このページの本文へ

セブンの加盟店ロイヤルティー減額を独自試算、人件費上昇分を下回る店舗も

2019年12月03日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
セブン-イレブン看板
Photo by Satoru Okada

加盟店の利益を年間50万円増やす――。セブン-イレブン・ジャパンは2020年3月以降、加盟店から徴収するロイヤルティー(経営指導料)の仕組みを見直し、低収益の加盟店への支援を手厚くするとしている。だが年間50万円といっても、人件費の高騰という状況に鑑みれば恩恵の度合いは小さく、最低賃金の上昇分を下回るケースさえ発生しそうだ。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

 年間50万円分のロイヤルティー“減額”はどこまで効果があるのか。

 24時間営業などコンビニエンスストアのフランチャイズ加盟店の負担が取りざたされる中、業界最大手のセブンーイレブン・ジャパン(SEJ)は、本部が加盟店から徴収するロイヤルティー(経営指導料)を2020年3月から見直す方針を今年10月に明らかにした。

 大手のコンビニでは、加盟店が商品を仕入れて販売して得た粗利を、本部と加盟店で分け合う「粗利分配方式」が採られている。本部の取り分であるロイヤルティーの料率はチェーンや契約形態によって異なり、SEJではこれを「セブン-イレブン・チャージ」と呼ぶ。SEJの加盟店の大半を占める、店舗の土地建物を本部が用意する「Cタイプ」と呼ばれる契約の場合、粗利が増えるにしたがって56~76%と累進的にチャージが増える仕組みだ。

 この高いチャージがSEJの高収益体質を支えており、1973年の創業以来、ほとんど手をつけられることはなかった。17年9月にチャージを1%減額する「特別減額」を始めたが、一律にチャージを減額するのは1973年の創業以来、初めてのことだった。

 この他にも、チャージが減額される条件がある。例えば24時間営業をすればチャージは2%減額。加えて、5年以上営業した店舗や、複数店経営した場合に数%チャージが減額される制度などがある。

 SEJは新たに導入するチャージ制度の狙いについて、低収益店舗の支援が目的だとしている。分水嶺となるのは月の粗利が550万円。全国約2万1000店の3分の1に当たる約7000店が550万円を下回るという。これらの店舗を対象に、毎月一律で20万円チャージを減額。その代わり、24時間営業の2%と特別減額の1%は廃止される。

 一方、月の粗利が550万円以上の店舗は、24時間営業の2%と特別減額の1%の制度は残し、追加でチャージを3万5000円減額する。これらにより、全加盟店の年間の利益の上昇額は平均で50万円になるという。

 では、低収益の24時間営業の店舗に適用される「月20万円減額」は、どの程度恩恵があるのか。ダイヤモンド編集部はその影響を試算した。

基準ギリギリの加盟店の恩恵は
月間3.8万円とごくわずか

 まず、1日の売上高(日販)が60万円で、SEJの全国平均65万円をわずかに下回る店舗のモデルケースだ。月の売上高は1800万円で、粗利率3割で計算すると月の粗利額は540万円と月20万円の減額がギリギリ適用対象になる水準だ。

 だが新たなチャージ制度では、24時間営業2%減額の10万8000円と、特別減額1%の5万4000円の恩恵がなくなるため、実質的な月のチャージ減額は3万8000円となる。

 また、日販45万円、月の粗利額405万円と超低収益に苦しむ加盟店で同様の試算をすると、実質的なチャージ減額は7万8500円と恩恵は大きくなる。とはいえ、「20万円減額」と強調された数字の半分以下の効果しか、実質的な負担軽減につながっていない。

 そもそも日販45万円はファミリーマート、ローソンの平均日販である50万円半ばよりも低い。より高い売り上げが望める立地へと移転させるべき水準だ。

10月の最低賃金改定で
常時2人雇用店舗の人件費は4万円上昇

 来年3月からチャージを減額するとしても、加盟店の負担は昨年に比してすでに増えている。

 今年10月、全国の最低賃金が改定され、東京都では時給985円から1013円に上昇した。労働力人口の減少に加え、政府の方針でも今後も全国で引き上げを目指している。この改定で、加盟店の人件費負担はどれだけ増えたのだろうか。

