このページの本文へ

中国シャオミ日本上陸、ソニー・シャープを超える成長戦略の凄み

2019年12月10日 06時00分更新

文● 高口康太(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
シャオミが日本に投入するスマートフォン。世界初となる1億800万画素のイメージセンサーや超広角レンズを搭載しつつ、価格は5万円代前半とお手頃だ 写真提供:シャオミ

スマートフォン世界4位の中国メーカー、小米科技(シャオミ)は9日、東京で記者会見を開き、日本市場参入を発表した。日本ではスマートフォン「Mi Note10」「Mi Note10 Pro」を筆頭に、世界でもっとも売れているウェアラブルバンドの最新機種「Miスマートバンド4日本版」、モバイルバッテリー「パワーバンク3」、IoT炊飯器「Mi IH」、さらには2種類の旅行用キャリーケースまで一挙に投入する。(ジャーナリスト 高口康太)

世界初1億800万画素センサー搭載
スマホのコスパはモンスターレベル

「Mi Note10」は16日から、「Mi Note10 Pro」とウェアラブルバンドは12月23日(予約開始は9日から)、残る製品は年内に、いずれもアマゾンで販売する。Mi Note10はシャオミの日本カメラR&Dセンターで開発した初の機種。世界初となる1億800万画素イメージセンサーや超広角レンズ、マクロレンズなど5種類のカメラを搭載した、意欲的な新機種だ。1億画素とはスマートフォンはおろか、デジタル一眼レフでもなかなか聞かない数字だ。拡大に耐えられる解像度の高い写真が撮影できる。他社では買えない、きわめてオリジナリティの高いスマートフォンに仕上がっている。販売価格は「Mi Note 10」が5万2800円、「Mi Note10 Pro」が6万4800円。

 かつて中華スマホといえば、「安かろう悪かろう」という粗悪品の代名詞だった。この状況を変えたのがシャオミだ。同社は10年の創業、11年に初のスマートフォンをリリースしていきなり大ヒットを飛ばす。他社と比較した強みは、圧倒的なコストパフォーマンスだ。「スナップドラゴン855」という同一のSoC(システム・オン・チップ、スマホの主要性能を決める中核部品)を搭載した機種で比べると、米グーグルのPixel4、ソニーのXperia5がどちらも約9万円なのに対し、シャオミのMi9は約5万円(中国での販売価格)と大幅に安い。

 実はシャオミは「ハードウェアの利益率を5%以下に留める」という方針を採用している。自ら進んで薄利を選ぶ背景には、挑戦的なビジネスモデルがある。シャオミはスマホのようなモノを売って儲けるのではなく、購入者に広告やゲーム課金、動画配信などのウェブサービスを届けることで利益をあげている。伝統的な製造業ではなく、ハードウェアを窓口にしたネット事業者を目指すという戦略だ。ソニーなど国内の電機メーカーもハードを入り口にサービスを売る戦略を試みてきたが、シャオミはより徹底して取り組み、企業成長に繋げることに成功している。この戦略が、ソニーやシャープといった日本のスマホメーカーを軽々と抜き去った大きな原動力だろう。

日本市場に投入したシャオミオリジナルの旅行用キャリーケース
日本市場に投入したシャオミオリジナルの旅行用キャリーケース。もはや単なるスマホメーカーではないのだ 写真提供:シャオミ

 直近業績でも、この戦略がはっきりと見て取れる。18年は売上高ベースではスマホが1138億元(約1兆7600億円)で、インターネットサービスの160億元(2480億円)を圧倒している。だが事業利益では、スマホが70億元(約1090億円)、ネットサービスが100億元(約1550億円)と逆転する。「モノではなくサービスを売れ」との戦略は今でこそよく聞くが、10年前の創業時点からこれを志向したのは画期的だった。

