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夢の技術! 自動運転の世界 第21回

自動運転の基礎 その16

欧米11社が定めた自動運転のガイドライン「Safety First for Automated Driving」

2020年01月28日 10時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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 自動運転で重要なのは、なによりもその安全性だ。正常にシステムが働いているのに交通事故を起こすようでは論外。使い方が難しくて、危なっかしいのもダメ。もちろん故障が多発するようでは困る。とにかく平均的な人間のドライバーよりも、安全であることが求められる。

 そうした安全な自動運転技術を開発するためのガイドラインに該当するものが2019年7月に発表されている。それが「Safety First for Automated Driving (SaFAD):セーフティ・ファースト・フォー・オートメイテッド・ドライビング」だ。日本語にすれば「安全第一の自動運転」といったところだろうか。

 これは、欧米の11企業が発表した、安全な自動運転車の開発/テスト/検証を行なうための白書で、12の基本指針が示されている。11社とは、「Aptiv」「Audi」「Baidu」「BMW」「Continental」「Daimler」「FCA US LLC」「HERE」「Infineon」「Intel」「Volkswagen」のこと。ドイツの自動車メーカーやメガサプライヤー、それにインテルといった自動運転技術に熱心な大手が並ぶ。「Aptiv」と「Continental」「Infineon」はサプライヤー系であり、「HERE」は欧州の地図大手。欧米以外では、唯一、中国の「Baidu」が参加しているのも注目点となる。

 ただし、リリースには“拘束力はない”と明記されており、枠組みとしてはそれほど厳しいものではないようだ。また、明記された11の企業だけでなく、その関連企業も、この発表された白書に沿って、自動運転の開発を進めることになるはず。日系ブランドに対抗する、欧米の自動運転開発の枠組みともいえる。

 この白書が特にターゲットにしているのがレベル3とレベル4の自動運転技術の開発で、自動運転のクルマが「平均的な人間のドライバーよりも安全である」ことを実証するトレーサビリティシステムを提供するという。

 また、12の基本指針は以下のようなものとなる。

  • 「Safe Operation」(機能停止時などの安全)
  • 「Safety Layer」(運転操作の受け渡し時の安全)
  • 「Operation Design Domain(ODD)」(設計者が定める限定領域について)
  • 「Behavior in Traffic」(交通の中でのふるまい)
  • 「User Responsibility」(ユーザーの責任)
  • 「Vehicle-Initiated Handover」(ドライバーが対応できないときのシステムの対応)
  • 「Driver-Initiated Handover」(ドライバーの意思に関して)
  • 「Safety Assessment」(安全アセスメント)
  • 「Data Recording」(データの記録)
  • 「Security」(セキュリティー)
  • 「Passive Safety」(パッシブセーフティー)

 こうした基本指針の下には、機能ごとへの細分化された記載が用意されている。こうしたガイドラインがあることで、安全な自動運転技術の開発が可能になるといわけだ。

 ここで重要視すべきは、ドイツを中心とした競合他社が自動運転技術に関して、一致団結する姿勢を見せているということ。昨年は、メルセデス・ベンツとBMWの自動運転技術開発の協力も発表されている。競争すべきところと協調すべきところをわけて、自動運転技術の開発を加速させようというのが欧州の狙いだ。日本では政府の旗振りはあるものの、民間企業主導でライバルや国境を越えてまでの、ここまでハッキリとした大きな動きは残念ながら見えてこない。

 自動運転技術はレベル3の実用化を前に足踏み状態という状況がこれまでだった。しかし、日本市場は法改正により2020年のレベル3実用化の可能性が見えてきた。また、BMWは2021年にレベル3実用化をアナウンスしている。今年は自動運転技術の進展が期待できそうだ。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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