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神戸「教師間いじめ」の事件化が秒読み、兵庫県警が任意聴取

2019年12月23日 06時00分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

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教諭間のいじめ問題を受け、記者会見した神戸市立東須磨小学校の仁王美貴校長(右端)ら(2019年10月9日撮影)
教諭間のいじめ問題を受け、記者会見した神戸市立東須磨小学校の仁王美貴校長(右端)ら(2019年10月9日撮影) Photo:JIJI

子どものいじめ問題が悪質・深刻化する中、今年は「教員間のいじめ」というキーワードがメディアを賑(にぎ)わせた。神戸市立東須磨小学校で、教員4人が同僚の男性に激辛カレーを無理やり食べさせるなど悪質な嫌がらせをしていた問題。兵庫県警は4人を任意で事情聴取しており、事件化するのは間近とされる。この問題を巡ってはインターネットで映像が出回り、市教育委員会が給食でカレーの提供を取りやめたため「改めるべきはそこじゃない」「カレーに罪はない」など多くのツッコミを受け、失笑を買った。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

「おぞましい行為」と市長

 県警は11月18日、4人の事情聴取を開始。それ以前にも被害男性やほかの教員にも事情を聴いており、暴行や強要の容疑での立件は秒読みとみられる。

 今回、被害者である男性教員が暴力を振るわれたり、嫌がらせをされたりして、精神的に不安定になって9月から欠勤。県警に暴行容疑で被害届を提出していたことは、既にお伝えした通り(「教員間のいじめ」刑事事件への発展が濃厚、原因は「神戸方式」人事か) 。

 その後も新聞やテレビで連日、大きな扱いで報道されるが、市教委や東須磨小の対応は常に後手に回り、世間の理解を得られるようなものでは到底なかった。

 東須磨小は10月16日、保護者説明会を開催し、問題の経緯を説明した。しかし「パワハラと認定した行為だけお答えする」というスタンスで、具体的にどんな行為があったかほとんど回答を拒否。

 また、ショックを受けた児童4人が学校を欠席していたことが判明。ほかにも、カレーを無理やり食べさせている動画に写っている家庭科室に「子どもが入れなくなった」とする意見が寄せられていたことも明らかになった。

 この場で4人の謝罪文書が読み上げられたが「深くお詫(わ)びしたい」「猛省を続けていきたい」「申し訳ない気持ち」「子どもたちを精いっぱい愛してきたつもり」など、何とも乾いた文面だったらしい。

 保護者からは「連れてきて謝罪させろ」「ちゃんと本当のことを話してほしい」「誠意が感じられない」などと、強烈な怒りや抗議の声が上がったという。

 翌17日には、久元喜造市長や長田淳教育長らがこの事件について協議する総合教育会議を開催した。

 久元市長は「おぞましい行為に及んだこうした教員が、なぜ教育現場にいられたのか、市民も疑問に思っている」と強烈に批判。

 長田教育長は「市教委と学校に溝があると聞く。学校は問題を校内で収めたいと思う意識が強いのではないか」と指摘した。

 市教委は東須磨小に児童の相談を受けるカウンセラーを常駐させ、事実関係の解明のため、弁護士3人による調査委員会を設置したと説明。

 同日開催された市議会文教こども委員会では、東須磨小で児童同士のいじめ認知が2017年度は0件だったのに、18年度は13件、19年度は半年間で16件と急増していることが明らかにされた。

 市教委は「教員間の仲がぎくしゃくしていたことが影響したのではないか」と分析。何のブラックジョークかと思うが、4人のうち一部はいじめ問題に対応する指導担当だったという。

キーマンは前校長

 全国紙社会部デスクによると、市教委は今回の被害者の男性以外にも、複数の教員がパワハラやセクハラの被害を受けていたと認定。そのうちの1人である女性も激辛ラーメンを無理やり食べさせられていたという。

 ここで問題になるのが、今春に異動した前校長の存在だ。

 前校長は今年初め、この女性が激辛ラーメンを食べさせられた事実を耳にしていたという。

 同じ時期には、今回の被害男性との面談で「いじめられてなんかいないよな」と発言。男性教員は圧力を感じ、被害を申告できなかったとされる。

 この前校長は教頭だった17年夏、男性は飲み会に参加しないと告げていたが「新人なら行くべきだ」と強制。市教委は「パワハラに当たる」と認識しており、前校長もそうした点を認めているという。

 こうした嫌がらせに強く関与していた4人のうち男性2人は、前校長と特に親しかったといわれている。

 ほかにも東須磨小で勤務していた女性が「前校長らのパワハラを受けて退職した」などと市議会に訴え、前校長を市議会に参考人招致し、刑事告発するよう求める陳情書を提出したことも明らかになった。

休職中の加害者に給与支給

 この事件で市民の反発を招いたのが、4人が休職している間、有給休暇扱いで給与が支払われている点だった。

 4人について「おぞましい行為」と批判した久元市長は10月24日、起訴される可能性がある職員の給与を差し止める条例改正案を提出すると発表した。

 市教委も4人から自主退職の申請があっても受理しない方針を決めた。処分前に認めると、処分を受けずに退職金が満額支給される可能性があるためだ。

 4人は実質的な「謹慎」で出勤していなかったが、市教委の規定には自宅謹慎などの処分は存在しないため、行動は自由で給与も支給される有給休暇の扱いだった。

 本来、自治体の首長は教育行政を指揮する権限はないのだが、条例の提案は可能。懲戒処分前でも「異常な事態なので、異例な手段で対応する」と、職員の給与を差し止められるよう条例を改正する裏技を使った。

 これには市議から「市長による教育行政への介入ではないか」と懸念する声も聞かれたが、別の市議は「本当なら、市教委がもっと強い姿勢で対応して然るべきだった」と擁護した。

 同29日、改正条例案はスピード成立した。翌30日に公布・施行。4人を休職、31日に分限休職とし、給与を差し止めた。

 これまでの条例では、給与が発生しない「休職扱い」にできるのは「起訴された場合」「病気の場合」に限られていた。

 そのため1人は11月9日、処分を不服として市人事委員会に処分取り消しを求めて審査請求するなど、ごたごたが続いている。

 4人は「いじめは犯罪であり、いずれ警察の御厄介になる」と身をもって児童らに示すことになりそうだ。何とも皮肉な“反面教師”というところだろうか…。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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