メルマガはこちらから

PAGE
TOP

NoMaps2019会期中にNASA主催の世界最大のハッカソンに札幌から挑戦

優秀2作品は世界大会の選考へ

特集
北海道・札幌が未来に近づく5日間「No Maps 2019」レポート

 NoMaps2019(2019年10月16日~20日:北海道札幌市中心部)の会期中である10月19日と20日、札幌市図書・情報館では「NASA International Space Apps Challenge 2019 in Sapporo」も開催された。これは「NASA International Space Apps Challenge」の一環であり、NASA(アメリカ航空宇宙局:National Aeronautics and Space Administration)が無償で公開している宇宙、衛星などのデータを使って、宇宙や地球が抱える問題の解決を目指す世界最大規模のハッカソンだ。2019年は80ヵ国、230以上の都市から約2万9000人が参加した。札幌での開催はこれが初となる。ハッカソン終了後の審査の結果、上位2作品は世界大会への進出が決まった。

現地の大学生やインドからのインターンなどが6チームに分かれて
2日間で宇宙アプリの開発に挑戦

 NASA International Space Apps Challengeは、2012年から毎年、NASAが世界同時で開催しているハッカソン。日本では初年度から東京で開催しており、その後会津、福井、山口、つくば、大阪と年々開催地が増えている。今年はNoMapsの期間と重なったこともあり、札幌での初開催となった。

 このハッカソンの参加者は、NASAが出題する25の「チャレンジテーマ」の中から任意の1つを選び、2日間でチームを組んでコミュニケーションをとりながらアプリを開発していく。各都市で選出した優秀な作品は、「グローバルコンペティション」にエントリーとなり、その中からNASAが最終的な受賞者を選出する。

北海道科学大学の学生やAWLのインターン生など、道内からエンジニア、デザイナー、学生ら29人が集結した

 札幌会場には、道内のプログラマー、デザイナー、高校生などの個人に加え、北海道科学大学の学生やAI関連開発会社の「AWL株式会社」がインドからのインターン生とともに参加。札幌からは北海道科学大学の2チーム、AWLの2チーム、そして当日に現場でチームを組んだ2チームの全6チームがプロジェクトに挑んだ。

チームを組んだら、メンバーで議論。テーマの中から1つを選び、アプリのアイデアに絞り込んでいく

 初日の19日は、チームビルディングとテーマの決定、中間経過報告のあと、夜まで開発を続けた。翌20日の14時に作業を終了し、14時30分から各チームによるプレゼンテーション。その後、審査を経て受賞作品の発表となった。

初日の夕方は中間報告として、各チームが選んだテーマとプロジェクトの内容を発表。この後、閉館の22時まで作業が続いた

細かくカスタマイズした惑星を並べて自分だけの星系をつくる「SIMSverse」

 それでは、2日目のプレゼンテーションから、各チームの作品を紹介しよう。ちなみに、プレゼンテーションの持ち時間は1チーム5分だ。

 「AWL Planet」チームは、NASAのテーマから「Build a Planet」を選択。チャレンジの内容は、架空の惑星の特性を細かく設定し、その星系に合理的に存在しうる惑星群を設計するゲームを作ること。開発した「SIMSverse」は、星系をつくり、見て回れるシミュレーションゲームだ。星系内の惑星は、大気や表面の科学的特性、太陽からの距離、軌道、衛星や月、輪があるかどうか、といった細かな特徴まで設定できる。

恒星の周りに惑星、その周りに月や衛星を並べて、自分だけの星系をつくるゲーム。惑星の特性は自由に設定できる

接近してくる流星や衛星に向かってスマホを振るとキャラクターをゲット

 北海道科学大学の「Team COMET」は、NASAの天体・衛星データを利用したアプリ「流星衛生観測推進ゲーム」を開発。NASAが提示したテーマのうち「1UP for NASA Earth」を選んで開発した。流星や衛星が地球に近づくとスマホに通知を送る。スマホのユーザーは、近づいてきている流星や衛星の方向に向かってスマホを振ると、その流星や衛星にちなんだキャラクターを獲得できる。そして隕石が接近したときは、ゲリライベントが発生し、スマホの画面がカメラ画面に切り替わり、AR(Augmented Reality:拡張現実)で隕石が落ちてくるような演出も加えている。リアルな天体イベントとスマホゲームが連動することで、星や隕石を身近に感じられそうだ。

衛星や流星の方角に向かってスマホを振るとキャラクターをゲット

宇宙ゴミを入札して宇宙を綺麗に!「Happy Debris Day」

 チーム「Happy Debris ver2.0」は、デブリ(宇宙ごみ)を集めて宇宙をきれいにするビジネスモデルを考案し、デブリをめぐる入札ゲーム「Happy Debris Day」を開発。宇宙ゴミは、使用済みのロケットや衛星などの大型デブリが28%、ロケットの部品や破片などの微小デブリが66%を占めており、宇宙活動の大きな障害になっている。

デブリ入札ゲーム「Happy Debris Day」。デブリ入札を通して、デブリ清掃を進めようという意図がある

 Happy Debris ver2.0が提案するのは、大型デブリの所有権を共同入札の形で販売し、その資金をデブリ回収の研究に充てるアイデアだ。入札対象のデブリは、Space-Track.orgからリアルタイムで受信した実際のデブリ情報から決めている。

