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水上太陽光発電の台風による火災事故、原因が明らかに【続報】

2019年12月04日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,大根田康介(ダイヤモンド・オンライン

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【続報】京セラの水上太陽光発電所の火災事故はなぜ起こったのか?
太陽光発電業界の「救世主」水上太陽光発電だが、想定外の強風には耐えられないという弱点が露呈した Photo:JIJI

水上太陽光発電として日本最大のプロジェクト、千葉県市原市の山倉ダムにある水上太陽光発電所(以下、山倉ダム発電所)。9月の大型台風15号により発生した火災(『日本最大の「水上」太陽光発電で火災、台風で露呈した“救世主”の問題点』で既報)の原因が明らかになった。同時に、再発防止策の課題も浮き彫りになった。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

約77パーセントが損傷
原因はアンカーにあり

 山倉ダム発電所を運営する京セラTCLソーラーが10月28日、事故原因の調査の途中経過として経済産業省に提出した資料により、山倉ダム発電所の事故の概要が明らかとなった。同発電所は日本の大手メーカーの京セラと伊藤忠商事グループの東京センチュリーが共同出資した京セラTCLソーラーが手掛けた。

 報告書によると、太陽光パネルは約5万枚設置されていたが、そのうち約77パーセントが風に流されて破損し、一部が発火、焼損した。当初関係者が予想していた被害規模よりも甚大な損害となった。

 事故の原因はなんだったのか。

 山倉ダム発電所の構造を見ると、太陽光パネルの周辺にフロート(浮き具)を装着し、ワイヤー状の係留線を水中に伸ばし、アンカーという杭を地中に打ち込んでパネルが流されないようにしている。

 今回用いられていたのは、係留線828本、アンカー420カ所だった。

 そこに設計風速(秒速41.53メートル)を超える風が発生したことで、想定荷重を超えたと見られる。また風や波によってパネルが揺れ動いてかたよった荷重がかかったことで、一部のアンカーが抜けてパネルが押し流され、巻きあがったり折り重なったりしてしまったのが事故の根本原因だ。

 今後、山倉ダム発電所はどうなるのか。京セラTCLソーラーによれば、「早急に復旧したい」としている。

 修復費用については検証中だが、別の水上太陽光発電業者は「おそらく10億円くらいだろう。固定価格買取制度(FIT)の価格が高いから、それくらい投じても十分に投資回収できるはず」と推測する。

 太陽光発電を含む再生可能エネルギーで発電した電気を一定価格で小売電気事業者が買い取るFITが始まったのが2012年で、大規模発電所の当初のFIT価格は40円/kWhだった。投資に対するリターンが大きかったため、新規参入業者が相次ぎ、太陽光発電バブルとなった。

 財源は国民の電気料金に含まれる賦課金であるため、国民負担を減らすべく、国はFIT価格を毎年引き下げている。現在、大規模発電所は入札制になっており、FIT価格は10円/kWh台まで下がっている。

 15年12月に着工し、18年3月に稼働した山倉ダム発電所のFIT価格は32円/kWhで、バブル期に近い価格で権利を取得していた。だからこそ、是が非でも修復して利益を獲得したいという訳だ。

 なお、原因調査がすべて終わるのは来年3月末を予定しており、少なくとも発電所の再開は来年4月以降になりそうだ。

昨年にも同様の事故
生かされなかった教訓

 山倉ダム発電所を再開するためには、何よりも再発防止策が欠かせない。そもそも、この事故を未然に防ぐ方法はなかったのか。

 別の水上太陽光発電事業者に聞いたところ「フロートに注水すれば被害をもっと抑えられたのではないか」と指摘する。

 実は水上太陽光発電所に用いられるフロートには、注水口が付いているタイプがある。そこから1個当たり数十リットルの水を注げば、浮力は落ちるもののパネルが風で浮き上がるのを防止できるのだ。

 ちなみに京セラTCLソーラーが使用していたフロートは、世界大手の仏シエル・テール社製だが、これも注水できるタイプだった。

 実は昨年の台風で、大阪府の水上太陽光発電所でも、山倉ダム発電所ほど大きくなかったものの似たような事故の事例があった。ここは1度目の台風で破損する被害を受けた後、フロートに注水することで2度目の台風による被害は防げた。

 この点を京セラTCLソーラーの広報担当者に聞いたところ「被災した1度目の台風15号では注水していなかった。2度目の大型台風19号では注水して強風対策をした」と話す。

 つまり、過去の事例を踏まえて1度目の台風15号が来る前にあらかじめ注水しておけば、これだけの大規模事故になるのを防げた可能性は十分ある。台風の威力を甘く見ていたミスと言わざるを得ない。

 今回の事故を教訓に、水上太陽光発電で二度と事故が起こらないような再発防止策を作ることが、業界トップメーカーの責務である。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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