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ユニゾ争奪は延長戦へ、メインバンクみずほが「味方できない」可能性も

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ユニゾの含み益を狙って、買収合戦は激しさを増してきた。含み益を抱えている不動産会社は同社だけではない Photo:REUTERS/AFLO

不動産会社ユニゾホールディングスを巡る買収合戦が再度延長戦にもつれ込んだ。前代未聞の「従業員による買収」で幕を下ろすとみられたが、米ファンドのブラックストーンやソフトバンクグループ系の米ファンド、フォートレスがさらに高いTOB価格を提示。メインバンクのみずほ銀行の動向も焦点となっており、先行きは一段と混沌としてきた。(ダイヤモンド編集部 布施太郎)

米ファンド2社が対抗TOB
もつれる争奪戦の行方

「さらに着地点が見えなくなってきた」──。市場関係者を驚かせるのは、ユニゾホールディングスを巡る買収合戦だ。

 12月下旬、ユニゾの従業員が設立した会社が、米系ファンドのローンスターと組んで発表した新たな買収提案で、半年にわたる戦いは決着するのかに見えた。しかも、従業員による買収(EBO)という、企業小説も顔負けの新たな買い手の登場である。成立すれば、日本のマーケットでは初めてとなるドラマチックな終演となるはずだった。

 しかし、そこに待ったをかけたのが、買収合戦の当初から関心を表明していた米系投資ファンドのブラックストーンだ。1月28日、新たなTOB(株式公開買い付け)価格として5600円を提示。さらに2日後には、もともとはユニゾのホワイトナイトだった同フォートレスがTOB価格5200円を打ち出した。いずれもEBOによるTOB価格5100円を上回っており、勝負の行方は振り出しに戻った。

買収価格はどこまで上がるか
上昇の一途をたどる株価

 ユニゾを巡る争奪戦は昨年7月、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が仕掛けた敵対的TOBで幕を開けた。その後、ホワイトナイトとしてフォートレスが登場。続いてブラックストーンが参戦を表明するなど、主役が目まぐるしく入れ替わるかたちで、株式市場の注目を集めてきた。

 株価も上昇の一途をたどる。HISがTOBを発表した際には2000円程度にとどまっていた株価は、新たなファンドが名乗りを上げるたびに上昇し、12月に入るとEBOによる買収価格さえ上回って推移。ある証券アナリストは「資産の含みが大きく、まだTOB価格が上がる余地があると市場は見込んでいる」と解説する。

 今後の焦点は、ユニゾの従業員が設立した「チトセア投資」なる買収会社が、ブラックストーンやフォートレスを上回る価格を提示できるかどうかだ。ブラックストーンはユニゾ経営陣の同意を前提としているが、同意が得られない場合は敵対的買収に踏み切るとの見方もあり、もう一度三つどもえの戦いに発展することも予想される。

鍵を握るみずほの動向
ユニゾの味方に立てない可能性

 買収ファンドに加えて、勝負の行方を左右する存在として急浮上しているのが、ユニゾのメインバンクであるみずほ銀行だ。

 ユニゾは旧社名を常和ホールディングスといい、旧日本興業銀行系の中核企業だった。現在は、みずほフィナンシャルグループ(FG)系の企業に位置付けられている。株主には、旧興銀系の保険販売会社である共立や、日鉄興和不動産、みずほリースなどが名を連ねる。そもそも小崎哲資社長自身が2010年にみずほFG副社長から常和ホールディングス社長に転じた人物でもある。

 グループ企業であり、メインバンクでもあるだけに、みずほ銀は当然、ユニゾ側に立つと目されてきたが、ここにきて、みずほ銀がユニゾの側に立てない可能性が金融市場で取り沙汰されている。

 その理由は、ユニゾのEBOスキームにある。

EBOに潜むワナ
償還資金の原資はどこに?

 買収スキームの概略はこうだ。前出の買収会社チトセアの資本金は1万円。ここに対してローンスターは優先株で450億円、貸付金として1300億円を拠出する。だが、公表資料によると、ローンスターは買収成立後、6カ月で資金を回収する取り決めだ。短期でのエグジットを想定していることになる。

 では、ローンスターに返済する資金の原資はどこにあるのか。すでに触れたようにチトセアは資本金1万円の会社でしかない。そこに巨大なレバレッジを掛けて買収を成就するというスキームである。ユニゾやチトセアが開示していないため想定の範囲でしかないが、ユニゾが持つ現金や不動産を返済原資に充てる以外にはない。

 ユニゾの純資産は19年9月末時点で1260億円。不動産の含み益が潤沢にあるだけに、返済原資に困窮することはないとみられるが、貸付金を返済すれば純資産は吹き飛ぶ。実質的な減資スキームともいえる。

ユニゾの格下げリスク
取引銀行が損失被る懸念も

 問題になるのはこの点だ。ユニゾはメインのみずほ銀を筆頭に地銀など数十行から約4000億円を借り入れている。その他に無担保社債も1040億円ある。

 このため、買収が成立した場合、ユニゾは格付けの低下に直面するリスクがあり、融資をしている金融機関は引き当てを積まなければならない事態にも直面しかねない。

「対象会社の株式を取得するエクイティ性資金の返済のために、本来優先されるべきシニアのローンが劣後されるのではないか」。金融市場関係者の間で広がっているのはこうした懸念だ。

 みずほグループの一員と見なされるユニゾだが、今回の買収スキームはみずほからの脱却を企図しているようにも見える。「小崎氏はみずほからの独立を画策してきた」(みずほグループ幹部)との見方は少なくない。実際、小崎社長就任後、ユニゾは度重なる公募増資により、株式の希薄化を招いてきた。その結果、みずほ系株主の持ち分比率は年を追うごとに低下してきている。

 みずほFGは2000年代前半、不良債権の重荷で経営破綻の瀬戸際に追い込まれた。苦境を脱したのは顧客企業を引受先とした1兆円増資の成功によるものだ。その是非には議論もあるが、発案したのが小崎氏である。「構想力に秀でた抜群の頭の良さ」(同)は衆目の一致するところだ。

 今回の買収スキームも「TOBの要件は完全に満たしており、何か問題があるわけではない」(金融当局幹部)。

 TOB制度そのものは、株主の利益を守るものだ。だが、そこに債権者の利害が絡んだときにはどのような対応が望まれるのか。

 みずほ銀には貸し手を代表するメインバンクとしての責任もある。争奪戦の第2幕が上がる中で、みずほ銀の動向が注視されることは間違いない。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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