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さくらの熱量チャレンジ 第42回

庄内平野から世界を変えるチェンジ・ザ・ワールドの挑戦とは?

酒田市のスタートアップが目指す「新しき地方ITの道と光」

2020年01月24日 09時00分更新

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1ワット単位で太陽光発電所のオーナーになれる「CHANGE」

大谷:具体的なサービスについて教えてください。

池田:われわれは「スマホで買える太陽光発電」というコンセプトの「CHANGE」というサービスを提供しています。具体的にはある程度まとまって作った太陽光発電所がCHANGEのプラットフォームに登録されており、1ワット単位で誰でも太陽光発電のオーナーになれます。パネル単位でも、面積単位でもなく、発電できるワット単位で売るという点が、ITでこそ実現できるところです。

スマホで買える太陽光発電所「CHANGE」のサイト

大谷:そもそも太陽光発電を買ったり、所有するのはどれくらい大変なんですか?

池田:太陽光発電っていろいろ課題はあるのですが、なにより買うのが大変。個人で買おうと思ったら、低圧・1区画で1000~1500万円くらいかかります。しかも、これがいい物件なのか、悪い物件なのかも判断つきません。買った後の保守・メンテナンスは大変だし、太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)による電力買い取り制度を使おうとすると設備を20年間所有していなければなりません。

大谷:導入も、運用も大変なんですね。

池田:ちなみに酒田に戻ってきたときに、パネル1枚単位で売っているおじいちゃんが地元にいて、びっくりしました。山形の新聞だけに広告出して、郵送やFAXで申し込むというアナログさ。売電収入の振り込みやレポートも1年に1回だけです。でも、今まで10億円くらい売ってるんです。

大谷:すごい。年に一度とれた作物をお客に届ける農家みたいなイメージですかね。

池田:はい。1パネルあたり100~150万円もするのですが、その金額でも投資したい人はいるんです。その点、CHANGEではスマホから1ワット単位で所有権を購入できるし、発電状況もリアルタイムにわかります。

大谷:マイクロ投資的な要素はありますね。

池田:そうですね。昨今は自然災害や環境問題に対する関心も高まっていますが、こうした環境に対する投資物件が現状はありません。でも、CHANGEなら再生可能エネルギーに対して気軽に投資できるようになります。乱高下する株やFXに対して、太陽光発電はFITの制度下にある限り、発電した分の販売収入が見込めます。しかも、買うだけではなく、売ることもできます。銀行に預けるより、全然利ざやは高いはずです。

しかも1ワットあたり250円くらいなので、環境問題に関心を持つ小・中学生でも太陽光発電所のオーナーになれます。スマホから「今日は晴れているのか?」「毎日どれくらい発電してるのか?」を見ることで、環境に対する意識も高められると思います。

大谷:確かに環境問題に対する教育的な視点でもよさそうですよね。

池田:結局、地球温暖化だったり、気候変動だったり、原発問題だったり、いろいろな環境問題はありますが、多くの人は知らんぷりですよね。これって、具体的なアクションができないからです。

でも、CHANGEであれば太陽光発電のオーナーになることで、環境問題に対して積極的に関わることができます。今は太陽光発電ですが、今後は風力やバイオなど別の再生可能エネルギーが選択肢に入り、小さな力がいっぱい集まることで世界を変えられます。(ドラゴンボールの元気玉みたいに)「オラに力を貸してくれ」みたいなサービスなんです。オープンなB2Cサービスなので、再生可能エネルギー事業の印象を悪くしている怪しい業者が介在する余地もありません。

玉置:太陽光発電自体はすでにありふれた製品・サービスですが、パネル単位ではなく、ワット単位で所有権を売るというサービスを提供しているところはないと思います。

池田:単に太陽光パネル売ってる会社はITに詳しくないので、システムやアプリを作れません。大手は発電所からシステム構築、売電まですべて自前でやりたがります。とはいえ、太陽光発電所を建てるためのクラウドファウンディングでもないし、株やFXのような金融商品でもありません。投資的な要素を持ちつつ、環境問題に対しての啓蒙活動という価値が提供できるのがCHANGEなんです。

大谷:事業のフェーズはどれくらいの進捗なんでしょうか?

池田:プラットフォームを自力で開発して、ユーザーも付いてきて、今はちょうど資金調達するタイミングです。われわれもある意味「おじさんベンチャー」なので、若い子たちのようにシードでお金を集めるのではなく、事業モデルをきっちり組み立てて、リーンスタートアップとして事業化を進めています。

大谷:ユーザーがすでについているんですね。

池田:まだ最低限の太陽光発電所しかないので、今は2000ユーザーくらい。発電所も当初は自前で建ててこうと考えていましたが、発電所をもっているところから仕入れた方がいいと考えています。だから、今後は仕入れ先を増やすとともに、ユーザーを増やすためのマーケティングもやっていかないとなりません。資金調達したら、こういったところに使って行きたいと思っています。

落ちる前提の設計も重要だが、落ちないほうがいいに決まっている

大谷:さくらのクラウドを採用していると聞いています。

池田:仙台市が2018年に開催した「東北グロースアクセラレーター2018」というスタートアップ支援プログラムで選出され、イベント協賛で入っていたさくらインターネットとつながりができたという感じです。スタートアップを支援していただけるということだったので、喜び勇んで事務所に行ったら、サーバーを貸していただけることになりました。

大谷:もともとさくらインターネットは知っていたのですか?

