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実は危険な「運転マナー」集、サンキューハザードの是非は?

2019年12月28日 06時00分更新

文● 松嶋千春(ダイヤモンド・オンライン

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冬季休暇の旅行やお正月の里帰りなど、何かとドライブの機会が増えるこの季節。昨今はあおり運転による事故が社会問題化し、交通トラブルが増加している。そんなドライバー同士のコミュニケーションをスムーズにするために使われているのが、ハザードランプやホーン、ライトを使ったマナーの数々だ。ただし、これらは交通法規で定められているものではなく、なかなか相手に意思が伝わらない場合も多いようだ。(清談社 松嶋千春)

『サンキュー』の思いは
すれ違いがち

高速道路の渋滞
ハザードランプやホーン、ライトを使った「お礼」や「合図」が運転マナーとして知られているが、中には地域によって意味が変わってくるものもある Photo:PIXTA

 有名な運転マナーといえば、追い越し車線から走行車線に入ったとき、後続車に向けてお礼としてハザードランプを点滅させる「サンキューハザード」や、交差点で右折待ちしていると対向車線の車がライトを点滅させる「行ってもいいよ」の合図が思い浮かぶ。モータージャーナリストの菰田潔(こもだきよし)氏は、これらのローカルな運転マナーのリスクを指摘する。

「サンキューハザードは、元々大型トラック同士が見渡しにくさを補うために始めたコミュニケーションで、それが一般車両にも派生し『サンキュー』の意思表示として定着してきました。しかし本来は、止まってはいけない所に止まった場合に『ここに障害物がありますよ』『車がいますよ』と周りの車に知らせるためにつけるもの。本来の意味とは違った使い方をすると、誤解を招く恐れがあります」(菰田氏、以下同)

 例えば、市街地でタクシーを前方に入れてあげた直後に、タクシーがハザードランプを点滅させたとする。すると、客を降ろすための停車合図としてつけたのに、タイミング的に後続車のドライバーがサンキューハザードだと思い込んだ場合、追突事故につながった例もある。

 あるいは、片側3車線道路のバス停から発進したバスが、真ん中の車線まで移りサンキューハザードをつけた場合、左右の車線にいる後続車両から片方の点滅しか見えず、右折/左折の合図として捉えられる可能性がある。「バスの後続車はバスの走行を妨げてはならない」という法律に従い、バスが自分の車線に来ると思った後続車は、ブレーキをかけて道を譲ろうとしてしまうかもしれない。

「マナーは作法みたいなものであまり気にする必要はなく、基本的には、道路交通法のルールをちゃんと守ることが最優先です。最近やたらとマナーを重視する傾向が強くなっていて、逆にお礼を言われないと気分を悪くする人もいるぐらいです。この本末転倒な運転マナーの傾向は、是正したいと思っています」

促しのライトやホーンは
逆に危険を招く

 交差点の右折待ちでの対向車の「行ってもいいよ」のサインは、右折車に焦りをもたらし、早く曲がろうとするあまり、直進車の脇からすり抜けてくる二輪車や自転車を見落とす可能性がある。また、地域によっては「自分が行くから気をつけろよ」と逆の意味でライトを点滅させるケースもあり、互いに道を譲られたと思い込んで追突する右直事故が後を絶たない。

「もし右折車に道を譲りたいのであれば、手前から減速してあげるのがいちばんいいです。前を空ければ、横からすり抜けてくるバイクなどの車両も見えるので、右折しやすくなります。道を譲られた側も『サンキュー』のハザードランプではなく、丁寧な入り方をすれば感謝の気持ちは伝わるはず。どうしても相手にサインを送りたいなら、手を挙げて合図すれば十分です」

 ホーンについてはどうだろうか。幅の狭い道ですれ違う際、対向車に待ってもらったらお礼としてピッと短く鳴らしたり、信号待ちで最前車両がなかなか発進しないときに「信号が青になったよ」の意味で鳴らしたりすることもある。

「ホーンの音はかなり大きく驚かせてしまうので、近くに歩行者がたくさんいるときには使わないほうがいいです。ホーンは、基本的には事故を防ぐために鳴らすものなので、お礼、威嚇、催促の意図で鳴らすのはルール違反。前方車両が後ろを見ないでバックしてきたときに衝突を回避するために鳴らしたり、『警笛鳴らせ』の標識がある場所で鳴らすのが正しい使い方です」

