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北海道・札幌が未来に近づく5日間「No Maps 2019」レポート第10回

北海道経産局とNEDOがビジネスプランコンテスト開催、スタートアップ12社が参加

灯油配送回数を48%削減したIoT、自家幹細胞で脳梗塞治療――札幌でピッチコンテスト

2019年11月24日 07時00分更新

文● 松下典子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 経済産業省北海道経済産業局とNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2019年10月16日、ビジネスプランコンテスト「"NoMaps NEDO Dream Pitch" with 起業家万博」を札幌市のACU-Aにて開催した。このコンテストは、優れた技術シーズやアイデアを基に事業化を目指すスタートアップの支援を目的としたもの。全国から12チームが参加し、灯油の残量センサーで配達コストを削減するサービスを発表したゼロスペック株式会社が最優秀賞とNICT賞をダブル受賞した。

 本ピッチ本番へ向けては、2019年6月17日~8月21日までビジネスプランを募集し、一次審査を通過したチームには、集合研修と個別メンタリングを実施した。ピッチコンテストの優秀チームから「NEDO TCP 二次審査会」(2019年12月開催)および「起業家万博全国大会」(2020年3月開催)への進出チームが選ばれる。

 株式会社BREAKTHROUGH、株式会社ファーストコネクト、リセットカンパニー株式会社、北海道マリンイノベーション株式会社、チーム:LINAS、ゼロスペック株式会社、株式会社MILE SHARE、株式会社RAINBOW、ティ・アイ・エル株式会社、株式会社FP-MYS、5ミリ雪プロジェクト、株式会社RESAの全12組の参加チームが行なった各7分のピッチを模様をお届けする。

林業に特化した位置情報共有ソリューション

林業専用の位置情報共有プラットフォーム「Soko-coフォレスト」

 林業は非常に危険な職業で人手不足も深刻だ。林道は細く、見通しも悪いため死傷事故が起こりやすい。森の中は通信圏外エリアも多く、救出が遅れることもある。株式会社BREAKTHROUGHは、林業の安全性や業務効率を向上するため、木や土場の状況、危険情報などの情報をカスタムマップで共有する林業専用ICTプラットフォーム「Soko-coフォレスト」を開発。危険な場所に接近すると警告する機能やメッセージ機能、電波の届かないエリアでも位置情報を把握できるGPSレシーバーにより、重大事故の防止と作業の効率化を図る。

プロの口コミから歯医者さんを探せる

プロの口コミで歯科が探せるサービス「プロレコ」

 株式会社ファーストコネクトは、歯科従事者からの口コミで歯科が探せるサービス「プロレコ」を紹介。一般患者からの口コミは、疾患の状態や治療内容に個人差があり、歯科医師の腕まではわかりにくい。プロレコは、歯科衛生士などの歯科従事者からの口コミに限定することで、本質的な技術を評価できるのが特徴だ。口コミを集めるのが難しそうだが、同社はもともと歯科業界の人材紹介事業を全国で展開しており、ターゲットのユーザーのみに集中して広告を露出することで情報を収集できているとのこと。

豪雪地の太陽光パネルをロボットが除雪・洗浄

太陽光発電パネルを除雪するロボット

 豪雪地域は地価が安いため、太陽光発電所が多く設置されているが、太陽光パネルに雪が積もると発電効率が下がり、雪が降らない地域に比べて最大20%の収益が減少する。そこでリセットカンパニー株式会社は、太陽光発電パネルを自動車のワイパーのように自動でクリーニングするロボットを開発。センサーで雪を感知し、真夜中に雪が降っても無人で除雪できる。現在、青森県、鹿児島県と販売契約を締結済みだ。

