2020年の最初の原稿となります。本年も、できる限り、テクノロジーのある側面、読み解き方について、お話しさせていただければ幸いです。なにとぞご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
今まさにラスベガスで、今年のテクノロジートレンドの方向性を見据えるイベント「CES」が開催されているところですが、筆者は人生初の寝正月に沈みました。そもそも40度の熱になるのも何十年ぶりだか、もはや記憶がありません。
あまりに熱が下がらないので三が日に開いている大病院へ行き、8800円の追加料金を払って検査してもらったところ、なんとインフルエンザ陰性。当直でお疲れのお医者さんが申し訳なさそうに「これだと普通の風邪としての治療になってしまいます」と解熱鎮痛剤を処方され帰されました。とはいえ、患者が辛いのは同じで、せいぜい24時間早く熱が下がるかどうかが違いぐらい。とりあえず、首と腰が痛いです。あと上腕の筋肉も……。
米国だとわかりやすいインフルによる公衆衛生リスク
医療の場合、予防接種も処置も「公衆衛生」という考え方が出てきます。対して普段医者にかかるのは治療や臨床に属していて、そもそも概念が異なります。インフルエンザでは、公衆衛生上の問題となるため、処置が変わってくるわけです。
公衆衛生は、人々を集団と捉えて、その集団の健康をいかに維持するかを考えます。学校など集団生活が行なわれる拠点や、町や市といった自治体の面、あるいは更に大きな国レベルでの対策が取られていくことになります。
そうする理由もあまり難しくなく、たとえばインフルエンザが拡大する場合、個人の治療では対処しきれなくなることが明白だからでしょう。米国だと更にわかりやすくなる「コスト」の問題が絡みます。
米国では基本的に、医療費負担は基本的に日本の10倍と見ておけば大外れではありません。救急センターに駆け込もうものなら保険適用前の金額で10万円は覚悟することになります。さらに道中に万が一でも救急車を使うと、その代金も上乗せで15万円(バークレー市消防局所属の車両の場合。民間救急車だと更に倍)かかります。そりゃ救急車をめったに呼ばなくなりますよね。
そんな米国でも、インフルエンザの予防接種は保険会社によって無料で提供されることがほとんどで、そのほかの高額請求の数々を見てくると、意外に感じます。しかし保険会社も、公衆衛生というキーワードを意識しているとなれば納得です。
もし予防接種を無償提供せず、自社の契約者の間にインフルエンザ患者が広がった場合、毎冬ごとに保険会社はインフルエンザの治療費による保険支払いが膨大になってしまう可能性があります。
下手すれば、入院するだけで1日100万円かかる国です。ある地域にいる1万人の契約者が10日間インフルエンザで入院しただけで、ベッド代だけで1000億円が吹き飛びます。だったら5000円で済む予防接種を1万本打ってもらった方がよっぽどリスクが低いですよね。
もちろん保険会社にとっては、年何回でも破綻できるほどのリスクを回避できる特効薬として、公衆衛生の考え方を採用してるわけですが、実際その地域にいる人たちに予防接種を勧めることで、地域として感染が広がりにくくなったり、重症化を防げるようになります。
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