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プラネットウェイinダボス会議

プラネットウェイ平尾憲映CEOがダボス会議で語るインターネットの未来像

2020年01月22日 10時00分更新

文● 村野晃一(ASCII)

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 世界経済フォーラムは、経済、政治、学究界のリーダーたちによる世界情勢の改善に取り組むことを目的とした国際機関。毎年1月に、スイスのダボスで開催される年次総会、「ダボス会議」では、約2500名の選ばれた知識人やジャーナリスト、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し、世界が直面する重大な問題について議論する場となっている。

 2020年、このダボス会議に、プラネットウェイの平尾憲映CEOが参加。TBDメディアグループのビジネス特派員アンドリュー・ウィルソン氏のインタビューに応じた動画が公開され、話題となっている。

 この動画のなかでウィルソン氏は、プラネットウェイの掲げるビジョンを並外れたもの、として紹介。CEOである平尾氏の口からは、同社の構想する世界規模の個人主権によるデータ管理のありようが語られた。

 ここでは、その動画の内容を一部要約してお伝えしよう。

──プラネットウェイは、情報スーパーハイウェイに革命を起こそうとしています。私たちの持つ個人データは、特定の組織や会社のものではなく、私たち自身のものであるという前提のもと、プラネットウェイは、独立した個人主権のデータ駆動型社会と呼ぶ世界を作りたいと考えています。

 その野心ある彼らの旅は、日本とカリフォルニアで始まりました。しかし、途中でエストニアという小さな国からいくつかの核心的な新しい技術を取り入れています。ここダボスで、この並外れたビジョンを掲げる平尾憲映氏にお話しを伺いましょう。

ウィルソン まず最初に、なぜ個人のデータがそんなにホットな話題になるんですか?

平尾 私はデジタル空間の個人情報の将来についてどう思うかとよく尋ねられます。

 例えば、ここに50ページのドキュメントがあります。単なる契約書ですので何も心配いりません。この書類の一番下にあなたがこの内容に同意することを求めるチェックがあります。また、あなたがロボットではないと言っているボックスにもチェックを入れてもらいたいと書かれています。

 この書類の内容をよく精査せずに、「YES」と言ったり、署名をしたりするのは非常に不公平だと感じると思いますが、インターネットの世界では、この同意した内容が読まれることはほとんどありません。

 通常、この種の50ページの法的文書がある場合、事前に弁護士などによるレビューを行った上でサインしますよね。しかし、インターネット上では、人々は、それが実際にあなたの同意に基づいてサインされたものかどうかについて注意を払っていません。それが当たり前になっていますが、これは非常に危険であり、企業は本来ならあなたが同意しないものにも同意させることができてしまいます。私たちは、この関係性を再考する必要があるのです。

 本来は、個人個人がこういった内容をもっと注意深く見る必要があり、正しいものだと判断できる環境が整ったのちに、安心してOKすることができるようになるべきなんです。

ウィルソン これは非常に緊急な課題だと思いますか?

平尾 利便性は人を盲目にします。大企業の考えと、個人の考えでは大きなギャップがあります。それは非常に危険なものです。

 ここでいう大企業とは、Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft、いわゆるGAFAMのような企業たちです。そういった企業は、あなたの個人データに対して大変な影響力を持とうとしています。中国政府の持つデータベースのように、大企業によるデータベースは、あなたの人生をほぼ制御し、規制できてしまうんです。

 これらのリスクを回避、または変更することは、非常に緊急な課題だと考えます。

ウィルソン データの主権がどこにあるか、ということですね。

平尾 まさにその通りです。

 最初に、普遍的でグローバルなプラットフォームを策定し、個人データの所有権が完全にあなたに戻っていることを確認する必要があります。私の個人データは私のものであり、私たちは世界中の人々に、データの個人主権を導入するための新しい方法を導入したいと考えています。

ウィルソン もう少し詳しく教えてもらえますか? あなたが言っていることは、世の中の仕組みを大きくリセットするということですよね?

