Slack誕生の背景とコンセプト、変わらない「2つのコアアイデア」、日本ユーザーの特徴まで
「Slackは分断化するチームをつなぎなおす」Slack共同創設者/CTOに聞く
2020年03月02日 08時00分更新
10年前だったら、Slackは流行っていなかったかもしれない
――最近のSlackはエンタープライズ、より大規模な組織への取り組みも強めていると感じます。
ヘンダーソン氏:開発当初、われわれは40人ほどの小さな会社だったので「このツールは小さなチーム向けだろう」と考えていた。しかし実際には、ノンテクニカルな(非技術系の)組織やエンタープライズでも使えることが徐々にわかってきた。どんな企業や組織であっても、どうコミュニケーションを改善するか、どのようにすれば組織全体の「視点」をすり合わせられるのかといった課題は、基本的には同じなのだと気づいた。
あえてエンタープライズ特有の課題を挙げるとすれば、管理、セキュリティ、コンプライアンスなどの要件が複雑である点だろう。たとえばSlackを導入しているIBMの場合、グローバルで約30万人以上のユーザーを抱えている。こうした企業では当然、管理者も複数人いなければ管理できない。そこでSlackでは管理権限委譲の機能を提供している。また、組織改変やM&A(企業買収/統合)などにも設定変更で対応できる仕組みを用意している。
それから、組織が大きくなるとチェンジマネジメントも大切になる。10人規模のチームであれば、午後半日もあればSlackを導入して使い始められる。しかし数万人、数十万人規模のエンタープライズになると、導入に際しては社員トレーニングやサポートデスクも必要になるだろう。さらに、組織内でSlackをどう扱っていくのか、フォーマルなコミュニケーションと位置づけるのかといったすりあわせにも、それなりの時間がかかるはずだ。
――たしかに大きな組織になると、組織文化を変えるのも時間がかかるでしょうね。
ヘンダーソン氏:われわれも、すぐに新しいコミュニケーションスタイルへ移行できる組織ばかりではないと考えている。電子メールが登場したときも、それまでの紙のメモとの違いになじむまでには時間がかかったはずだ。新しいものになじむまでに時間がかかるのは、自然なことだと思う。
ただし、近年はLINE、WhatsApp、WeChatなど、さまざまなメッセージングツールが普及しており、Slackもそうした動きの恩恵を受けている。プライベートでそうしたメッセージングツールを好んで使っているユーザーは、会社にSlackが導入されてもすぐになじめるだろう。
……そう考えると、もしもSlackがあと10年早く登場していたら、現在ほどは流行らなかったかもしれないね(笑)。
社外とコラボできる「共有チャンネル」は日本企業での利用が活発
――日本市場の動き、日本のユーザー企業の動きはどう見ていますか。
ヘンダーソン氏:日間アクティブユーザー数(DAU)の規模で、日本は2番目に大きな市場になっている。日本のユーザーがより使いやすくなるように、Slackでも積極的に日本語化を進めたり、日本のユーザーが好む「送信」ボタンを付けたりしてきた。
日本企業の特徴的な動きとして、「共有チャンネル」をとても活発に利用していることが挙げられる。昨年12月に一般提供を開始した共有チャンネルは、社内ではなくグループ会社や取引先、パートナーといった社外メンバーとのコミュニケーションが行える機能だ。日本企業は関連会社が多いので、共有チャンネルが活発に利用されているのかもしれない。
――最後に日本のSlackユーザーと、これからユーザーになるかもしれない読者にそれぞれメッセージを。
ヘンダーソン氏:まず、すでにSlackを使ってくれている皆さんにはとても感謝している。これからも、Slackを使うことで、皆さんの仕事がより楽になるように願っている。
Slackを使うことで、職場の同僚との距離を縮めたり、仕事を楽しくしたりできる。まだSlackを使っていない皆さんには、ぜひそれを知ってもらいたいと思っているよ。