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パナソニックのメガネ型VRグラスを体験、軽さと有機ELならではの没入感が魅力

2020年01月21日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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ハリウッド画質のキーマンが手掛ける映像にこだわったVRグラス

 パナソニックが展示した眼鏡型VRグラスは、AVメーカーらしいこだわりと、現状のVR端末が持つ課題を解決することを狙ったものになっている。

 パナソニックの映像技術の革新には、小塚室長は欠かせない。これまでもBlu-rayや3D、HDRといった新たな映像技術や映像関連規格が登場するたびに、中心人物として、技術革新や製品化に携わったほか、業界を巻き込んだ標準化活動にも関わってきた。パナソニックはこれまで、テレビの画質向上のため、ハリウッドの映画会社と協力してきた。そのために、最前線でハリウッドとのパイプを作ってきたのが小塚室長だ。

パナソニックが開発中のVRグラス

小塚 「VRの世界は、360度での画像視聴を活用したスポーツ観戦や旅行の疑似体験など、新たなサービス展開が期待されている一方、VRゲームの広がりに加えて、デジタルツインの活用、デザインや製造の革新にも活用され、さらに、商用サービスが開始される5Gとの組み合わせによって、いよいよ普及期を迎える段階に入ってきた」

 小塚室長はこう前置きしながら以下のように話す。

小塚 「だが、既存のVR端末は、AVメーカーであるパナソニックの立場から見た場合、十分とはいえなない画質レベルにある。テレビに例えれば、ブラウン管テレビ時代のSDやHDの水準であり、フルHDや4Kに見慣れたユーザーからいえば、物足りなさを感じることになる。とくに、デザイン分野などのビジネス用途で使用することを考えると、より現実に近い画質を表現できることが求められており、本物と間違うようなVR体験を提供する必要があると考えている。そこで、パナソニックは、4K/HDRテレビ並みの画質を、VR端末で実現することを目指した。さらに、没入感においては音質が重要であるが、そこにこだわったVR端末がなかった。その点にも力を注いだ」

 小塚室長が、このVRグラスに開発に携わるとなれば、映像や音質にこだわるのは当然のことだといえる。

 それを裏付けるように、開発中のVRグラスは、テレビやBDプレーヤーなど映像機器の開発で培ってきた信号処理技術、テクニクスの音響技術、デジタルカメラ「LUMIX」の光学技術などを融合。

 さらに、米マサチューセッツに本社を置く、世界トップクラスのVRグラス向けデバイスメーカーKopinと、世界初となる1.3インチのマイクロ有機ELパネルを共同開発し、2560×2560の5K相当の解像度を実現した(今回公開された試作機は、2048×2048の4K相当の解像度となっている)。

世界初となる1.3インチのマイクロOLEDパネルを採用している

 画素境界が網目のように見える「スクリーンドア効果」の発生を抑え、自然で滑らかな映像を目指している。これによって、映像に引きこまれるような臨場感あふれる仮想現実の体験ができる。さらに、クリアでゆがみのないHDR映像を実現するために、新たな超薄型パンケーキレンズを、Kopinおよび3Mとともに共同開発。パナソニックの光学モジュールを採用することで、歪みを抑えた自然な映像を超単焦点で表示することに成功した。

 VRグラスのビクセル密度は2245ppi、周波数はHDR/120Hz、PPD(pixel per degree)は26ppdと、いずれも市販のPC接続型VRの仕様を上回っている。「まだ試作段階ではあるが、ハリウッドのスタジオでも、画質を絶賛してくれている」と小塚室長も自信をみせる。

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