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FIXER cloud.config Tech Blog

エンジニアのためのコミュニケーションTips:そのスライド、要りますか?

2019年11月19日 11時00分更新

文● 岡安 英俊/FIXER

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 本記事はFIXERが提供する「cloud.config Tech Blog」に掲載された「エンジニアのためのコミュニケーションTips ① そのスライド、要りますか?」を再編集したものです。

 FIXER Strategy Divisionの岡安です。理系出身ですが、数学だったのでエンジニアではなく、いわゆる経営戦略・資本政策・新規事業・アライアンス等のお仕事をしています。某戦略コンサルで10年くらい生き残ってきた経験などを元に、エンジニアのみなさんに役立つようなコミュニケーションのTipsや、戦略・マーケティング等の最新のトピックをお伝えしていきます! また、未来のクライアントのみなさまに向けて、テクノロジーを活用したオペレーション効率化や、コスト削減についてのお話などもできればと思います。

 まず、第1シリーズとして考えているのが、コミュニケーションについての豆知識です。まずはWritten Communication系の話から初めて、具体的な文書をイメージした実践編をやります。それから、Oral communication (質問への答え方・プレゼンテーション・ファシリテーション) に広げていくという壮大な計画ですが、ゆるーく進めていくので適宜お付き合い下さいませ。

「スライドを書く=仕事した気になる」の罠

 元コンサルというと「スライドうまい人」と見られがちです。たしかに、スライドを書くのは早いですし、実際にたくさん書いています。でも、要らないスライドは徹底して書かない主義です。スライドに中途半端に時間をかけるくらいなら、考えることや人と話すこと、そしてエンジニアの人であればコードを書いた方が、よっぽど生産性が高いはずです。それゆえ、自己破壊的ではありますが、第1回は挑戦的に「そのスライド、要りますか?」と題してお話しします。

 スライドをたくさん作って、50ページのプレゼンテーションを作ったのに、議論が発散して使ったのは結局5枚だけでした……なんて経験ありませんか? ある程度関係性ができている、エグゼクティブ同士のプレゼンテーションほど、そんな傾向がありがちです。イケてないマネージャーほど「万一に備え」山のような「参考資料スライド」を用意させます。そんなマネージャーに振り回されないために、もしくはそんなマネージャーにならないための、コミュニケーション術を考えていきましょう。

コミュニケーションの目的設定

 ビジネスにおけるコミュニケーションには、必ず想定された目的/ゴールがあります。シンプルにBefore/Afterで考えてみましょう。

 上に書いてある通りですが、

・コミュニケーションのターゲットを定める
・ターゲットの現状(Before)を言語化する
・現状をどのように変容させたいのか(After)を言語化する

 というステップで考えるのが有効です。その上で、Beforeの理由を深堀りしましょう。そもそも前提条件や価値観が違うのか、必要な知識が足りていないのか、信頼関係が醸成できていないのか……それによって、コミュニケーションの「メッセージ」と「手段」を定めていくことになります。

メッセージから始めよう

 上のスライド、タイトルの下に2行くらいのリードが書いてあります。これはいわゆるスライドの「メッセージ」と呼ばれているものです。メッセージとは「コミュニケーションのターゲットの論点に答える、結晶化された文章」です。

 まず必ず守ってほしいのは「中身を書く前にメッセージを書く」ことです。メッセージを書き、それを言うために必要なディティールを論理的に構成することで、初めて意味のあるスライドが作れます。こうした「論理的な構成」については、また後の回でお話しします。

 そして、ワンスライド、ワンメッセージが基本です。エグゼクティブ・サマリーやまとめのスライドを除いて、複数のメッセージが混在するスライドは理解を困難にします。せっかく分かりやすく伝えるためにスライドを作るのに、台無しです。

 最後に、メッセージを言うのに直接関係ない「ちなみに」は書かないこと(笑) スライドがスカスカだと寂しくなって、何かいらないことを書きたくなってしまいますが、その欲望に打ち克つことが良いスライドへの第一歩です。

コミュニケーション手段の選定

 目的を達成するための手段は、必ずしもスライドプレゼンだけとは限りません。

 コミュニケーション手法: メール、電話会議、テレビ会議、Face to Face

 資料: なし、文章(Word/Outlook)、スライド(PowerPoint)

 エレベータの中で偶然乗り合わせた社長に対して、極めてポイントを絞って説明することを「エレベータ・スピーチ」といいますが、そうした場面ではスライドを取り出す時間もないので「Face to Face」×「資料なし」という形式になります。

 また、amazonにおける社内会議の資料はPowerPointではなく文章であり、会議の冒頭15分はその資料を読む時間に当てられているそうです。(Source: 佐藤将之(2018), 『アマゾンのすごいルール』, 宝島社 ) 確かに英語のスライドは主語やbe動詞を省略することが多いです。また、スライドは「読む」ものではなく「見る」ものですから、視覚的なインパクトを重視するために敢えて「単語だけ」「写真だけ」を示すこともあります。 それゆえ、行間の読み方によっては解釈がずれてしまうことがあり、それを避けるための知恵ということができるでしょう。

 日本全国で、社内会議向けの「当たり前のことしか言っていないスライド」に、どれだけの工数が割かれていることでしょう。ぜひ、こうした工数を付加価値の高い作業や、あなたの睡眠時間として取り戻すため、コミュニケーションの目的を考えること、意味のあるメッセージを言語化すること、そして最適な手段を選ぶことを忘れないようにしていきましょう。

本日の提言

 スライドを書く前の自問自答「そのスライド、要りますか?」を習慣化しよう!

 ★続編記事「エンジニアのためのコミュニケーションTips ② なぜコミュニケーションが「ズレる」のか【前編】」もぜひお読みください!

[転載元]
 エンジニアのためのコミュニケーションTips ① そのスライド、要りますか?

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