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診察中の会話から病名を判別する電子カルテ、体調不良を検知するロボット

音声認識やロボットが医療現場の課題を解決、HOSPEX 2019

2019年12月10日 09時30分更新

文● 戸津弘貴 編集●ASCII

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 2019年11月20日~22日、第44回目となる医療福祉分野の総合展示会「HOSPEX Japan」が開催された。スタートアップコーナーでは、ロボットやAI、音声認識などの技術を持ったスタートアップ企業が、医療・福祉関連向けのサービスや製品の展示を行っていた。

HOSPEX Japanのスタートアップブース。

診療報酬返還リスクを軽減するクラウド

 HealtheeOneは、医療従事者向けの付帯業務を効率化するソリューションを提案していた。特にユニークなのは、医療機関が診療報酬を請求する際に必要な施設基準項目を一元管理できる、施設基準管理・内部統制ファイリングクラウドシステム「HealtheeOneコンプライアンス」だ。

 多くの医療機関では、医師や検査、薬局、看護師などが縦割りで管理され、連携も不十分なまま運営されていることが多いという。管理部門からの問い合わせ、照会にも多忙を理由に十分な情報を提供できない、そもそも情報が整理されていないなど部門によって抱える課題もさまざまという混沌とした状況がいまだに残っており、それが元で「診療報酬返還」を要求されるケースが後を立たないという。

 「HealtheeOneコンプライアンス」では、関連書類を一元管理し、更新や提出の頻度などを行うことで、診療報酬返還のリスクを軽減するとしている。また、副次的な効果として、縦割り構造を打破し、部門間のコミュニケーションが取れるようになることでの効率化や風通しの良さが期待できるとしている。

施設基準管理・内部統制ファイリングクラウドシステム「HealtheeOneコンプライアンス」。

フクロウ型ロボットとの会話から体調不良を検知

 ハタプロは、フクロウ型のコミュニケーションロボット「ZUKKU」を紹介した。人感センサーとマイクが搭載され、起動ワードを発声しなくとも機能を呼び出すことが可能になっている。Wi-Fiに接続して利用するほか、SIMを挿して使うこともできる。

フクロウ型のコミュニケーションロボット「ZUKKU」。

 今回の展示では、ZUKKUとタブレットデバイスをセットで運用し、離れた場所に住む家族がZUKKUと会話した際のネガティブワード、ポジティブワードを解析して体調不良などを通知。コミュニケーションのきっかけとする事例が紹介されていた。

 タブレットには、質問に答えるだけでパーソナライズを行ったり、日々のコンディションを確認したりする機能や、脳トレにもなるクイズなど使用頻度を増やす工夫も搭載されている。

 具体的な事例としては、11月30日より、「ロボットと共生する社会」の実現に向けた取組の場である「かながわロボタウン(辻堂駅自由通路)」にて、ZUKKUを活用した画像認識・対話AIを活用した 次世代型店舗「ヘルスケアステーション」を、令和元年度ロボット共生社会推進事業の一環として展開する。通りがかりの方に質問形式でカウンセリングを行い、その方に合ったリフレッシュ方法を勧めるというもので、人が介在しないことで気軽にメンタルチェックができるとしている。

ZUKKUとタブレットを組み合わせて会話から体調不良などを検知。脳トレになるクイズを搭載して使用頻度を増やす工夫も。

診察中の会話から病名・処方の候補を提示する音声認識電子カルテ

 kanataは、音声認識と構文解析を利用した電子カルテ「Voice-Karte」を展示した。今までの電子カルテは、診療が終わった後に医師がキーボードで入力していたので時間がかかり、医師は入力の手間や時間、患者にとっては待ち時間が増えるなどの負担が生じていた。

 「Voice-Karte」を使用することで、患者との対話の中で病名や処方などを判別し、候補となるオーダーの中から適切なものを選ぶことで、カルテ入力の工数を省力化できるという。

 入力支援のためのマイクなども用意し、診察しながら容易な入力ができるソリューションも開発中だという。

音声認識と構文解析機能を搭載する電子カルテ「Voice-Karte」。音声入力のためのマイクも用意する。

手書きの問診票をテキストデータ化

 モビラスは、手書き認識技術を利用してカルテや問診票の電子化を支援する「スマ箋(せん)」を紹介していた。

 カルテが電子化されても、問診票など手書きの行程はまだ残っており、それを転記するだけでもかなりの負荷となる。スマ箋では、紙に書いた筆致を自動認識してテキストデータに変換。連携した電子カルテなどのアプリに転送することで電子化の支援をする。

 医療機関向けに特化したソリューションではなく、あくまでも手書き認識技術の提供ということで、アプリやAPIなどの開発、連携作業を他社と進めてゆきたい考えだ。

手書きの問診票をテキストデータ化する「スマ箋(せん)」。

医療機関から患者にデータや通知を送れるサービス

 メディカルデータカードは、健康情報・医療情報を管理し、患者と医療機関の架け橋となるサービス「MeDaCa」を展示、紹介していた。

 患者はスマートフォンにアプリをインストールするだけで、検査結果のデータを受け取ったり、クリニックからの通知を受け取ったりできる。利用は無料。検査結果をもらうためだけの通院や、長時間待合室で待つ必要がなくなる。

 クリニック側は、今まで専用のシステムを導入しなければ使用できなかった患者への通知や予約システムを一元化できるメリットがある。複数の診療科があるクリニックでは患者情報の共有を行うことで診察の効率化や処方箋の重複を避けるなどの効果が見込まれる。

医療機関から患者にデータや通知を送れるサービス「MeDaCa」。

 今回のHOSPEX Japanのスタートアップブースでは、技術をベースにした提案だけでなく、診察のワークフローや院内業務の効率化など、技術開発以外からのソリューションが提示されている点が興味深かった。

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