 参加者はデブリ入札サイトで大型デブリに入札していき、あるデブリが地球に落下したとき、その時点で落下を始めたデブリへの入札額が最高の参加者に入札額の50%を支払う。残りの50%の資金は、微小デブリを吸着する「TORIMOCHI(とりもち)」を開発する資金に充てる。

入札で得た資金を使って、大型デブリに微小デブリを吸着する仕組みを開発し、微小デブリを清掃する

 TORIMOCHIは大型デブリに付着させ、地球に落下していく過程で微少なデブリを大量に吸着することを想定している。宇宙空間に浮かぶ廃衛星などを自分のものにできるという「ロマン」と、いつ落下するか分からないギャンブル性が味わえ、同時に宇宙ゴミ問題を解決できる。ぜひ実現してほしい。

紅葉狩りのベストシーズンを衛星データなどから判定

 北海道科学大学から参加したチーム「MOMIJI」は、NASAの公開データを用いて日本文化を世界にアピールするアプリに挑戦した。このアプリでは日本の「紅葉狩り」文化に着目。紅葉する時期は地域によって異なり、特に北海道などの寒冷地では、葉が色づいてから落ちるまでの期間は10日ほどとごく短い。

 チームはLandsatの衛星写真データから日本全国の山の紅葉を判定し、Twitterで発信するシステムを考案。オープンソースの地理情報ソフト「QGIS」で衛星画像をNDVI(正規化差植生指数:Normalized Difference Vegetation Index)に変換し、夏との色合いの違いから紅葉の見ごろを判定する。ただし、Landsatでは毎日の衛星画像を取得できないので、アメダスなどほかの気象観測データと組み合わせる必要があるのが課題だ。

山の衛星画像をNDVIに変換すると、7月(左)と10月の紅葉時期(右)とでは大きな違いが現れる

機械学習を使って月から価値の高いサンプルを発掘

 AWLからの2チーム目、「RGB_AWL」は、機械学習と深層学習を用いた半自動サンプル採掘システム「どれにしようかな?」を開発。これはNASAの課題「Eeeny, Meeny, Miney, Sample!」という、月から価値あるサンプルを短時間かつ効率的に採掘するミッションへの挑戦だ。

機械学習で選定した目標地点でロボットが成分分析をして価値の高いサンプルを回収

 このシステムでは価値のあるサンプルをK(カリウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジウム)、Gd(ガドリニウム)、P(リン)の6種類の元素と定義した。探索には、月の上空から撮影した画像データを使う。これを機械学習で解析し、価値ある物質を多く含むエリアを特定するのだ。次にロボットをその座標が示す位置に送り、LIBS(レーザー誘起ブレークダウン分光法:Laser-induced breakdown spectroscopy)で詳細に成分を分析。その結果を機械学習のモデルに与えて価値の高さを判定することで回収する。

上空映像を機械学習で分析した結果。価値の高い物質を多く含むエリアほど色が濃い

浮き袋からのレーザー照射で海上でもネット通信を

 チーム「PONYO LASER」は、テーマ「Internet On the Ocean(海の上のインターネット)」にチャレンジ。現状では海上でインターネットへ通信する手段としては衛星通信がある。しかし、機器も、従量制の利用コストも高く付く。日本の沿岸部では陸からの通信システムが使えるが、少し離れると電波が弱くなってしまう。

浮き袋の想定図。全高は40m。先端の通信モジュール部にはアンテナとレーザー通信を持たせる部品を搭載している

 海底ケーブルを敷設するほどではないが、離島救難や災害時など、突発的かつ一時的に通信が必要になったとき、より安価で高速な通信手段が欲しい。そこで、ソフトな高耐久性ナイロン製の浮き袋からレーザーを撃つことで通信する技術を提案。浮き袋の先端にはレーザー通信の受光体を搭載し、360度全方位から受信する。通信速度は上り/下り100Mbps以上を想定。浮き袋部分は取り外して容易に回収でき、海洋ゴミへの影響にも配慮している。

今回唯一のハードウェアでのチャレンジ。当日の朝に3Dプリンターでミニチュアの模型も作っていた

惑星シミュレーターとデブリ入札が世界大会へ進出

 各チームのプレゼンテーションが終了し、審査の結果、最優秀賞にはAWL Planetの「SIMSverse」が、優秀賞は、Happy Debris ver2.0の「Happy Debris Day」がそれぞれ輝いた。この2チームの作品は世界大会のオンライン審査に進む。

最優秀賞を受賞したチームAWL Planet

 審査基準は、インパクト、創造性、有効性、関連性、プレゼンテーションの5つ。審査員は、渡部重十氏(北海道情報大学宇宙情報センター センター長,教授,北海道大学名誉教授)、篠原 裕史氏(北海道経済部産業振興局科学技術振興室主幹)、安藤 真宏氏(ビットスター株式会社)が務めた。

優秀賞はビジネスモデルまで作り込んだHappy Debris ver2.0が受賞

 そのほか協賛社賞と審査員賞は以下の通り。

●TSUKUMO賞:Team COMET
●ビットスター賞:Happy Debris ver2.0
●さくらインターネット賞:MOMIJI
●渡部審査員賞:AWL Planet
●篠原審査員賞:PONYO Laser

 また、特別賞としてNoMaps賞にRGB_AWLが選ばれた。

NoMaps賞は、2日間で機械学習の分析システムを作り上げたRGB_AWLが受賞

Team COMET

MOMIJI

PONYO Laser

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー