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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第547回

会社を2つに分離する英断をしたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年01月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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売上は回復したが研究開発費を削減したせいで
競合メーカーに追い越される

 前回説明したとおり、いろいろと外部からは叩かれていたWhitman氏であり、また特に彼女のCEO在任期間中にレイオフされた社員(トータルでは8万5000人に達した)は当然彼女に好印象を持っていないわけではあるが、そうは言っても急降下しかかったHPを無事に成長カーブに再び導くことには成功しているので、昨今での評価はそう悪いものではないし、残った従業員からの評判も悪くない(前が悪すぎた、という話はもちろんあるのだが)。

 また業績が世間一般に比べると悪かったという話にしても、2011年あたりはだいぶ稼ぐ力が落ちていたのが理由で、その原因は研究開発費をケチったことだ。

 下表は研究開発に充てられた費用と、その年の売上に対する割合をまとめたものだ。

研究開発に充てられた費用
年度 研究開発費 比率
2000年 26億2700万ドル 5.4%
2001年 27億2400万ドル 6.0%
2002年 33億6800万ドル 6.0%
2003年 36億5100万ドル 5.0%
2004年 35億600万ドル 4.4%
2005年 34億9000万ドル 4.0%
2006年 35億9100万ドル 3.9%
2007年 36億1100万ドル 3.5%
2008年 35億4300万ドル 3.0%
2009年 28億1900万ドル 2.5%
2010年 29億5900万ドル 2.3%
2011年 32億5400万ドル 2.6%
2012年 33億9900万ドル 2.8%
2013年 31億3500万ドル 2.8%
2014年 34億4700万ドル 3.1%

 ちなみにこれ以前で言えば、たとえば1993年度の研究開発関係支出は180億ドルで、売上比で8.7%になっている。

 下の画像はIC Insightsが2011年に発表した2010年の主要IT半導体企業の売上と研究開発費をまとめたもので、Top 10の平均が14.8%に達しているのに対し、HPのそれはわずか2.3%でしかない。

これは半導体ベンダーであって、HPとはやや違うと言われればそうなのだが、ただやはり10%内外を研究開発費用に投じないと生き残りは難しいのも事実

 こうなってくると、後々で苦しくなるのは明白である。そして研究開発の費用を慌てて増やしても、効果が出てくるまでには数年を要する。Whitman氏の時代に競合メーカーにだいぶ追いつかれ、追い抜かれたのも致し方ないところで、そうした中で売上高をそれほど落とさずに切り抜けられたのはむしろ称賛すべきという見方もできる。この時期のHPは持久戦を戦っているような感じになっており、この持久戦を無事勝ち抜いた、というべきではないかという気もする。

 さて、持久戦は長時間持ちこたえるための戦略であって、そのまま続くとジリ貧になるから、どこかで打って出る必要がある。もちろん相手が先に自滅するのを待つという戦略もアリなのだが、次から次へと新しい企業が湧いて出るIT業界ではなかなか難しい。

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