理想的な車間距離は2秒間
『0、1、2』で計るべし

 高速道路で渋滞に巻き込まれたときによく見かけるのは、渋滞を知らせるハザードランプだ。NEXCOでも、渋滞の最後尾につけた車両についてはハザードランプをつけることを推奨しているが、運転技術にたけた菰田氏は、高速道路でハザードランプを使うことはほぼないそうだ。

「前方が渋滞していると気づいたら、すぐに減速して、前方を空けて走行するようにしています。そうすれば、停車までに後ろに2台、3台と連なります。ギリギリまで通常のスピードで走行し、急停車してハザードランプを点けたとしても、渋滞に気づいていない後続車は避けようがありません。減速走行で車間距離をキープしながら渋滞を知らせる方が、理にかなっています」

 運転時の車間距離は、時速80km走行時には80m、時速100kmでは100mと教習所では習ったが、実際にはこれだと空けすぎなのだとか。前方に余裕があるために他の車がどんどん割って入ってきて、走行しづらくなってしまう。かといって、車間距離を詰めすぎると、昨今世間を賑わす「あおり運転」だと捉えられかねない。では、どれぐらいの車間距離が適切なのか。

「いまクルマ先進国では 距離ではなく秒数換算で“2秒間”が理想的な車間時間だといわれています。ドライバーが反応までの空走距離が1秒間なので、何かあれば残りの1秒で減速・停車などの対応ができます。2秒間空いていれば、バックミラーで見てもそんなに圧迫感がないので、あおり運転と捉えられることもないはずです。『0、1、2』のカウントで2秒間の車間時間を習慣づけましょう」

 2秒間の適切な車間距離を空けることで、渋滞が起きにくくなるというメリットも。

「2秒間空けた場合、1時間当たりの通過可能台数は約1800台ですが、3秒間あけた場合は約1200台しか通れない計算になり、渋滞につながります。逆に、車間時間が1秒しかなかったら、前の車がちょっと減速しただけで後ろの車は急ブレーキを踏まねばならず、その連鎖が渋滞につながります。適切な車間距離を空けることで、車の流れが良くなり、渋滞が起きにくくなるのです」

眠気覚ましには
カフェイン、即・仮眠

 夜間のライトの点灯に関しては、「対向車がまぶしくないように」という気遣いから信号待ち中にスイッチを切る人もいるが、安全性の観点から言えば、それは間違いだ。ライトには前方の障害物を見る目的があるほか、自分の存在を周りに示すためのものでもある。

「暗いトンネル内と夜間の走行では、ヘッドライトの点灯が法律で義務付けられており、このときはスモールランプでも、フォグランプでもなく、障害物を見るためなのでハイビームが基本です。オートでライトがつく車種もありますが、夕方西日がまぶしいときは、周りが明るいのでライトはついてくれません。背中に夕日を感じたら相手は逆光で見えていないので、手動でヘッドライトをつけましょう。このときは自分を目立たせるためなのでロービームがいいです。新しいクルマに装備されてきたスモールが明るくつくDRL(デイタイム・ランニング・ライト=昼間点灯)はこんなときに役に立ちます」

 新型車は2020年4月以降、継続生産車は2021年10月以降、オートライトの装着が義務化される。「車の技術の進歩に伴って、運転もアップデートすべきだ」と菰田氏は言う。最新の技術もうまく活用しながら、安全の根幹を見失わないことが大事だろう。

 最後に、高速道路での単調なドライブはどうしても眠くなってしまうが、そんなときにぜひ試したい、眠気覚ましに効果的な仮眠法を伝授してもらった。

「SAに寄ったら、まずコーヒー、お茶、紅茶などのカフェインをとります。カフェインは摂取してから30分後に効きだすので、飲んだらすぐ寝て、15分~20分程度仮眠を取ります。起きたらトイレに行って、冷たい水で顔を洗います。走り出した頃にカフェインの効果が表れて、しばらくは眠気を催さずに走ることができますよ」

 年末年始の運転、気をつけて行ってらっしゃい!

日本自動車ジャーナリスト協会 菰田潔氏
自動車レース、タイヤテストドライバーを経て、1984年からフリーランスのモータージャーナリストになる。クルマが好きというより運転することが好きでこの仕事をしている。
https://www.ajaj.gr.jp/members/komoda-kiyoshi


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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