2歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは、と1年間書き続けてきましたが、2月22日、子がついに3歳児になりました。自分で着替えやトイレができるようになる一方、反抗力はさらに強化されるとその筋から聞いています。「いよいよ怪獣時代に突入ですね」との祝辞もいただきました。幼児第三形態。品川くんですね。今からヤシオリ作戦用のジュースでも買っておくべきか。
●「いのちだいじに」がデフォルトに
じつは子が第二形態のうちに台湾へ行く計画を妻が立ててくれていて、子連れ台北紀行でも書こうかと思っていたのですが、ウイルスのせいでお預けになったのが先週です。コロナではなくアデノで幸いでしたがまんまと家庭内にエピデミック、私も高熱を出してバタンキューとなりました。
熱にうなされながら内田真美さんの「私的台湾食記帖」を夢うつつでめくっていたとき、途中から自分が食べたいものより子に食べさせたいものを探している自分に驚きました。夜になったら饒河街観光夜市に行きたいねえ。アテモヤ(鳳梨釈迦)っていうパイナップル味のナシみたいな果物が信じられないほどうまいからね。あと夜市の胡椒餅、絶対好きだと思うよあれ。台湾風のピロシキみたいなやつなんだけど焼きたてで皮がパリパリじゃないと真価が伝わんないからお父さん並んどくわ。食べるときは肉汁が冗談みたいにブシャーって出てきて普通に口やけどするから攻略法考えとくね。
そんな食べ歩きの夢からさめて37℃台まで下がった翌日に妻と交代、親子で一日を過ごすことになりました。社会人なので仕事はあるのですが、感染症の子を見てもらえる病児保育は近くにないので自動的に看護休業です。ちなみに病児保育施設は全国の保育所全体の8.3%程度。季節によって需要が大きく変動する厄介な商売で、報道によれば6〜7割が経営赤字なんだそうですね。そりゃ施設も少ないわなと思う一方、確実に需要があるんだから、助成が利いてこなれた年会費で使える病児保育サービスがあってもいいんじゃないかと思ったりして。実はあるんですかね?
ともかく仕事を休んでアデノの子を見るのはやむなしなのですが、子は休むことなく「絵本読んで」「抱っこして」「トミカタウン出して」「お馬さんやって」とやってくるので激務です。「見てイルカさん!」と言いながらふとんにダイブしている子が見えるでしょうか。エサになるイワシのような目で子を寝かせようとしているのが私です。なぜ君は40℃あるのに私より元気なんだ。
結局翌日も看護休業をとり、子が完治したと認められたのは三日目のこと。休んでもらった妻に子を託し、気力体力を使いはたしてぼんやりしたまま仕事をすることになりました。それでも病児看護にさんざん苦しめられてきた去年に比べると、今年は比較的ラクになりました。なぜかといえば「アンタこれ以上やったらぶっ倒れまっせ」という体のサインを察せるようになり、無理をしないようになったからですね。「いのちだいじに」がデフォルトになったわけです。
●あきらめることで見える価値がある
これは病気をしてないときも同じで、休み明けは自発的になんもせずぼーっとする時間をとるようになりました。ツイッターを見ず、本も読まず、ぼーっと景色を眺めています。できることは減りますが、そのぶん気持ちがラクになるので「親にはなんもしない時間が必要なのだ」という強い意思をもってぼーっとすることになりました。おもしろツイートをだらだら消費する時間が減ったので、時間の使い方としてもわりとよかったんじゃないかなと思います。
いわば消極的マインドフルネスです。寝かしつけをしながら寝てしまうことで結果的に朝型人間になる「消極的朝活」に続く第2の消極的アクションですね。
人間あきらめが肝心と言いますが、「あーこんなん無理だわ」と思いきることで新しい世界が見えてくるってことはあるもんですね。ポジティブなあきらめというか手放すことで得るものはあるんだなと。36年も人間やってきて硬くなった価値観をほぐすにはいいきっかけかもしれないです。「子どもがいたら自分がやりたいことができない」という見方でなく、「子どもと一緒にやりたいことができてるじゃん」という見方が出てきたのも似たようなもんかもしれないです。これが親になるってことなのかもしれない。まあまだあきらめきれないことのほうが圧倒的に多いのですが。
コロナ対策の休校要請といい、いまどきの育児は社会との戦いみたいになっちゃっていますが、大変なんだからどうにかしてちょうだいと声をあげることも戦い方なら、大変なことを受け入れながらいまを楽しむこともまた戦い方で、どうせなら両方やっていけたらいいんじゃないかなと思います。価値観を更新することで第三形態の幼児とよろしくやっていくことも戦い方の1つじゃないかなどと考えている今日このごろです。そんなわけでここんとこ休載が増えたことも戦い方のひとつと思って見逃してもらえると、それとこれとは話が別?どうですかジュースでも一杯……。
(2月14日、2月21日の連載は休みました)
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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