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眼鏡の長期保証やサブスクが次々に登場している理由

2019年12月26日 06時00分更新

文● 大来 俊(ダイヤモンド・オンライン

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眼鏡を作ったものの、度数が合わなくなったりフレームを損傷して使いづらい思いをしている人は少なくない。そんな人にウケているのが、眼鏡の長期保証やサブスクサービスだ。

回数無制限で
眼鏡を直せる新サービス

ビジョンメガネの接客イメージ
ビジョンメガネでは「メガネのマエストロ」と呼ばれるプロが手厚い接客を行うと共に、業界では珍しい長期保証サービスも提供している

 2000年代はJINSやZoffなど、SPA(製造小売り)モデルで安価かつファッショナブルな眼鏡を提供する新興勢力が台頭し、業界の勢力図は大きく変わった。しかし、ここ数年は押し込まれて苦戦していた老舗のメガネスーパーが、目の検査を充実させた手厚いサービスを武器に高価格帯商品の販売を伸ばし、業績を盛り返す動きも見られる。

 シニア向け拡大鏡をファッション化し、独特のテレビCMで話題を席巻した眼鏡型拡大鏡「ハズキルーペ」の大ヒットもトピックだ。市場が縮小する眼鏡業界でも、売り方を変えればまだ勝ち組になれる可能性があることを印象付けた。

 そうした中、眼鏡を取り巻く新施策として話題をさらっているサービスがある。中堅眼鏡チェーンのビジョンメガネが提供する眼鏡の長期有料保証サービス「ビジョンパーフェクト保証」だ。一般的に眼鏡の保証期間は6カ月や1年などと短い。筆者は眼鏡ユーザーだが、50歳を前に老眼が進み、フレームも少し損傷してしまっている。本来なら新しいレンズにしたり、フレームを直したりしたい。だが、保証期間を過ぎてしまっているため、我慢して使っているのが現状だ。

 そんな不満をビジョンパーフェクト保証なら解消できる。保証期間は3年間。期間内なら何度でも度数を変えたレンズに交換したり、フレームを修理もしくは新品に交換することができるからだ。盗難にあった場合も、警察への届け出書類があれば、新品を提供してくれる。

 交換するレンズやフレームの保証上限額が3万円の場合は3年間で1万800円、5万円なら1万8000円、10万円であれば3万6000円(全て税込み)と、それなりの保証料はかかる。だが、月に直せばそれぞれ300円、500円、1000円の設定。これで老眼が進んだり、レンズにキズが付いたり、フレームが曲がってしまったりした場合に、回数無制限で直したり、新品と変えてくれるのだから、価値は高い。

 あるいは、子供の眼鏡の方が有効かもしれない。子供は成長と共に度数が変わりやすく、活発に動いて眼鏡を壊すことも多いからだ。「大人も子供も買ってすぐには度数が変わったり、壊したりはしない。トラブルが増えるのは2年目、3年目。それなのに従来の短期保証ではカバーできていなかった。今回のサービスはその課題を解決するもので、家電量販店が提供する長期保証サービスの眼鏡版」と、ビジョンメガネの安東晃一社長は話す。

長期保証の提供で
“生涯顧客”を囲い込める

 実は、こうした長期保証サービスは他の眼鏡チェーンが先行して提供していた。だが、そのサービスは保証料に加えて「毎回数千円の自己負担金が生じる」条件付き。それに対し、ビジョンメガネの長期保証は自己負担金がゼロ。「そのため、気になったらどんどん修理や交換ができるのがメリット」(安東社長)。この負担金ゼロを実現しているのは、同社が損保会社と保険契約を結び、修理や交換を保険金でカバーするシステムを導入しているからだ。

 さらに、ポイントとなるのが3年間修理や交換をしなかった場合、支払った同額の割引券をもらえることだ。つまり、トラブルが発生してサービスを利用すれば「加入しておいてよかった」となり、利用しなくても次の購入に使えるクーポンで実質的にキャッシュバックが受けられる。どちらの場合も顧客は満足感を得られるわけだ。

 もう一つ、このサービスが優れているのは、3年間、顧客とつながっていられることだ。割引券を渡すことで、次、そのまた次も購入してくれる可能性が高くなり、そうなれば無限ループのように“生涯顧客”として囲い込むことが可能になる。

 同社は2019年1月に全国110店でビジョンパーフェクト保証を販売開始。購入者の約20%が加入する順調な滑り出しを見せた。加入者を年代別に見ると、10~14歳が全体の約15%と圧倒的に多く、老眼が始まる世代である40代が約13%と他の年代に比べて高くなっているのが特徴。狙っていたターゲット層にしっかりと刺さっていることがデータからもうかがえる。月間約60件の修理・交換が発生しているが、全て保険でカバーできているため、同社のロスがないどころか、サービス単体で収益を生むほどの成果を生み出しているのが現状だ。

眼鏡にもサブスクや
D2Cの波

 ビジョンメガネの新施策が消費者の心を捉える中、他社からも斬新な試みが矢継ぎ早に出てきている。一つは眼鏡のサブスク化だ。全国に店舗を展開するメガネの田中チェーンは、19年4月から業界初の眼鏡のサブスクリプションサービス「NINAL(ニナル)」をスタート。月額2100円(税別)を払えば、3年の期間中に、1000種類以上の眼鏡とサングラスの中から好きな商品を3本まで、レンズ込みで掛け替えができる仕組みだ。また、中学生以下の子供向けには月額1800円(同)で、レンズとフレームの両方を回数無制限で替え放題のプラン「NINAL STEP(ニナルステップ)」を提供する。

 19年6月からは、メガネスーパーが小学6年生までの子供向けに、月々1000円(税別)で定額制の「子供安心プラン」を開始。初期費用がわずか1000円(同)で眼鏡が手に入る画期的なサービスだ。3000円(同)を追加で払えば、度数を変えたレンズや別のフレームに交換もできる。解約もいつでも違約金なしで可能だ。いずれも全世代向けの定額借り放題サービスにはなっていないが、現時点で実現している眼鏡の精一杯のサブスクといえる。今後はアパレルのサブスクであるエアークローゼットやメチャカリのように、眼鏡の真のサブスクが登場する可能性は十分にあるだろう。

 もう一つはD2C化。D2Cとはダイレクト・トゥ・コンシューマーの略で、メーカーが企画、製造した商品を消費者に直接販売するビジネスモデルだ。SNSでユーザーと直接つながり、コミュニケーションを図ったり、上がってきた声を製品化に役立てたりしながら、基本的にECに特化して販売することが従来のSPAとは異なる点だ。

 米国ではひと足早く、Warby Parker(ワービーパーカー)が眼鏡のD2Cを展開して大成功を収めている。ECサイトでフレームを5つまで選んで自宅に取り寄せて試着ができ、気に入った商品を注文する仕組みだ。試着した姿を写真で撮影してSNSに投稿すると、ワービーパーカー側から似合うかどうかなどのアドバイスを受けられる。視力検査もスマホアプリで可能。洗練されたデザインの眼鏡が一律95ドルの安さで購入できる点も受け、米国ではミレニアル世代に大ヒット。評価額が10億ドル以上のユニコーン企業の仲間入りも果たしている。

 D2Cもアパレル業界での浸透が早く、人気インフルエンサーのゆうこすや元AKB48の小嶋陽菜がD2Cで独自ブランドを展開し、SNSでつながる濃いファンがこぞって購入するなど社会現象を巻き起こしている。国内眼鏡でも本格的なD2C型モデルが登場すれば、業界の次世代を切り拓くきっかけになるだろう。

(大来 俊/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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