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エスカレーターの「片側空け」はなぜNG?プロに聞く正しい乗り方

2019年12月19日 06時00分更新

文● 中村未来(ダイヤモンド・オンライン

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一向に浸透する気配のない、エスカレーターの正しい乗り方。JR東日本がエスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンを行うなど、鉄道事業者は周知を図ろうとしているが、定着するどころか、そもそもキャンペーンすら知らなかったという人も多い。問われるエスカレーターの正しい乗り方について、ジャパンエレベーターサービスに話を聞いた。(清談社 中村未来)

「片側空ける」は
輸送効率を下げる

エスカレーター
片側空けはエスカレーターの劣化を加速させる恐れがあるほか、そもそも輸送効率を下げる Photo:PIXTA

 エスカレーターの片側空けの慣習が広まったのは、関東では1980~90年代頃、関西では1970年頃といわれている。きっかけは西洋に倣った、大阪万博だった、などとされているが、はっきりとはわかっていない。

 東京では、エスカレーターの右側を歩く人のために空けるというのがルールのようになっているが、歩行によるエスカレーターでの事故は少なくなく、東京都の発表によると、平成24年から平成28年の5年間で、6889人が救急搬送されている。

 エスカレーターの正しい乗り方について、ジャパンエレベーターサービスの広報、佐久間幸子氏は言う。

「周知の通り、エスカレーターは歩くものではありません。傾斜があり、さらに通常の階段よりも蹴上がりが高く、危険であるというのが理由です。運動能力が高い人でも転ぶ可能性があります。手すりにつかまり、立ち止まって乗るのが正しい乗り方です」

 片側だけに負荷がかかることで、機械に支障が出るという話もあるが…。

「片方に負荷がかかるからといって、ただちに変形や歪みが生じるということはありません。ただ、それが10年以上続けば、劣化に差が生じることもあるかと思います。そもそも片側空けは輸送効率を下げるので、2列になって乗ったほうがいいんです」

定員オーバーのエスカレーターは
逆走することも

 一般にはあまり知られていないが、実はエスカレーターの注意事項は数多くある。歩行禁止のほか、濡れた手で乗らない、たばこを吸ってはいけないなどがそうだ。また、ベビーカーを乗せることも原則禁止である。

「エレベーターが来るのが遅いから、エスカレーターに乗せてしまえという人も多いと思うのですが、落下の危険性があるので、乗せてはいけないことになっています。ただ、乗せたからといって罰則があるわけではなく、黙認されているのが現状です。同じ理由から、スーツケースも本来はエスカレーターではなく、エレベーターを使うべきものです」

 これもあまり知られていないが、エスカレーターには定員もある。

「大人2人が横並びに立てる一般的な大きさのエスカレーターの場合、すべての段に2人が乗ってしまうと定員オーバーです。実際に、定員オーバーになったエスカレーターが、重量に耐えきれず逆走してしまったという事例も過去にありました」

 とはいえ、このような定員オーバーによる事故は、過度な負荷が長時間かかった場合など、特殊な条件下によって引き起こされるため、日常生活で気にする必要はない。注意するとすれば、催事やイベントなど、大勢の人で混み合うときだという。

 一方で、「動く歩道」は、定員オーバーの心配はほとんどなく、さらにベビーカーやスーツケースなどを乗せることも原則OKということになっている。

「水平なので、スーツケースなどを乗せても問題はありませんし、歩行もよしとされています。ただし、あくまで『歩いてもいい』という意味合いです。推奨しているわけではありません」

 また、ホームセンターなどでよく見かける、傾斜がついているタイプのオートスロープは、買い物カートを乗せられるが、実は歩くのは禁止。傾斜があるので立ち止まって、手すりにつかまって乗るのが正しい乗り方なのだ。

エレベーターの1センチの隙間に
落ちていた意外な物

 では、エレベーターの正しい乗り方はどうだろうか? エスカレーターと比べると、エレベーターの禁止事項は比較的よく知られている。揺らさない、飛びはねない、ドアを無理やり開閉させない等々。これら行為は、いずれも安全装置が作動する可能性がある。

 ところが、まれに故意ではなく、エレベーターが停止してしまう事態も。その原因が“落とし物”だ。

「最近のエレベーターの敷居の隙間は、大体1センチくらい。そこまで大きなものが落ちることはないのですが、物によっては安全装置などに触れてエレベーターが停止してしまうこともあります」

 1センチの隙間といえど、侮ることなかれ。過去には、机の天板が落ちて、エレベーターが停止したことがあったという。

「恐らく、引っ越し作業中に落ちたのだと思います。また、タブレットなども隙間から落ちる可能性は十分にあるので、注意が必要です。よく落ちているものの代表例としては郵便物、鍵、小銭などですね。これによってエレベーターが停止したり、事故につながる可能性は低いですが、絶対とは言い切れません。エレベーター内には必ず緊急連絡先が表示されていますから、連絡していただき、技術員に対応してもらってください」

 もしも、乗っている間にエレベーターが停止した場合は、どうするのが正解なのか?

「最近のエレベーターは、停電時自動着床装置など、閉じ込めを防止するためのシステムが備わっています。万が一停電しても、救出運転といって、バッテリーを用いて動くようにできているので、最寄り階に着床し扉が開くようになっています。ただ、無理やり扉をこじ開けようとすると、救出運転が作動しなくなるので気をつけてください」

 緊急時の対応としては、まず、戸開きボタンやすべての行き先階のボタンを押して、扉の開いた階で速やかに降りること。それでも扉が開かず閉じ込められた場合は、非常ボタンを押して、技術員を待つ。これが正解の行動だ。

「エレベーターによっては、防災用のキャビネットを設置しているところもあります。ラジオや非常食、簡易トイレなどが搭載されているので、復旧まで時間がかかるときも安心です」

 エスカレーターもエレベーターも、身近すぎてその安全性について考える機会は少ない。万が一の事態になっても慌てないよう、最低限の知識は頭に入れておきたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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