ガゴメ昆布の養殖技術で高品質フコイダンを安定供給

フコイダンの原料・ガゴメ昆布の養殖技術

 北海道マリンイノベーション株式会社は、北海道大学大学院水産化学研究員の技術シーズをもとにした北大発ベンチャー。北海ガゴメから抽出した高品質フコイダンを販売するヘルスケア分野と、北大ガゴメの養殖の2つの事業を展開している。ガゴメ昆布から抽出されるフコイダンは、アレルギー抑制作用、皮膚の保湿、再生促進作用などが明らかにされているが、ガゴメ昆布の激減により原料費が急騰しているのが課題だ。同社は、北大など研究機関と連携して海藻の養殖技術を開発し、高品質フコイダンの安定供給を実現する。

軽量かつ安価な教育・メイカー向けAIアクセラレータを開発

500円のAIアクセラレータ「FPGA2Iシールド」

 チーム:LINASは、組み込みマイコンArduino専用のAIアクセラレータ「FPGA2Iシールド」の事業計画を紹介。現在のAIはクラウドベースが主流で、エッジ側で学習・推測する製品は少ない。その原因は、AI学習・推測のソフトウェアの負荷が高く、既存のエッジ用ハードウェアでは5~10Wの消費電力を必要とするためだ。FPGA2Iシールドは、FPGAによる処理支援により、ニューラルネットワークに比べて処理速度を10倍高速化し、消費電力を1Wまで削減。価格も500円に抑えた。教育関係や個人のメイカー向けに2020年3月にパブリックベータを公開し、来夏には販売を開始する予定。将来的には、産業用IoTとしての展開を目指しているとのこと。

寒冷地の灯油難民問題をIoTで解決!

灯油の残量をリアルタイム計測するIoTデバイスGoNOW

 東北・北海道では暖房エネルギーの約8割を灯油が占めているが、近年は人材不足により、従来の灯油を定期配送する仕組みは危機的な状況にある。灯油の消費量は気候によっても異なり、残量がわからないため、定期配送では効率が悪い。この問題を解決するため、ゼロスペック株式会社は、灯油の残量をリアルタイム計測するIoTデバイスを開発。

 灯油タンクのキャップ型で、既存のキャップと取り換えるだけでセンサーが残量を取得し、発注・配送管理、消費の予測を自動化できる。実際にサービスを導入した企業では、配送回数が前年比48%削減したという。現在、14都道府県で導入済みで、2020年9月に「GoNOW」というサービス名で正式リリースを予定している。

シェアリングフライトで余ったマイルを有効活用

航空会社のポイントやマイルが余っているユーザーをマッチングするMileShare

 MileShareは、飛行機に乗りたいユーザーと、航空会社のポイントやマイルが余っているユーザーをマッチングするシェアリングサービス。国内のJALやANAのポイントやマイルはシェアできないが、航空会社によってはシェアが可能。航空会社は、「スターアライアンス」「ワンワールド」「スカイチーム」の3大アライアンスのいずれかに所属しているので、同じアライアンスのマイルがあれば、JALやANAにも乗れるというわけだ。マイルの売買ではなく、システム利用料として支払うことで利用規約には抵触しないという。使い方は、MileShareのサイトで出発地と行き先、出発日を入力して空席照会するだけ、と通常の航空券の購入手順とほとんど同じ。国内線のサービスからスタートし、国際線も順次航路を拡大していく予定だ。

自家骨髄幹細胞で脳梗塞患者が回復

幹細胞を脳内に投与する脳梗塞の新しい治療法

 株式会社RAINBOWは、自家骨髄幹細胞による新しい脳梗塞の治療法を研究開発している北海道大学脳神経外科発のバイオベンチャー。日本では年間に約23万人が脳梗塞を発症しており、後遺症による麻痺で要介護になる患者が多い。

 同社では、患者本人の骨髄から採取した幹細胞を脳内に投与する治療法を開発。自家細胞なので長期の生存が可能で、脳内に直接投与することで高い効果が得られるのが特徴だ。現在は北大病院で治験を進めており、6名の重症患者に投与したところ、5名が自力で歩けるようになるまで回復している。課題は、培養コストを圧縮すること。500万円かかっている製造コストを300万円以下に抑えることが目標だ。