 24時間営業の店舗で、従業員2人を常時雇い続けたとする。都内の最低賃金で計算すると、午前6時~午後10時の時給は最低賃金を、午後10時~翌午前6時までは労働基準法に基づき1.25倍の割増賃金を支払うとすれば、最低賃金の改定による加盟店の人件費増加額は月4万3680円、年間で50万円超となり、今回SEJ本部がチャージの見直しで訴える利益の改善額を超えている。

 つまり、都内で従業員常時2人体制を維持しようとすれば、粗利540万円の加盟店が新チャージ制度で得られる3万8000円を上回る負担が、既に発生しているということだ。しかもこの試算は、あくまで従業員を最低賃金で雇えることが前提だ。実際にはより高い時給で従業員を募集せざるを得ず、より多くの人件費を負担しているケースも珍しくないだろう。

 加盟店側による人件費負担の軽減策の一つが、深夜に閉店する時短営業だ。ただSEJは24時間営業する店舗に対し、前出のようにチャージを2%減額するなど優遇してきた。この優遇措置があるがゆえに、オーナーが深夜に店頭に立つなど無理をして24時間営業を続けざるを得ない加盟店もある。

 新チャージ制度でも、24時間営業する店舗の方がチャージの減額幅は大きい。粗利が月550万円未満の店舗に適用される20万円の減額は、時短営業の店では7万円。月550万円超の店の3万5000円減額は、時短営業の場合は1万5000円と非常に少なくなる。

 本部は24時間営業店舗への優遇を手厚くすることで、従来通りのやり方を死守したいという思惑が感じられる。それでも、場合によっては時短営業がオーナーのメリットにつながる場合がある。

 例えば上図のように午前0時~6時のみ閉店するといった時短営業をすれば、深夜に雇う従業員を0~1人に減らせるので、24時間を通じて2人雇っていた場合と比べ、オーナーが負担する人件費が大きく削減できる。閉店していない時間帯の売り上げや粗利が変わらないと仮定すれば、時短をするオーナーはチャージの減額幅が小さくても、上図のように利益を増やすことができることになる。

 もちろん、深夜の閉店によって売上と粗利が大きく減少すれば、オーナーの最終的な利益も減少する。ただ実際には、住宅街や郊外に立地し、そもそも深夜にほとんど来客がないと訴える店舗もある。こうした店舗が深夜の従業員を減らせれば、コストを減らし、時短のメリットを享受できる可能性がある。

人件費の上昇は今後も続く
問われる利益配分のあり方

 SEJは今回のチャージ制度の変更で、本部負担は年間100億円程度増えるとしている。

 現在国内で24時間営業をしているSEJの店舗は、駅やオフィスビル内などの店舗を除き約2万店。本格的な時短営業を始めた加盟店がごくわずかであることを踏まえれば、月20万円のチャージ減額の対象となるのは約7000店、月3万5000円のチャージ減額は約1万3000店となる。従って、このチャージ減額で本部の収入は推定で223億6000万円減る。

 一方、月の粗利550万円未満の7000店を対象とした、24時間チャージ減額2%と特別減額1%は廃止されるので、その分本部の収入は増える。7000店の売り上げや粗利額の平均は開示されていないが、これらの店舗の日販が55万円、粗利率が3割と仮定すると、廃止される3%分のチャージ減額は1店舗あたり月14万8500円になる。従って、年間7000店分で124億7400万円の収入増となり、本部の実質的な負担は98億8600万円となる。直営店の存在を除外した粗い推定だが、概ね本部の見通しと一致する。

 親会社のセブン&アイ・ホールディングスの2020年2月期の通期予想では、連結営業利益は4200億円となる見通し。その過半に当たる2500億円を、SEJ単体で稼ぎ出す計画だ。

 人手不足が深刻化し、最低賃金が上昇し続けることを考えれば、今回の単体営業利益の25分の1の切り出す手当てで、加盟店の支援が十分になる保証はない。加盟店からチャージを吸い上げて利益を配分するというビジネスモデルそれ自体の持続可能性が問われ続けることになる。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