Office 365を使いこなして仕事を早く終わらせたい皆様にお届けする本連載。今回は2020年1月中旬にMicrosoft Searchの標準検索サイトとして既存設定をBingに書き換えるとした発表が2月上旬に撤回されるまでの流れに注目する。
Microsoft Searchの既定検索エンジンがBingに?
ダイレクトメールによる勧誘や特定サービスのアナウンスに代表される広告を回避する「オプトアウト」は、プライバシー保護の観点においては常識の1つとなった。日本では2008年に改正した「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」によって、オプトアウト式メールは原則として認められていない。昨今ではトラッキングクッキーを広告配信などに用いることを理由に「オプトアウトCookie」も重視され、2020年2月にはGoogle ChromeがサードバーティCookieの廃止を決定した。
さて、マイクロソフトは2020年2月リリース予定のOffice 365 バージョン2002から、WordやExcelなどが供えるMicrosoft Searchの既定検索エンジンをBingで上書きすると発表した。その理由として同社は「Microsoft Searchの展開プロセスを簡素化するため」と先のブログで述べている。そもそも検索サイトの選択はOffice展開ツールやグループポリシーの利用を必要とし、GUIダイアログによる設定項目は用意していない。
Microsoft Graphを利用してメールアドレスやドキュメントの検索を可能とするMicrosoft Searchの利便性は高いものの、ブログを読み進めると「BingのMicrosoft Search拡張機能がインストールされた後、ユーザーが初めてGoogle Chromeを起動すると、いくつかの簡単な手順を経て検索設定を元にも同オプションが示される」とある。つまり、ブラウザーハイジャッカーだ。
当然ながら反対意見を主体とした多くのフィードバックがブログ記事に投稿され、中には「史上最悪の決断の1つ」「OS/Officeを独占して、ユーザーに(中略)強制する虐待的な行動」といった痛烈な意見も並んでいる。WordやOfficeからWeb検索を実行する機会が多くないからこそ、Bing検索に目をつぶっていたユーザー諸氏も、コミュニケーションやSaaS利用の窓口といったWebブラウザに手を加えられては、たまったものではない。
その結果、Microsoftは米国時間2020年2月11日、[公式ブログ](https://techcommunity.microsoft.com/t5/office-365-blog/update-to-microsoft-search-in-bing-through-office-365-proplus/ba-p/1161030)で計画の結果を発表した。具体的には「BingのMicrosoft Search拡張機能の展開見送り」「システム管理者は展開の有無を選択できる」「AD(Active Directory)に参加するOffce 365 ProPlusは近い将来に展開を実行する」「エンドユーザーが検索エンジンを設定できる余地は残す」と説明している。
同社はAD参加企業がオプトアウトを選択できるのか明言しなかったが、利用者が自由に選択できないのは大きな問題だ。Bing利用者数の増加を求める同社が機能実装の観点からOffice 365アプリケーションに自社ソリューションを強制するのは100%譲っても、Webブラウザにまで手を広げるのは愚策だと筆者の私見を述べておきたい。
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