玉置:私は長らくさくらインターネットのファンで、サーバーをよく使わせていただきました。東京リージョンがまだない頃、AWSでシステムを作ってお客様に納品していたのですが、当時はリージョン単位でよく落ちてたんです。午前中まったく応答がなくて、問い合わせ先もよくわからないみたいな状態で、お客様から問い合わせに苦労した経験が何回かあったんです。そこからさくらに切り替えたという経緯です。

今回、さくらのクラウドを初めて使ったのですが、先日クラスタリングで組んだシステムを本番環境に移行しました。今は最小構成ですが、アプリケーションやWebのサーバーはサービスの成長にあわせてスケールさせていきたいと思います。

大谷:スタートアップというと、わりとAWSやAzure、GCPなどの外資系のパブリッククラウドを使うことが多いと思うのですが、さくらのクラウドを利用した印象はどうですか?

玉置:あくまで僕の印象として聞いてほしいのですが、AWSはインスタンス一台単位の保守性とか、可用性があまり気にされていない感じがするのです。サーバーを落ちないようにするのであれば複数インスタンスで冗長化し、リージョン単位での可用性がほしければマルチリージョンでクラスタリングで組めという設計だと思います。

その点、さくらインターネットのサーバーは1台ごとの保全もちゃんとしています。私も10年以上さくら使っていますが、サーバーが落ちたことない。だから、個人の感想としては、さくらは信頼性が高い。落ちたらどうするか考えるのも重要ですが、落ちないで済むなら落ちない方がいいですよね。

世界に向けてサービスするのは東京でなくてもかまわない

大谷:最後に酒田市でこのビジネスをあえてやる意義について聞きたいと思います。ITの仕事って、やはり8割近くは東京・横浜に集中していると言われますが、クラウド時代なのでもっと地方に拡がってもよいと思います。

池田:ITの仕事って、「どこでもできる」「場所なんて関係ない」と言われていますが、みんな東京から離れないんですよ。

「ITの仕事って『どこでもできる』と言われてますが、みんな東京から離れないんですよ」

SESのようなユーザー企業への派遣事業は、若い頃はいいけど、歳いったらけっこうキツいです。エンジニアがせっかく身につけた技術を活かすこともなく、休みの日にベランダのプランターでミニトマト育てるのが生きがいにしてるとか、やっぱり寂しいじゃないですか。そういう人たちがもっと活躍できる場所を作ることが、経営者としてすごく重要だと思っています。

玉置:日本ってもとから資源がなくて、技術で立国するしかない。だから、東京だけでなく、地方都市でもがんばって、活気づけば経済的にも潤うはずです。

池田:酒田市を含む庄内地域の経済規模ってざっくり1500億円くらい。だから、すごく乱暴なこと言えば、それくらいの規模の税金を落とせる企業が生まれれば、国からの補助受けなくても独立できるんですよ(笑)。

でも、ここで稼げる会社を作るためには、エンジニアが引っ越してきて、未来の仕事を作れるようにする基盤が必要です。それを実現するために、日本西海岸計画でいろいろな取り組みをやりつつ、チェンジ・ザ・ワールドとしていろいろな地域のエンジニアを雇っています。地元採用は半分くらいで、あとは大阪や東京から移ってきています。そんな彼ら・彼女らに対して、われわれは東京と同じレベルの給料をお支払いしています。

大谷:チェンジ・ザ・ワールドで働く若者たちは、どんな思いで酒田に来るんでしょうか?

池田:彼ら・彼女らはエンジニアとして働きたいけど、東京では働きたくないと言います。ある程度能力をもったエンジニアって、他人の会社のよくわからない仕事でお金稼ぎするより、自分のやっていることに意義を持ちたくなると思うんです。でも、そういうのって、東京では探しづらいのではないかなと。だから、自らが参加する意義のあるサービスを、地方で開発することにモチベーションを感じているみたいです。

大谷:地方のエンジニアが地方で働ける道を作る必要がありますね。

池田:僕も以前はエンジニアでしたが、プログラマーとか開発者とか、本当に尊敬します。単にコードを書くのではなく、独創性とセンスですごいもの作ってしまうんですよ。自分の生活や世界を変えてしまうアプリを作れるプログラマーや開発者って、知らない人からすれば魔法使いに見えるんですよ。そんな人がクラウドを使えば、世界を変えるサービスを作れる可能性だってあるじゃないですか。

そういう能力を持った人が、本当に場所を選ばず、世界に向けてサービスするには東京でなくてもいいと思うんです。金儲けの道具をひたすら作らされて疲弊するのではなく、世の中をよくするためにエンジニアの能力を使ってほしい。チェンジ・ザ・ワールドのような田舎のベンチャーが世界を変えられることを知らしめたい。そんな気持ちですね。

大谷:ちなみにチェンジ・ザ・ワールドという社名は、そこらへんの意気込みやアティチュードを示したものなんですかね。

池田:はい。僕は「儲かるから」といってやらなくてもいいビジネスに手を出したんだと思っているんです。でも、事業を通して、僕たちが本当にやりたかったことってなんですか?と考えたとき、お金儲けだけじゃない。社会的で、革新的な事業を立ち上げ、世の中を少しでもよくするというのが目的です。それは前に会社を立ち上げたときも同じ想いでした。でも、ぶれてしまったので、ぶれないようにするため、ストレートに社名にしました。

大谷:普通にクラプトン好きなんだと思っていました(笑)。

池田:うーん。その話はよく出てきますが、心の中ではそうじゃないぞと思ってます。まあ、社員とカラオケに行くと、最後に歌うのはチェンジ・ザ・ワールドになるんですが(笑)。

 


(提供:さくらインターネット)

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