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北朝鮮レストランの闇営業、新型肺炎が追い風になる意外な理由

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外貨を稼ぐ目的で外国に出店し、北朝鮮政府や関連企業が経営している北朝鮮レストラン。国連制裁の履行期日だった昨年12月21日以降、全滅するともみられていたが、実際には中国やカンボジアで闇営業されているようだ。

国連制裁で閉店のはずが…
横行する「闇営業」

2017年末に閉店した大連の北朝鮮レストラン。丹東の店では、今も闇営業をしておりステージショーも行われている Photo:San Miguel Chikuzen(以下同)

 北朝鮮レストランの最終デッドライン(国連制裁履行による北朝鮮人労働者の帰還完了日)とされた昨年12月21日。だが、中国は2018年1月の1度目のデッドライン以降、北朝鮮人の滞在ビザの調整を進めていたので、多くの北朝鮮研究者たちは、22日以降も店舗数を絞って営業を継続するとみていた。事実、2020年を迎えても瀋陽にある中国最大のコリアンタウン西塔の「平壌館」などは営業継続が確認されている。

 しかし、中朝国境の丹東は、予想に反して22日に全店休業した。現地旅行会社によると、業界内でやり取りするグループチャットへ「22日から北朝鮮レストランは全店休業するのでお客を案内しないように」との注意が流れたという。

 丹東の北朝鮮レストランが全店休業した理由を丹東の朝鮮族実業家は、丹東は中朝最大の交易都市のため、日本など各国マスコミなどが頻繁に張り付き中継したり、現地取材したりをしており、その中でも北朝鮮レストランは非常にシンボリックな存在のため目立つから休業させたのだろうと話す。

 ここで閉店ではなく休業という表現を使っているところがポイントとなる。

 年明けの1月中旬、前出の朝鮮族実業家から、今でもひそかに営業しているとの情報が入る。詳細を聞くと、団体で事前予約すればその団体向けに店を開けて料理を提供し、ステージショーも変わらず披露しているという。店内は外へ明かりが漏れないように暗幕のような厚手のカーテンで囲われているという。北朝鮮人の女性スタッフはローテンションで担当しているようで、顔ぶれも毎回変わる。意味はまったく違うが、まさに“闇営業”といえる。

 同様の闇営業は、カンボジアでも行われていた。12月22日、韓国メディアが「カンボジアで営業していた北朝鮮レストラン全6店(プノンペン4店、シェムリアップ2店)が一斉閉店」と韓国国内版のみで報じた。

 しかし昨年末、プノンペン在住者に確認すると、表の看板の電気は確かに落ちているが、電話連絡すれば裏口から入店でき、変わらず営業しているという。昨年末の時点では、8割ほどを中国人観光客が占めており、最終デッドライン前となんら変わらない光景だったそうだ。

 そのカンボジアは、今年1月上旬に政府が、北朝鮮レストラン全店を閉店したことを公式発表している。政府がわざわざ発表するところにカンボジアの焦りを感じるのは気のせいか。

「日本人はお断り」
新型肺炎が追い風に!?

 さて、1月中旬に、闇営業している丹東の北朝鮮レストランで食事をした中国人を通じて、北朝鮮人マネジャーへ「日本人も10人くらいのグループで予約すれば利用できるのか?」と確認してもらったところ、「日本人は、マスコミとつながっている可能性があるのと、SNSに盛んにアップするので…」と断っているそうだ。だが、もし中国語が堪能で中国人グループに混ざって入店すれば分からないと思うので、ぜひチャレンジャーからの情報に注目したいところだ。

 今後気になるのは新型肺炎だ。北朝鮮は、1月22日午前に新型コロナウイルス感染対策で即日、外国人観光客の入国を全停止することを発表した。発表即実施は、北朝鮮だからこそできる芸当といえる。

中朝交易の大動脈である鉄橋を通行する車両は1月22日以降、途絶えている

 入国停止されたのは、観光客のみで、商用ビザを持つ外国人や北朝鮮人は入国、帰国はできる。しかし、入国者は、外国人、北朝鮮人問わず全員が30日間の隔離処置を受けるという。北朝鮮なので隔離施設の環境は想像に難くない。

 そのため現在、中国滞在中の北朝鮮人は帰国難民となっており、長期間の隔離を避けるため帰国を希望しない人も多い。近々で思い出されるのは、2014年12月から15年3月まで4カ月ほど、同様に国境を封鎖したエボラ出血熱対策のときだ。このときも北朝鮮人の帰国者全員が数週間隔離される処置が取られ、政府指導者クラスの人間も隔離されたとされる。当時も帰国を延期して中国に滞在し続けた北朝鮮人が多くいた。

 外国人が国外での滞在を延長するためには、ビザ問題がどうしてもついて回る。今回もエボラ出血熱のときと同様に、中国政府が「特例」として延長を認めている可能性が高いと、丹東関係筋は指摘する。

 しかも、丹東に張り付いて取材していた日韓など外国メディア陣は、新型コロナウイルス問題により、感染が広がる武漢など中国各都市の取材で忙しく、丹東の北朝鮮動向を追いかけている暇がなくなっている。そのため現在、丹東での外国メディアのマークや注目は大きく下がっている。

 中国がこっそりとビザ延長や特例処置を実施するなど、北朝鮮側へ配慮を与えているという情報があっても、裏取りがいつもより難しい状況になっている。そうすると、北朝鮮にとっては、丹東での活動がしやすくなったり、夜間の鴨緑江でこっそりと物資などを運ぶ密貿易なども、非常にやりやすくなっていたりするのかもしれない。その意味では、新型肺炎は北朝鮮にとって起死回生の好機となる可能性もある。

(筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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