ロードヒーティングの熱源をAIで制御して燃料代を削減

ロードヒーティングの消費エネルギーを最適化するAIロードヒーティングオプティマイザー

 北大発認定ベンチャーのティ・アイ・エル株式会社は、降雪地の地中に埋め込まれているロードヒーティングの消費エネルギーを最適化するAIロードヒーティングオプティマイザーを北海道ガス株式会社と共同で開発。ディープラーニング技術を用いて積雪状況を認識し、最適なタイミングでボイラーを制御することでエネルギーコストを最適化する。昨シーズンの実証実験では、20カ所に設置したところ、40%以上の消費エネルギーを削減できたという。同技術を応用して、太陽光発電パネルのメンテナンスや線路上の障害物の監視、節水スプリンクラー制御などへの転用も可能だ。

相続問題を気軽に相談できる相続・贈与プラットフォーム

相続に関心があるユーザーと専門家をつなぐ相続・贈与プラットフォーム「レタプラ」

 入院や他界後の相続処理は、家族や親族の間でトラブルを招きやすい。健康なうちから資産をどのように残すのかを考えておくことは大切だ。株式会社FP-MYSは、相続に関心があるユーザーと専門家をつなぐ相続・贈与プラットフォーム「レタプラ」を提案。一般ユーザーには相続税の試算や専門家とのチャット相談などが受けられる無料サービスとして提供。FPなどの専門家は有料会員になり、チャット相談を通じて、見込み客と繋がることができる。

肉眼で見える雪の結晶を作る人工降雪機を開発

パウダースノーを生成する人工降雪システム

 「5ミリ雪プロジェクト」は、パウダースノーを生成する人工降雪システムを開発している。目標は肉眼でも見える5ミリの雪の結晶をつくること。既存のスキー場などで使われている人工降雪機は、水を噴霧して凍らせるもので、雪とは異なるものだ。2019年7月の第1回基礎実験では、0.4ミリの小さい雪の生成に成功しており、1年以外に商業化レベルの3ミリにまで上げる計画だ。2020年にはデモ機を完成させ、2021年には国内販売を開始、2022年以降は世界展開を目指す。

賃貸物件の改善ポイントをAIがアドバイス

 株式会社RESAの「満室ナビ」は、満室物件の特徴をAIで分析し、賃貸用物件に必要な設備と最適な家賃を提案するサービス。物件情報を入力すると、駅からの距離や間取り、築年数などから、同等の満室物件と比較してスコアを計算、改善するための提案を自動生成する。宅配ボックスやTV付きインターフォンといった設備の違いによる家賃相場も算出でき、リノベーションでの投資効率向上が期待できる。β版を8月にリリース済みで、2020年2月に本格リリースの予定だ。

賃貸物件の改善ポイントをAIがアドバイス

 審査の結果、灯油の配送問題を解決するIoTデバイスを開発したゼロスペック株式会社が最優秀賞とNICT賞を受賞した。

最優秀賞はゼロスペック株式会社が受賞

 優秀賞には、自家骨髄幹細胞による新しい脳梗塞の治療法を発表した株式会社RAINBOWと満室ナビの株式会社RESAが受賞。また株式会社RAINBOWは、NEDO TCP賞、オーディエンス賞も獲得した。

株式会社RAINBOWと株式会社RESA

 審査員特別賞は、株式会社BREAKTHROUGH、株式会社ファーストコネクト、株式会社MILESHARの3社が受賞。

株式会社MILESHAR、株式会社ファーストコネクト、株式会社BREAKTHROUGH

 そのほか、NoMaps賞は株式会社FP-MYSとチーム:LINASが受賞。Mt.Fujiイノベーションエンジン賞は株式会社BREAKTHROUGHが受賞した。

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