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インスタが「いいね!」表示をやめた理由、中毒ユーザー増加の影響か

2020年01月01日 06時00分更新

文● 沼澤典史(ダイヤモンド・オンライン

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現在、SNSで「いいね!」件数の廃止や、リツイート機能の見直しが検討されているという。すでにインスタでは、他人に「いいね!」件数が表示されなくなった。その理由や展望を『SNS変遷史「いいね!」でつながる社会のゆくえ』(イースト・プレス)の著者で、電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

「いいね!」件数が非表示に
SNSに起きた変化とは?

SNSを使う女性のイメージ
「いいね!」を増やすために、文字通り命を懸けてしまう人も出てくるなど、SNSにはかなりの中毒性がある Photo:PIXTA

 昨年の秋頃から「インスタの『いいね!』件数が表示されない」という報告が相次いだ。これは、バグでもなんでもなく、れっきとした運営側による変更だ。投稿者は「いいね!」の件数が見られるが、それ以外のユーザーに件数は表示されないのである。

「インスタ映え」などの現象に見る「いいね!」獲得競争が激化したことも記憶に新しいが、なぜここにきて件数を非表示にしたのか。天野氏はまず、その理由にSNSの社会的な責任が大きくなっている点を挙げた。

「かつてのSNSは、社会の中の一部のユーザーが使っていたものでした。しかし現在、世界中で多くの人が利用し、すでに社会インフラとなっています。それに伴い、インスタに限らず、SNSの社会的責任が大きくなっているのです」

「いいね!」を増やすために命を懸ける人や、フェイクニュースの拡散、スマホ依存など、SNSが関係する問題が顕在化している。そういったことから世界的にSNSへの問題意識が醸成されており、運営側はこれまでのユーザーを「ハマらせる」方針を緩和せざるを得なくなったのだ。

「画面をタップするだけでいい最も手軽な報酬、承認装置、人気度可視化装置である『いいね!』は画期的な発明でした。しかし、それが人間の心に及ぼす影響や中毒性が強すぎた、と運営側は判断したのでしょう。SNSとの付き合い方と向き合うなかで、ひとまず『いいね!』の表示を止めてみようという結論に至ったのです」

非表示にせざるを得なかった
インスタ特有の事情

 さらにSNS全体の問題とは別に、天野氏はインスタ特有の事情を指摘する。

「インスタの至上命題は、常に『いかにユーザーの投稿するハードルを下げるか』でした。インスタの歴史をひもとくと、初期に使っていたのは写真家やデザイナーなどのクリエイター層で、全般的にクリエイティブな色彩が目立っていました。その流れで、いかにおしゃれな写真を投稿するかというインスタ独特の特徴が今もあり、投稿のハードルが高いと思われているのです」

 高すぎる投稿のハードルはユーザー離れを招く。運営会社にとって一番手痛いのはユーザーが離れ、広告の効果が出ないことだ。収益獲得のためには、いかに投稿のハードルを下げて、ユーザー数を増やすかが鍵となるのだ。

 そんななか、インスタは2016年にストーリー機能を実装。これは、投稿した写真や動画が24時間で消えてしまうもので、その手軽さがユーザーに好評だ。このインスタグラム・ストーリーズは、華やかな投稿を迫られるユーザーの「インスタ疲れ」を緩和したといわれている。

「ストーリーズによって、投稿のハードルは大きく下がり、ユーザー数の食い止めに成功はしました。しかし、今度は若年層を中心に普通の投稿よりも、ストーリーズばかり投稿するユーザーが増えてしまいました。インスタの収入源は広告ですが、ストーリーズの広告はまだ多くないため、普通の投稿も増やさないといけない。そこで、普通の投稿のみにつけられていた『いいね!』件数を非表示にして、普通の投稿のハードルも下げたい、という意向があるのではないでしょうか」

 今回の件数非表示は「いいね!」が及ぼす社会的な影響と、自らの収益への影響を加味した措置だったようだ。

事業の転換で
「いいね!」復活の可能性も

 今回「いいね!」件数を非表示にしたインスタだが、天野氏は「また表示する可能性もある」と予測する。そこには、インスタの経営方針の転換があるという。

「インスタは2012年にフェイスブックによって買収されました。フェイスブックの収入源は9割以上が広告ですが、この一本足打法にはリスクも大きい。そこで、インスタにコマース機能をつけ、収益の複線化を図り、その構造を強固にしようと考えているのです」

 フェイスブックはインスタ上で洋服など、「モノが買える」ようにしたいのだ。確かに、膨大なデータを握っているフェイスブックが、しかるべき人にしかるべき商品をレコメンドし、売買を成立させるのは理にかなっている。

「ショッピング路線にかじを切ったときに、『いいね!』件数の非表示はネガティブに働く可能性があります。自分が欲しい商品や、レストランなどにどれだけ『いいね!』がついているかを消費者は知りたいし、それで判断しますから。いわば、『いいね!』は口コミサイトの星の数やユーザーコメントと同じ機能です。そうした事業が始まったときに、件数表示が復活するかもしれません」

 暫定的な措置の可能性が高い「いいね!」件数の非表示。ただ、この動きはほかのSNSでも行われるのだろうか。

「Twitterのリツイートやお気に入り機能をなくすという噂は絶えずありますが、もともと手軽な発信が特徴のSNSですから、お気に入りがつくかどうかの重みは比較的高くないと考えられます。また、リツイートについても、フェイクニュースの抑止などにはつながるとは思いますが、Twitterはニュース性の強い拡散メディア。リツート機能の廃止はその長所がなくなる恐れがあり、運営は踏み切らないのではないかと考えます」

 フェイスブックは日常的に投稿する人は少なくなり、「いいね!」を気にする人も多くはない。フェイスブックで仕様の大きな変更はないと見ていいだろう。

 このようにSNSの転換期にあるといっていい現代。我々も「いいね!」との向き合い方を考えていかなければならないのだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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