平尾 インフラストラクチャを完全に変更することが、プラネットウェイの挑戦です。安全で優れたインフラが必要なんです。プラネットウェイでは、ここに2つのツールを用いようと考えています。

 1つはPlanetCross、もう1つはPlanetIDというテクノロジーです。これらは、個人データが安全に保護されていることを担保し、その所有権を無料で個人に戻します。

ウィルソン それをどうやって構築するつもりなんですか?

平尾 PlanetCrossは、すべての土台となる信頼できるコア基盤です。これは、民間と公共の両方の異なるデータベースの間をつなぎ、それぞれのデータベースには個人のデータを保存しないという一元化されたシステムです。

 100%安全であることが証明されていて、データ転送のプロセス中にデータの追跡可能性とデータの透明性を提供します。エストニアの電子政府の技術からプラネットウェイが作成しました。

 まず、日本でこのPlanetCross・インフラストラクチャのレベルを上げていき、いずれは世界のトップインフラにしたいと考えています。それが今私たちが手がけている事業の未来像であり、インターネットに良い革命をもたらす可能性があると信じています。

 もうひとつのPlanetIDは、ユニバーサルIDインフラストラクチャであり、より少ない認証で使用でき、デジタル署名も可能です。すべての事柄で、あなたの同意は、すべてこのIDひとつで行えるようになります。

ウィルソン たとえば、どういう風に利用できるんですか?

平尾 基本的な例を挙げると、怪我をして病院に行ったとします。その後、保険の申請をするために、通常は3ページほどの用紙に、医者に記入してもらう必要があります。この手書きの書類を保険会社に申請するのに、およそ50ドルくらいかかるわけです。

 医者にお金を払って申請証書を取得し、実際に支払いを受けるのに約2ヵ月くらいかかりますね。しかし、我々のシステムを使った保険会社のソリューションがあれば、50ページもある条約でなく、いくつかのリクエストを送信するだけで済みます。

 この保険金支払いのために、あなたの医療データにアクセスしてもいいですか? そのことを承認するために、あなたはスマートフォンのボタンを押すだけ。あとは、自動的に保険会社に医療データが転送されます。書類申請をするのに待たされたり、記入したりする必要はなく、すぐに支払いが行われます。

ウィルソン なるほど。でも、私には夢のような話に聞こえますが……。私のデータはすでに大企業に握られていて、彼らもそれを利用して収益化しているという状況がすでにあります。どうやってそれを取り戻し、今説明してもらっていることを実現して、インターネット革命にまでアップスケールするんでしょう?

平尾 よく、あなたの言っていることは分かるけど、私の個人データはすでに大企業に握られている。それを正しく戻すことは不可能なんじゃないですか?と言われます。私は、私たちがインフラストラクチャーを正しい方法で再構築すれば、それは可能だ、と答えます。

 一部の企業では、すでに我々の技術を導入していて、データベースを悪用できないようにできています。我々のインフラは、あらゆるプロセスで追跡性と透明性を備えているため、そこに誰がいつアクセスしたのか確認できます。悪い意味での監視ではなく、追跡性と透明性という意味での監視です。

ウィルソン この事業を発展させていくための長期的戦略は、どう展開しようと考えているんでしょう?

平尾 私が現在日本で行っているのは、主にナンバーワン戦略です。その業界で最高のクライアントまたは最高の企業を獲得した場合、通常、残りの同業種の企業はナンバーワンの企業に倣う傾向があります。現在は、保険、医療、公益事業、地方自治体などが対象になっています。

 実際、私たちが彼らに、一緒にやりませんか?と頼むことはありません。ナンバーワンを押さえておけば、「ちょっと私たちのサービスとインフラを改革したいんですが……」と彼らのほうから来てくれます。

 グローバル市場でも日本と同様のアプローチが可能になる場合もありますが、おそらく、別の手法も考えなければならないと思いますね。

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