 販売ルートも革新的だ。シャオミは強力な直営EC(電子商取引)モールを持ち、中間流通事業者を通さず直接販売する戦略を取った。後に代理店や携帯キャリア経由の販売も追加したが、直営ECストアと直営店舗の充実ぶりは他社を上回る。また、シャオミのブランド力と販売チャネルを利用してさまざまなサードパーティのアイテムを販売する小売り事業者としての地位も確立した。「ハードウェア、ネットサービス、自社製品以外も売る販売チャネル」がシャオミを支える三本柱であり、創業者の雷軍氏はこの戦略を「トライアスロン」という言葉で表現した。

 創業時の三本柱に加え、後にもう一つの主要事業が加わる。それがIoT(モノのインターネット)だ。ウェアラブルバンドやVRゴーグルといったガジェットから、エアコンや炊飯器、洗濯機などの白物家電まで、多くの製品がラインナップされている。

シャオミが発売した炊飯器。遠隔で炊飯開始を操作できるほか、お米の品種にあわせた炊き方も設定できる。価格は9980円(税別)とこれもお手頃  写真提供:シャオミ

 その開発方法も独特。自社では開発せず、有望なベンチャー企業に出資し育てるという方針だ。シャオミの出資を受けた企業群は「シャオミ・エコシステム」と呼ばれ、その数はすでに100社を超えているという。ニューヨーク証券取引所に上場した華米科技(ホワミ)など、株式公開する規模にまで成長した企業もある。

 シャオミ・エコシステムの一員であるIoT楽器メーカーPopumusicの李維マーケティング・ディレクターは、過去の筆者の取材に対し、シャオミによる支援を次のように語っている。「資金提供だけではありません。コストダウンのためのサプライヤー探しでも、シャオミの豊富なネットワークが生きました。何よりシャオミの販売力が大きい。今、私たちの販売ルートはシャオミが過半を占めています。買い上げ方式なので、在庫リスクもシャオミに負担してもらえるのです」。

 ハードウェアベンチャーが成功する難易度はソフトウェアより高い。資金やノウハウ、在庫リスクなど多くの課題があるためだ。シャオミは有望ベンチャーを育て、自社の製品ラインナップを強化し、上場まで行き着けばキャピタルゲインも狙えるという理想的にも思えるシステムを作り上げている。

 と、このようにまとめると、創業から順風満帆だったかのように思えるが、そうではない。シャオミは14年、15年と2年連続で中国スマホ市場1位を獲得したが、16年には5位にまで急落している。代わりにトップ3に入ったのがファーウェイ、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)の製造業出身3社だ。急落の要因はマーケティングや販売チャネルなど多岐にわたるが、ネット企業を標榜するシャオミはスペックでは上回っていても製造品質では製造業出身のメーカーに劣るとの評価が広まったことも見すごせない。シャオミは18年7月に香港で上場したが、株価は上場時が最高値で、現在はほぼ半値にまで落ち込んでいる。

 シャオミが反攻の拠点としたのがインド市場だ。15年にはインド工場を開設、17年第4四半期には出荷台数1位の座を獲得し、現在もその座を保持している。さらにインドネシアや西ヨーロッパへも進出。売り上げに占める国外市場の比率は17年の28%から18年には40%と急進している。

 ただ、スマホ市場の争いはどの国においても激烈だ。米調査会社IDCによると、19年第3四半期のインド市場首位はシャオミだが、出荷台数の伸び率は8.5%にとどまっている。これに対しライバルのVivoは前年比58.7%増、realme(OPPOから独立したブランド)は前年比401.3%増、OPPOは92.3%増と猛烈な勢いで追撃している。

 そもそも世界スマホ市場は17年から減少が始まっている。新規顧客の獲得を争う成長市場と比べ、相手の客を奪い合う縮小市場の競争はまさに生き馬の目を抜く世界。インドで息を吹き返したシャオミにとっても、気を抜けない戦いが続く。そして今後も海外展開を進めると明言しており、その一環が今回の日本参入だ。シャオミのビジネス戦略を踏まえれば、日本市場でもかなり猛烈な攻勢をかけてくるのではないだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