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寝ても疲れが取れない「朝疲れ」に要注意、高血圧や糖尿病の可能性も

2019年11月15日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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睡眠は横になるだけで疲れを癒やすことができる最良の疲労回復法だ。しかし、睡眠時間は十分なはずなのに目が覚めたときに疲労感がある、という人は“朝疲れ”状態に陥っている可能性が高い。高血圧・糖尿病など生活習慣病とも関わりが深い朝疲れについて専門医に聞いた。(清談社 真島加代)

7時間寝ても疲れが取れない……
朝疲れの正体

目覚めが快適でない男性
睡眠時間が十分なのに、目覚めた時点で疲労を感じるのは要注意。睡眠時間はもちろんだが、睡眠の「質」もよくしなければならない Photo:PIXTA

 睡眠は私たちの体や脳に休養をもたらす重要な生命活動のひとつだ。近年では、慢性的な睡眠不足を「睡眠負債」と呼び、不健康な生活習慣として注目を集めている。

 しかし、睡眠負債の返済は、ただ睡眠時間を増やせばいい、というわけでもないらしい。

「十分な睡眠時間を取ったはずなのに、朝に目覚めたときに疲労を感じている人は要注意。質の悪い睡眠による“朝疲れ”をしている可能性が高いです」

 そう話すのは、池谷医院(東京・あきる野市)院長の池谷敏郎氏だ。池谷氏によると、朝疲れの原因は睡眠時間の短さだけでなく「睡眠の質の悪さ」が関係しているという。

「質が悪い睡眠とは、一晩の眠りが浅いこと。たとえば、寝付きが悪かったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりという悩みがある人は、全体の睡眠時間が長くても疲労が回復しにくい状態です。また、眠りが浅い日が続くと体内時計が狂い、自律神経の乱れから、さまざまな体調不良を招いてしまいます」

 特に夏場は、日照時間の長さや寝苦しい夜が続く影響で、睡眠のリズムが狂っている人が少なくない。そのため、近年のような猛暑の夏が終わり、眠りやすい秋になっても睡眠不足に悩むケースが少なくないのだ。

「熟睡の条件は“体の中心の温度を下げる”こと。通常は手のひらや足の裏の血管を通して体温を外に逃がし、深い睡眠に入ります。しかし、自律神経の乱れや血管のしなやかさが失われていると、上手に体温を逃がすことができません。その結果、眠りが浅くなり、自律神経の乱れを引き起こす、負のスパイラルに陥ってしまうのです」

睡眠不足が引き起こす
さまざまな血管疾患

池谷敏郎(いけたに・としろう) 医学博士。池谷医院院長。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年に池谷医院理事長兼院長に就任。現在も臨床現場に立ちながら、血管、血液、心臓など循環器系のエキスパートとしてメディアで活躍。『血管を強くする1分正座』(小学館集英社プロダクション)、『図解「血管を鍛える」と超健康になる!』(三笠書房)など著書多数。

 気温などの外的要因のほかに、中高年に多い睡眠時無呼吸症候群もまた熟睡を妨げる大きな原因だ。「寝ても寝足りない、強い朝疲れを感じる人は睡眠時無呼吸症候群の可能性が非常に高い」と池谷氏は指摘する。

「睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中の血圧の変動が大きくなり、高血圧と低血圧を繰り返します。その結果、心疾患や脳出血、脳梗塞などの脳卒中のリスクが高まると考えられます。また、睡眠時無呼吸症候群は、日中の血圧にも悪影響を及ぼし、高血圧の原因にもなります。睡眠時無呼吸症候群の有無にかかわらず、睡眠時間だけをみても、5時間未満しか寝ていない人は、高血圧のリスクが高まることも知られていますね」

 さらに睡眠不足の悪影響は高血圧だけにとどまらないようだ。

「睡眠不足は、血中の糖(血糖)が過剰になる2型糖尿病の発症リスクも高めます。通常、私たちの体は血糖値が高くなると膵臓から『インスリン』というホルモンを分泌して血糖値を抑えます。しかし、睡眠不足が続くとインスリンの効果が弱まる傾向があるので、血糖値が慢性的に高くなり糖尿病を発症してしまうのです」

