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スバルはトヨタの軍門に下ったのか?スバル社長に聞く

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中村知美
SUBARU代表取締役社長CEO中村知美 Photo by Hirobumi Senbongi

SUBARU(スバル)はトヨタ自動車と株式を持ち合うことになった。スバルはトヨタからの追加出資を受けてトヨタの持分法適用会社となる一方で、最大800億円分のトヨタ株式を取得する。これをもって、「トヨタの軍門に下った」「電動化技術を使わせてもらう対価を払わされた」という見方もある。しかし、SUBARUの中村知美社長はダイヤモンド編集部などのインタビューで、その狙いは「対等」な関係の構築だと強調した。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

「ここからは手の内を明かさない」
というトヨタとの境界線を壊したかった

――なぜトヨタ自動車との資本提携の強化に踏み切ったのですか。

 15年間トヨタと提携関係を続けてきましたが、トヨタに対して「このやろう、偉そうだな」とか「なぜそこまでしか技術を教えてくれないんだ」といった思いを持っていました。トヨタにもスバルに対して同じような思いがあって、両社の間に「垣根」ができてしまっていました。

 従来からトヨタはスバルの大株主ですから、どうしても発言権は大きくなる。実際に、昔のトヨタは資本の論理を振りかざすところがありました。私だって、社内でトヨタとの(折衝の)窓口をしていましたから嫌な思いもしましたよ(笑)。

 そうした中で、スバル側は「大株主の言うことは聞きますよ」とトヨタに譲歩することが多かった。そうした不満が溜まった結果、「スバルからこの技術は絶対にトヨタには明かさないぞ」と、意固地になるわけです。お互いに、そういう経験が積み重なって、心の壁ができていました。それを壊す必要がありました。

 もはや、「ここから先は教えない」などと互いに言っている時代ではないのです。(CASE〈コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化〉の波がやってきて)「100年に一度の大変革時代」を迎えている。でも、波がどういう方向か、いつ来るかは分かりにくい。その中で、全部の技術に手を出しているとパンクします。トヨタだってスバルと協業できるところはしたい。できるところは両社で効率的にやりましょうということです。

 トヨタと協業するところと、スバルらしさを磨くところを分けて、後者にしっかりリソースを充てられるようにします。

 でも、トヨタとの間に壁をつくって仕事をするのをやめよう、といっても従業員は「変わるわけない」と思うでしょう。だから、協力関係を本気で変えるための「象徴」が欲しかった。だから株式を持ち合うことにしたのです。

――トヨタとのギブ&テイクはどう変わるのでしょうか。何を取りにいきますか。

 これまでは(ギブとテイクが1対1の)ウィン・ウィンの関係でした。つまり、何かもらったら、こちらから何か返さないといけない。それが、スバルからも出資する「持ち合い」によって変わったのです。

 実のところ、スバルから提供できて、トヨタが喜ぶものって、そんなにないのです。だって売上高で10倍も違う会社ですから。いきおいトヨタが得るものより、スバルが得るもののほうが多くなる。それでスバルは「(トヨタから出してもらえない技術については)しょうがないから自分たちで開発するか」などと言って悩んでいました。

 スバルとトヨタの販売店はガチンコで戦っています。スバルのSUV「フォレスター」の最大のライバルはトヨタの「RAV4」。真っ向勝負をしているという現実の中で、(ギブ&テイクのバランスが崩れている状態では)互いに「敵に塩を送りたくない」「この技術は明かさない」となってしまうのは自然なことだったと思います。

 でも、今回、スバルがトヨタに出資するのだから「対等な関係」、イコールパートナーになるのです。スバルからの出資額がどうだとか、トヨタのスバル株式の持ち分比率がどこまで上がったか、ということは重要ではありません。「株を持ち合う」イコールパートナーになったことなったことが重要なのです。

スバルも出資者であり「対等」な関係
技術者は「トヨタとケンカしていい」

 先日、トヨタと電気自動車(EV)を共同開発している現場に行って、スバルからの出向者たちに株式の持ち合いの趣旨を説明しました。エンジニアたちは皆、「じゃあ遠慮せずに明日からガンガン言ってやる」とますますやる気を出していましたよ。

 私は「遠慮せず(トヨタと)ケンカしていい。でも仲良くケンカしてね」と言っています(笑)。

 手前味噌になりますが、トヨタには、スバルの技術を認めてもらっています。例えば、スバル独自の4輪駆動システムの知見によってトヨタ車の4輪駆動が良くなりました。でも、それも一方通行ではなくて、トヨタの技術が改善するプロセスを知ることで、スバルの4輪駆動もさらにレベルアップしようとしています。

――トヨタとの協力関係を深化させるのに、既存の資本関係(持ち分比率16.83%)では足りなかったのですか。

 持ち合いはスバルにとって(パワートレイン関連の知的財産や部品などの)調達コストの削減にもなります。

 例えば、ハイブリッド車(HV)の次世代駆動システムはトヨタの技術を一部活用します。これまでのトヨタとの希薄な関係性では、トヨタに対して(駆動システムの)知的財産に比較的高額のフィーを支払わなければなりませんでした。しかし、持ち合いをすることで関係性が強化されると、その“技術提供料”をディスカウントしてもらえるようになります。

 その他、部品の調達でも、両社のボリュームを生かして適正な価格を実現したい。(材料やメーカーが限られ)難しいバッテリーの確保でも、トヨタとの協力は不可欠です。

 結果的に、知財や部品の調達コストが安く抑えられコストメリットを得られると考えています。

――CASEの波が押し寄せています。電動化やEVなどの技術でトヨタへの依存が進むと、独立を保つのが難しくなるのではありませんか。

(スバルらしさを保つために)技術力が重要と考えています。

 トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)を活用するといっても、簡単ではないのです。スバルの水平対向エンジン(一般的なエンジンのピストンは上下に動く。これに対し、水平対向エンジンはピストンが水平に動くため、車が低重心になり、縦の振動が少なくなる)に適合させるのはものすごい大変で、その難しさはフルで自社開発するのと同レベルといっても過言ではありません。

 北米市場に投入したプラグインハイブリッド車(PHEV)の駆動システムの開発で、トヨタの電動化技術の適用をやってのけたことも、トヨタに技術力を認められることにつながったと自負しています。

――スバルらしさの象徴である水平対向エンジンを搭載しないEVでは、他社との差別化ができないのでは。どうスバルらしさを出しますか。

 スバルがつくれば、スバルらしくなります。一言でいえばそうです。EVにおいて具体的にどこで差別化するのかは簡単には言えません。まさに、それを考え抜くのが私たちの仕事です。

 トヨタとのEVの共同開発では、四駆のSUVの開発をスバルが担当していますが、内燃エンジンなど、メカによる駆動より、EVのモーターによる駆動のほうが、トルクの出し方が自由なので、スバルらしさを出せるのではと考えています。

 スバルらしさは、水平対向エンジンの走りだけではなくて、視界の良さや取り回しの良さ、安全思想などもある。総合的にスバルらしさを追求していきます。

――デンソーやアイシン精機などトヨタグループの開発の枠組みに参加することが増えています。非トヨタグループのサプライヤーとの関係が希薄化し、多様性が失われるのではないですか。

 そんなことはありません。現状、デンソーとも欧州系のメガサプライヤーとも取引をしていますし、関係を変えようとは考えていません。

(部品の基本骨格を共通化する「コモンアーキテクチャー」を採用したりして)トヨタと共通の部品を使うようになれば(非トヨタグループのサプライヤーとの)取引額は減るかもしれませんが、現状、サプライヤーとの関係を変えようとは考えていません。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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