このページの本文へ

本田圭佑はどこへ向かう?ブラジル移籍、サッカークラブ創設の成算

2020年02月07日 06時00分更新

文● 藤江直人(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
オランダのフィテッセを48日間で電撃退団した本田圭佑 Photo:ANP Sport/gettyimages

オーバーエイジでの東京五輪参戦を野望として掲げる元日本代表のMF本田圭佑が、五輪イヤーに入って再び周囲を驚かせている。ブラジルの古豪ボタフォゴを新天地に選び、南米大陸へ向かう直前には自身が発起人となる形で新たな形態のサッカークラブOne Tokyoを創設。今春に開幕する東京都社会人サッカーリーグの一番下となる4部から船出させる。投資家や起業家を含めて、さまざまな顔を持つ33歳がたぎらせる情熱の源泉はどこにあるのだろうか。(ノンフィクションライター 藤江直人)

スペインを熱望しながらオランダへ
そして、ブラジルを新天地に選ぶ

 世界最大のカーニバル開催を今月下旬に控えたブラジル南東部のメガシティ、リオデジャネイロがひと足早くヒートアップしている。この町を本拠地として19世紀末に創設された古豪、ボタフォゴへの加入が決まったMF本田圭佑の到着を、今かと待ち焦がれているからだ。

 昨年11月に加入したオランダのフィテッセを、わずか48日間所属しただけで電撃的に退団。昨年末から再びフリーの状態になっていた本田は、名古屋グランパスから数えて8チーム目となる所属先として、オファーを受けていたボタフォゴ入りすることを先月31日に公表した。

 ブラジル発の報道で、ボタフォゴが獲得に動いていることが明らかになったのが先月24日。おりしも自身が発起人となって立ち上げられたサッカークラブ、One Tokyoのトライアウトが行われた東京都調布市のアミノバイタルフィールドを、本田は視察のために訪れていた。

 トライアウトの合間に取材へ応じた中で、当然ながらボタフォゴの件も質問としてあがる。取材に訪れていた海外メディアから、ボタフォゴ入りする可能性の有無を直撃された本田は「まだ何も決めていない」と前置きした上で、描いているビジョンを英語で説明している。

「ボタフォゴから代理人を務める僕の兄にコンタクトがあったことは知っているが、今は数多くのクラブと話をしている最中であり、以前から話しているように、僕自身はヨーロッパでプレーしたいと望んでいる。偉大なクラブのひとつであるボタフォゴが興味を持ってくれたことは非常に嬉しいが、しっかりと考えて結論を出したいので、現時点でイエスかノーかは言えません」

 今夏の東京五輪へオーバーエイジ枠で参戦して金メダル獲得に貢献したい、という野望をぶち上げている本田は、昨年5月にオーストラリアのメルボルン・ビクトリーを退団。森保一監督へアピールするためにも、レベルの高いヨーロッパへ新天地を求めるプランを公言していた。

 しかも、ヨーロッパの中でもスペインを熱望していた。だからこそフィテッセ入りは少なからず周囲を驚かせたが、加入直後にインターネットテレビ局『AbemaTV』のニュース番組「Abema Prime」に出演した本田は、こんな言葉を残している。

「スペインの奴らが僕の実力を見誤って、なかなかオファーを出さなかった。自分が目指しているのは東京五輪出場と明確なので、そこで出て勝つために、自分にはどういうプレーが必要なのか、成長が必要なのかというのを逆算すると、スペインという答えが出た」

 フィテッセへの加入は、ロシアのCSKAモスクワでプレーしていた時の恩師、レオニード・スルツキー監督の存在が大きかった。練習に参加するだけだった当初の予定が、再びタッグを組みたいと望んだスルツキー監督のひと言で急変したと、本田は「Abema Prime」で明かしている。

「スルツキー監督がすぐに獲りたいと言ってきてくれて、考えが変わりました。冬(の移籍市場)まで待とうかな、と考えていたけど、オランダでプレーできるなら悪くないな、と」

 こうした背景もあって、後ろ盾的な存在だったスルツキー監督が解任されたフィテッセとの契約をすぐに解除した。ブラジル発の報道によれば、ボタフォゴと交渉している間にスペイン2部のクラブからもオファーが届いている。しかも給与面では、ボタフォゴの倍の金額が提示されたという。

 それでもボタフォゴを選んだ理由に関しては、現時点で本田からは語られていない。おそらくはスペイン2部よりもブラジルの方が高いレベルにあり、成長を望めると判断したと推測される中で、その時々の思いや考えを頻繁に呟いている自身のツイッター(@kskgroup2017)へ、ボタフォゴ入りを表明する直前の1月31日の午前中に本田はこんな文面を投稿している。

<フィテッセから逃げ出したと言っている人達
オリンピックに選ばれるわけないと言ってる人達
ボタフォゴのオファーも客寄せパンダと言ってる人達
本田圭佑の上から目線で自信満々な感じが嫌いな人達
本当にありがとう。心からあなた達に感謝してます。そして愛してます。>(原文のまま)