 このように、朝疲れを感じても「ただ眠れていないだけ」と、軽視している人もいるかもしれないが、睡眠不足はさまざまな血管疾患につながる危険があるということを知っておくべきという。

「秋から冬にかけて、気温が低下すると、血圧が上昇しやすくなり、血管事故の発症リスクが高まります。そこで、快適な睡眠を得られやすい季節とされる秋にこそ、質の良い十分な睡眠を得ることが大切です」

“秋の夜長”とはよくいったものだが、秋の眠りこそが健康のポイントになるようだ。

GABAを上手に活用して
快眠をゲット

 池谷氏は「秋のうちに睡眠の質を高めておきましょう」と、アドバイスする。なかでも食事内容の見直しが大切だという。

「覚醒作用があるカフェインがコーヒーに含まれていることは広く知られていますが、緑茶や紅茶、ウーロン茶にもカフェインは多く含まれています。夕方以降にカフェインを取ると睡眠の質を下げるので控えましょう」

 寝酒と称してアルコールをたしなむのも考えもの。酒を飲んで寝ることそのものが、睡眠の質を下げるそう。

「アルコールを飲んだときに発生するアセトアルデヒドは、交感神経を優位にして眠りを浅くします。お酒を飲んだときの眠気は、ただの“寝落ち”なので疲労回復にはつながらないのです。また、アルコールには利尿作用があるので、睡眠中に尿意を催して何度も目を覚ます原因にもなります」

 寝酒が日課になっている中高年男性は、慢性的な睡眠不足になりやすい。快眠を得るためにも寝酒をやめる強い覚悟が必要だろう。

「疲れた体を癒やしたいのであれば、疲労回復に役立つといわれるイミダペプチドを多く含む“鶏むね肉”や“魚肉”がおすすめですよ」

 特におすすめなのは穀物や野菜、果実などに含まれるアミノ酸「GABA」を含む食材。GABAには睡眠の質向上に役立つ働きがある、と池谷氏。

「GABAは緊張をつかさどる“交感神経”の働きを抑えて、休息・リラックスを促す“副交感神経”を優位にするので、快眠効果が期待できます。大豆を発芽させた『大豆もやし』は、GABAが豊富で大豆イソフラボン、食物繊維、疲労回復を助けるアスパラギン酸などのさまざまな栄養素が手軽に取れる食材です。大豆もやしをレンジで温め、レモン汁とごま油であえてナムルを作ると箸が進みますよ」

朝疲れ解消のコツは
“同じ時間に起きる”こと

 食事以外に見直すべきは、睡眠環境。特に「枕」は首の血管にも影響を与える寝具なのでこだわるのが吉だ。

「枕が合っていないと首の筋肉が緊張して首の血管が圧迫されるので、熟睡ができません。また、寝返りが打ちにくい枕はイビキや睡眠時無呼吸症候群を悪化させます。ある程度の硬さがあり、横向きになったときに頭、首、体の中心が一直線になり、無理なく寝返りができる枕が理想ですね」

 パジャマは綿などの吸汗・速乾に優れた素材でゆったりとしたものを着用しよう。そして何より、平日の朝疲れをリセットするカギは休日の過ごし方にあるという。

「平日の睡眠負債を一気に返済しようと、寝だめをする人もいると思います。事実、寝だめにも一定の疲労回復効果が期待できるという研究結果もありますが、起きる時間を平日に合わせないと体内時計はさらに狂ってしまい、朝疲れがさらに重くなります。休日は遅く起きるのではなく早寝をしましょう。早く寝ていつもの時間に起き、睡眠時間を確保するのがポイントです」

 休みの日の日中は軽いウオーキングやゴルフなど、体を動かすことが良質な睡眠を得ることにつながる。休日は活発に動いてバランスの良い食事を取り、良質な眠りにつく…これこそが、厄介な“朝疲れ”を解消するコツなのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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