消極化の文脈でいえば「いまの若者は上昇志向がない、現状に満足している」などといった、若者の保守化も指摘されている。

 いまの若者の考え方として、自由に価値を置かなくなってきていることも特徴的だと中西氏は指摘する。

「たとえば、80年代までは、中学や高校の制服はないほうがいいという声が多かったのですが、いまはむしろ毎日違う服装にするのが面倒くさいといった理由で、制服を望む子が大半。大学でも、もちろん学業が本業なので当然なのですが、昔と違って真面目に授業に出席する学生が多い。加えて、親からの仕送りが期待できない学生の場合、アルバイトもしないといけないほど忙しい。となると、なかなか要領良く生活する余裕もないのが現状。なので、そういう意味でも、自由よりもちゃんとルールを設けて守るほうが楽でいいと考える若者が多数派になってきています」

 中西氏によると、恋愛面でも若者たちは自分が勝手に決めつけたルールに縛られ、面倒くさいものだと敬遠しているのだという。

「先ほど言ったように、いまの大学生は授業やアルバイトに忙しく、趣味や恋愛に時間を使っている暇がないのが現状。さらに『毎日連絡を取らないといけない』『毎日一緒に帰らないといけない』などといったルールがあるものだと思い込み、わざわざ付き合おうとしない。恋人がいる学生に『クリスマスをどう彼女と過ごせばいいのか、おすすめのコースを教えてください』と聞かれたこともあります。それほど型にハマった思考に縛られた若者が増えているといえます」

理解不能な事件が起こる
絶望の日本社会

 アベノミクスで景気が上向いても、賃金水準は上がらないまま。いまの若者世代は、好景気を一度も味わったことがない世代だ。
 
 日本最大の匿名掲示板「2ちゃんねる」の創設者である西村博之氏は著書『このままだと、日本に未来はないよね。』(洋泉社)で、日本経済が右肩下がりになる可能性が高いと指摘した上で、「10年以内に日本の若者が暴動を始める」のではないかと予測している。

 中西氏は、デモのようなわかりやすい形というよりも、突発的に起きる事件が増えるのではないかと、推測する。

「2018年11月から12月にかけて、日本財団が18歳~22歳の男女3126人を対象にした調査によれば、『本気で自殺したいと考えたことがある』と答えた割合は全体で30%。男女別だと男性26%、女性が34%となるほど、約3割の若者が人生に絶望しているのです。一方、2008年の秋葉原通り魔事件や、2019年の京都アニメーション放火殺人事件に象徴されるような、はた目からは動機や目的が理解できない日本独特の事件がポツポツと出てきています」

「そう見ていくと、すでに行き場のない若者が行動に移しているともいえる。目に見える暴動よりも、どこで何が起こるのかわからない、というほうが、社会として問題です」

 ギリギリの生活を強いられ、希望の持ちようがない日本社会で生きる若者たち。決して満足できる状況ではないにもかかわらず現状維持を望むほど、彼らは疲弊しきっている。一見従順に見えて、内面にはやり場のない怒りを抱えている…。これが日本の若者の「リアル」なのだ。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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