初めてゼロからクラブを立ち上げ
One Tokyo運営責任者は大学生

 あえてビッグマウスを放って退路を断ち、さまざまなプレッシャーを成長への、前へ進むためのエネルギーへと変える。本田が抱いてきた矜恃が凝縮されている123文字と言っていい。さらにツイッターをさかのぼっていくと、1月14日にはOne Tokyoの立ち上げを唐突に宣言している。

<2020年、本田圭佑、サッカークラブをみんなと一緒に創り上げるためゼロから立ち上げます。(中略)選手もゼロからなので1/24にトライアウトをします。勝利にこだわる選手に集まって欲しいです。>

 都内近郊の勤務または在住で、毎日トレーニングが可能――を条件として、同20日正午まで募集された選手選考会には総勢530人が応募。その中から書類選考で110人に絞られ、当日には90人が集結した。唐突な思いつきでOne Tokyoを立ち上げたわけではないと、本田はこう説明する。

「プロサッカークラブの経営にはずっと興味があって、ご存じのようにオーストリアでそういう経験をしていますし、カンボジアとウガンダでもプロクラブを経営しています。東京でも3、4年ぐらい前からクラブを作る構想がありましたけど、なかなかタイミングが合わず、それがたまたまこの時期に、それもゼロから作っていくのが一番いいのでは、という考えに至りました」

 これまでは既存のクラブの経営に参画してきたが、オーストリアのSVホルンでは日本人の経営陣と古くからの地元サポーターが乖離する失敗を味わわされ、昨シーズン限りで撤退している。すべてをゼロベースからスタートさせる点で、本田にとっても初めてのチャレンジとなる。

 登録されたエリアは東京都中央区。J1から数えれば10部に相当する、東京都社会人サッカーリーグで一番下となる4部から今春に船出するOne Tokyoを、人気サッカークラブ経営シミュレーションゲームになぞらえて、クラブのホームページ上で「リアルサカつく」と表現している。

<監督や選手のスカウトや獲得、グッズ作成や販売、ファンサービスやスポンサー営業など、リアルサカつくという「ドリームジョブ」を自由に発案して、選挙を行って決めていく>(原文のまま)

 過去の失敗を顧みて全員参加型のクラブ経営を謳い、東京から世界へ、さらには世界一を目指すコンセプトをクラブ名称の一部の『One』に凝縮させた。オーナーとして名前を連ねているものの、本田は「僕のクラブではなくみなさんのクラブ。僕とみなさんは対等です」と強調する。

「スポーツクラブとはみんなのものだと思っているので、全員が自分事として本気でよくしていける、盛り上げていけるクラブを作りたいと思ったのがきっかけです。基本的に僕が権力を発揮して、何かを決めることはいっさいないと断言します。僕はファンとして、あるいはサポーターとして一票をもっていて、もちろんみなさんも一票をもっている。毎年昇格していってJ1を目指す、ということは僕一人でできることではないので。ひとつだけ約束できるのは、みなさんが関わり続ける、関わっていると思える運営システムを維持し続けることです」

 One Tokyoの代表者には、本田のビジネスパートナーを長く務めてきた鈴木良介氏が就任。さらに本田のツイッターへダイレクトメッセージを送ったことがきっかけで意気投合した、大学生の奥山大氏を運営責任者に抜擢した。会ったその日にほぼ即決したと、本田は笑顔で振り返っている。

「長文だったダイレクトメッセージの最初の3、4行だけ読んで、全部読もうと思えたのがスタートです。面白い子だなと思ってお会いさせていただいて、このチームの運営スタイルにぴったりのキャラクターの持ち主だと思いました。自分事化するコンセプトに会う人材を、ずっと探していたので」

 奥山氏はさっそく月額会員制のオンラインサロンを開設し、One Tokyoの意思決定に関わっていく同志を募集。今月2日にはキックオフミーティングが開催され、本田本人も出席している。

サッカー選手が本職ではない
職業は「チャレンジャー」

 2018年8月から務めているカンボジア代表の実質的な監督。アメリカの人気俳優、ウィル・スミスと共同で立ち上げたベンチャーファンド。国内外で75校にのぼるサッカースクールを経営し、新たに首都東京に立ち上げられたクラブのオーナーという肩書きが加わった。自身初の南米大陸でのプレーを決めた、現役サッカー選手が実は本職ではないと本田は不敵に笑う。

「職業はチャレンジャーと名乗らせてもらっているので。なぜかサッカーの現役選手と言われていますけど、チャレンジしている中のひとつがサッカー選手だと僕自身は思っています。チャレンジをやめたときに引退するのか、と判断してほしいし、今はしっかりとチャレンジしていると評価していただければ、とも思っています。そこはぜひとも誤解しないように、今後対応していただければ」

 すべて中途半端になっているのではないか、という批判も甘んじて受け入れる。チャレンジ精神をたぎらせる33歳の元日本代表MFは現地時間7日にブラジル入りし、同8日にはボタフォゴの本拠地エスタディオ・ニウトン・サントスで盛大な歓迎セレモニーが予定されている。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