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ゴミがアート作品に!ある産廃処理業者の挑戦が集めた予想外の注目

2019年11月21日 06時00分更新

文● 藤崎雅子(ダイヤモンド・オンライン

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廃棄物が増えれば儲かるのが産廃処理業者。そんな「環境に優しくない」事業構造に矛盾を感じた事業者が、産廃を利用したプロダクトアート作りや廃棄物に関するコンサルティング事業など、ユニークな取り組みを行い、注目を集めている。

“ゴミが増えると儲かる”
ビジネスからの脱却

産業廃棄物から作られたアート作品の画像
フォルクスワーゲン グループ ジャパンが10月5日~来年3月29日の期間限定で設置し、様々な団体・企業のワークショップや展示が行われている「新虎ヴィレッジ」。ナカダイ提供の廃材によってデザインされたユニークな空間だ

 今年10月、東京都港区の虎ノ門ヒルズ近くの空き地に誕生した期間限定イベントスペース「新虎ヴィレッジ」は、ほとんどが廃材で構成された空間だ。

 よく見ると、テーブルはソーラーパネル、椅子は茶箱、柵には自転車の車輪が…。一度はゴミとして捨てられたモノたちが、世界で活躍するクリエイターの手によって、カラフルでオープンな遊び心あふれる空間の構成要素として生まれ変わっている。

 素材を提供したのは、群馬県に拠点を置く産業廃棄物処理業者・ナカダイ。廃棄物の業界に“デザインの力”を導入し、建築家やアーティストともコラボレーションする、一風変わった業者だ。

 産業廃棄物の処理には、原型のまま再利用するリユースのほか、選別・解体して素材を再資源化するマテリアルリサイクル、熱源として利用するサーマルリサイクル、それらができない場合の最終手段として焼却・埋立といった方法がある。それらに加え、同社が約10年前から新たに提案するのが、廃棄物の素材を生かして装飾やアートなどのまったく別のモノとして命を吹き込む方法だ。

 一見、面倒にも見える取り組みだが、なぜ始めようと思ったのか。社長の中台澄之さんに聞いた。

「会社の規模拡大を図るなかで、“廃棄物が増えれば売り上げが上がる”というビジネスに疑問を感じるようになったんです。環境のことを考えると廃棄物を減らすべきなのに、会社の立場になると売り上げが減るから廃棄物が減ってほしくないと思ってしまう。その矛盾にどうしても我慢できず、廃棄物の量に頼るビジネスはもう止めようと思ったのが始まりです」

 そこで改めて注目したのが、廃棄物そのものの“魅力”だ。「廃棄物からは、その地域の産業や生活、時代の移ろいなど様々なことが見えてくる。実はものすごく魅力があるのではないか」と、2010年のデザインイベントにて、建築家と組んでケーブルなどの廃棄物を使った空間デザインを出展。大きな反響を呼んだという。

採用は倍率600倍も
多くの女性が集まってくれた理由

「捨てる人にとっては単なるゴミでも、面白い素材だと感じる人もいて、新たなモノの魅力を引き出すことができる」――。そう手応えを感じた中台さんは、別会社のモノファクトリーを立ち上げ、廃棄物に関する企業の困り事について総合的にコンサルティングする事業を本格化。廃棄物が集まる仕組みと処理ノウハウを持つナカダイの事業との組み合わせにより、廃棄物処理業の新たなステージを切り拓いてきた。

ナカダイ代表取締役の中台澄之さん。証券会社勤務を経て、父親が経営していた同社に入社。業務の拡大や新規事業の立ち上げなどに尽力してきた

 その一環として、クリエイターや建築家とのコラボレーションによる、「新虎ヴィレッジ」のような空間デザインや、居酒屋の内装、テレビ局の撮影現場の裏方、各種イベント会場などへの素材提供に取り組んでいる。

 ナカダイとモノファクトリーの2社の売り上げに占める、コンサル業など新分野の比率は徐々に上昇。廃棄物の量に依存したビジネスからの転換は着々と進んでいるという。

 事業拡大の過程には、女性の感性も生かされている。産業廃棄物処理業というと男性中心の職場のイメージがあるが、同社では従業員の約4割が女性だ。現場でフォークリフトを操る女性従業員の姿も目立つ。

「新しい事業を始めるにあたって『素材の新しい使い方を世の中に提案する仕事』というコンセプトを打ち出して人材募集したところ、約600倍の応募があり、その多くが女性でした。環境問題について理想を語るだけではなく、実践しているところに魅力を感じてもらえたようです」

 その後も男女関係なく採用活動を重ねたところ、結果的に女性従業員が増加。廃棄物の新たな利用法について日々アイデアを出すなど、彼女たちは貴重な戦力になっているという。

 また、同社は2011年より年1回、2社の日頃の取り組みの集大成として「産廃サミット」を開催している。当初は、廃棄物を素材としたプロダクトアート作品を展示するなど、「廃棄物の可能性を広く世の中に知ってもらう」ことを狙いとして、美術大学や取引先企業の協力を得て東京都内で行っていた。

わざわざ群馬まで
多くの企業が来訪

 その次のステップとして、2017年からは「具体的に一緒に行動を起こす」パートナーづくりにつながるよう、会場をナカダイの工場に変更し、5~10日間の日程で実施している。定員を設けて予約制にし、当日は同社スタッフが工場内をアテンドし、同社の取り組みを解説するとともに情報交換を行うというイベントだ。

「わざわざ群馬までやって来る人がどれだけいるか」と、最初は不安だったというが、いざ蓋を開けてみると、連日ほぼ満席状態。素材に惹かれたクリエイターのほか、環境問題を切り口に新しいサービスを立ち上げようとしている企業、ビジネスモデルに興味を持つ企業も数多く来訪したという。

「モノが売れない現代、各業界とも従来の事業を軸に新しいことを始めようともがいている。これまで取り組んできた新しいビジネスモデルづくりやチームビルディングなどが、最大の武器になっていることを感じました」(中台さん)

 既存事業を解釈し直して、新たな価値の創造を目指すナカダイの挑戦には、他の業界でも生かせるヒントがあるようだ。

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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