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IoTやDX向け利用シーンでの有用性を確認

NTTPCが5Gネットワークを用いたSD-WANの実証実験を披露

2020年01月24日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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 2020年1月23日、NTTPCコミュニケーションズは、5Gネットワークを利用したSD-WANの実証実験を行ない、IoTやDX向け利用シーンでの有用性を確認したと発表した。5Gの大容量、低遅延、多地点接続のメリットを活かして、リモートワークや回線の二重化、IoTといった用途に活用したいというニーズがあり、SD-WANとの組み合わせで、こうしたニーズに対する提案を進めるという。

3つの試験項目で5GとSD-WANの有効性を実証

 NTTドコモの5Gオープンパートナープログラムを活用し、NTTドコモの5Gプレサービス環境と、NTTPCバックボーンネットワークをダイレクトに接続。同社から貸与されたルーターとスマートフォンを利用して、一般企業でのユースケースを想定した実験を行ない、MVNOやMVNE事業者の構成を疑似的に再現。5Gとデータセンターとの接続性を確認できたという。

SD-WANと5Gの検証構成

 具体的な試験項目は、インターネットを使わない「5Gネットワークを介したSD-WAN通信トンネルの確立」、Office 365などを活用した「SD-WAN/5G回線環境での一般企業ユーザー向のセンター拠点相当を経由した業務通信」、固定回線のリンクダウンを契機にした「固定回線のバックアップ用途としての5G回線への自動切り替え」の3項目。「実験環境において、SaaSやウェブ会議の動作検証を行ない、有効に利用できることが確認できた。工場IoTなどの分野においても、5GネットワークとSD-WANを組み合わせて、シンプルで、柔軟なネットワークの構築が期待できる」としている。

 5Gネットワーク技術とSD-WAN技術を組み合わせることで、従来型ネットワークの課題であった固定回線敷設時のリードタイムの長期化や、無線回線利用時の帯域不足を解決できるというメリットがある。

「フレッツ回線を敷くことが難しい工事現場やショッピングモール内の店舗などで、5Gとの組み合わせによって、大容量、低遅延のネットワーク導入が可能になる。工事現場では3Dモデリングデータを活用する例もあり、5Gの大容量回線に期待する声がある」(NTTPCコミュニケーションズ 第二サービスクリエーション部 進藤宙氏)などとした。

NTTPCコミュニケーションズ 第二サービスクリエーション部 進藤宙氏

既存のVPNの課題を解消するSD-WANと5Gのメリット

 NTTPCコミュニケーションズは、2017年からSD-WANサービス「Master'sONE CloudWAN」を提供しており、約50社への導入実績がある。SD-WANは、ルーティング機能などをソフトウェアベースで実装し、ひとつひとつの宅内機器のコンフィグ管理から、コントロールパネルでの一元管理と一括変更が可能であること、インターネットへの通信を迂回したり、2回線の冗長化できるトラフィック制御などにメリットがある。
「Master'sONE CloudWANでは、コントロールパネルで一元管理し、すぐに設定や変更が可能であること、Windows Updateの輻輳を回避でき、ベストエフォート回線でも利用ができる。さらに、NGN折り返しによる低遅延な通信が可能になる」とした。

 SD-WANの導入は増加傾向にあり、「情報システム部門のリソースシフトや、回線種別によらないネットワークの簡単接続、Windows 10への切り替えにあわせたWANの効率化といったニーズがある。従来のVPNでは、設定の追加、変更に2~3週間かかっていたものが、Master'sONE CloudWANでは、2~3分で済む。インフラ構築、運用、保守業務の効率化が行える点も評価されている」とした。

Master'sONE CloudWANのエッジ装置

 また、5GとSD-WANとの組み合わせによる将来の活用提案についても説明。NTTPCコミュニケーションズ 第二サービスクリエーション部の上田信昭部長は、「将来的には、遠隔医療や商取引などに適した高速、低遅延ネットワークを介したセキュアな双方向通信の実現が可能になる。ロケーションを意識せずに、音声や映像などをリアルタイムに、セキュアなコミュニケーションを提供することができる。また、ソフトウェアの判定ロジックと大容量データ通信により、膨大なデータのなかから、SD-WAN機器内部で必要な情報だけを抽出するエンドポイントでのデータ処理と映像配信が可能になる」と語った。

NTTPCコミュニケーションズ 第二サービスクリエーション部の上田信昭部長

 具体的な用途としては、「設備の常設が難しいスポーツイベントや音楽フェス、展示会などに設置して、5Gを介した高精細な映像配信が可能になるだろう。さらに、多地点接続を管理運用するサービス事業者向けの管理機能を提供。工作機器や建設機器、監視カメラ、環境センサー、ロボットなどに、SD-WANソフトウェアを組み込み、ソフトウェアや宅内装置をコントロールパネルから一元管理したり、多地点接続をメリット生かした展開や、回線敷設工事が不要であり、スピーディーな展開ができるメリットを提供できる」などとした。

 また、上田部長は「AIパートナーシッププログラムであるInnovation Labでの取り組みとも組み合わせるほか、各分野のパートナー企業と連携することで、ソリューションの拡大を目指したい。これまでMaster'sONE CloudWANは、中堅・中小企業のユーザーが多いが、5Gとの組み合わせ提案により、幅広い顧客に向けて、Master'sONE CloudWANの提供。販売数量の倍増を目指したい」とした。

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