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マカフィー佐々木氏に聞く

災害時に有効な相互支援は? 米国のサイバー攻撃対策は自然災害やテロ対策も視野に

2019年12月04日 09時00分更新

文● ASCII

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無料で得られるから、個人の責任で選ぶ時代に

── 災害はわれわれが、社会のインフラに依存しているかを浮き彫りにもしました。

佐々木 「インフラを使う、われわれの意識も変える必要があるでしょう。日本はほんの少し停電になっただけでも、怒り出す人が出るほどの、安定した電力の供給を維持しています。結果、高い品質のサービスは『提供されて当たり前のもの』という意識を持つ人も少なくないでしょう。しかし今後はこれらが利用料金に跳ね返ってきます。『電力は重要なインフラだから、料金を増やさず、税金を使ってでも、国が品質を維持すべき』といった意見があるかもしれません。しかし、仮に税金を使ったとしても、それは国民が負担するものであり、間接的か直接的かという違いでしかありません。

 これは電力に限った話ではなく、コンビニは24時間営業していて、さまざまな電化製品も長期間にわたって故障しません。消費者だけでなく、提供者のほうも、過剰と言えるまでの質を追究しています。そんな国は、世界的に見ても稀有です。その一方で、こういった質の高さを維持するために、目に見えない多くのコストが発生している点も認めるべきでしょう」

── してもらうのが当たり前という意識を変える必要がありますね。

佐々木 「インフラや製品・サービスの安定性や品質を維持するために多くの人が使命感を持って働いています。これは賞賛すべきことですが、社会的なコストの掛け過ぎは、高齢化が進み人口が減少していく今後の環境では不利な考え方です。私はよく『おもてなししすぎ』と言いますが、品質やサービスレベルを上げるために、メーカーやサービス事業者が過剰な配慮を続ければ、膨大なコストが発生します。これは様々な産業の成長を妨げる要因にもなるでしょう。

 例えば、いまの日本では、情報がただで手に入ることが当たり前のように考えられていますが、しかし、これも今後のIoT時代では障害になり得ます。IoTの核はデータですが、情報はお金を出さずに手に入ると考えられた時点で、情報をビジネスに転用する機会が失われますから」

── コストを負担して、自ら選ぶ時代が来る、と。

佐々木 「日本では、無料で得られるという意味でサービスという言葉を使います。しかし、なんでもただで手に入るという考え方は改めるべきです。もともとのサービスという言葉に無料という意味はありません。つまり、相応の対価を支払い、どの程度のサービスレベルを得るかの合意が必要なのです。

 インフラに関しても、いまのままが本当に最適なのかを国民として議論すべきでしょう。そして、何かを取るなら、そのためのコストも負担する。おもてなしされすぎのマインドを改める時期が来ていると思います」

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