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SBIが福島銀に出資、「第4のメガバンク構想」が異例の速さで進む理由

2019年11月12日 11時00分更新

文● 田上貴大(ダイヤモンド・オンライン

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SBIホールディングスから出資を受けることになった第二地方銀行の福島銀行 Photo by Takahiro Tanoue

11月11日、SBIホールディングスは業績低迷が著しい福島銀行と資本業務提携を結ぶと発表した。この提携は、SBIの北尾吉孝社長が掲げる「第4のメガバンク構想」の第二弾。SBIという急速に発達する台風の影響で、地方銀行の再編劇が一気に加速し始めた。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

北尾SBIが福島銀行と資本提携
加速する「第4のメガバンク構想」

 インターネット金融グループのSBIホールディングス・北尾吉孝社長が9月初旬に発表した、「第4のメガバンク構想」の第二弾が早くも決まった。

 出資先は、福島県の第二地方銀行である福島銀行だ。11月11日、SBIは福島銀と資本業務提携を結ぶと発表。出資額は約11億円で、SBIグループ全体で19.25%の株式を握る筆頭株主となる。来年6月の株主総会を経て、SBIは社外取締役を1人送り込む見込みだ。

 今回の提携で、同構想の“弱者救済”という色が一段と強まった。そもそも同構想の第一弾とされ、9月6日に提携を結んだ島根銀行は、2019年3月期決算までの3期連続で本業の利益である「コア業務純益」が赤字だ。

 さらに、新たな提携先となった福島銀は、18年3月期に31億円の連結最終赤字に陥り、森川英治前社長が引責辞任した過去を持つ。監督官庁である金融庁が、業績低迷を理由に非公表で業務改善命令を発出。19年3月期は5億円の連結最終黒字に持ち直したものの、19年9月中間は2億円の黒字。通期予想も同3億円の黒字見通しにとどまるなど復調の気配は見えないまま。「単独での生き残りはもはや不可能」(地銀幹部)というのが業界の一致した見方だった。

 11日の発表では、両社が共同店舗を立ち上げて金融商品の販売に力を入れるほか、福島銀が保有する株式など有価証券の運用をSBIが受託するなどして、福島銀の収益力のテコ入れを図る方針が明らかにされた。

 日本銀行のマイナス金利政策などで低金利環境は一向に改善されず、銀行業界は構造不況に陥っている。地銀の再編機運は徐々に高まってはいるものの、再編が具体的に進んでいるとは言い難い。

 とりわけ福島銀は、業績の落ち込みが地銀の中でも著しく、早くから再編の候補に名前が挙がる存在だった。

 18年に森川前社長が辞任した直後、県内最大手の東邦銀行のOBである加藤容啓氏が新社長として招聘され、両行が協調路線に動くのではないかと目された。「金融庁も支援に動いた」(別の地銀関係者)という競合地銀からトップを招く異例の人事は、福島銀の置かれた環境の厳しさを色濃く表した。

 両行は今年5月にATMの相互解放の無料化を発表するなど、着々と足場を固めるような動きをしていたが、昨年の業務改善命令より1年以上が経っても提携に踏み切ることはなかった。

 その一方、わずか2カ月前に「第4のメガバンク構想」を打ち出したSBIが、先に福島銀に手を差し伸べることとなったわけだ。

異業種ならではのスピード感が
停滞する地銀再編の背中押すか

 SBIは、同構想発表から約2カ月で二つの地銀に出資を決めるという異例の速さで動いている。

 一般的に、地銀再編の停滞のネックと指摘されるのが、預金勘定などを担う銀行の“心臓”部分であるシステムだ。システムをどちらかの銀行にそろえるか、それに伴う事務処理の刷新にどう対応するか、といった問題が生じるからだ。

 その点、かねてSBIの北尾社長はシステムコストが地銀の課題だと指摘し、「第4のメガバンク構想」においてクラウド上の共同システムを地銀に解放する構想を描く。参画地銀でコストをシェアするため、1行当たりの費用は安く済むという。再編の課題であり、同時に莫大な更新コストが必要なシステムで悩む地銀にとって、SBIの提案は魅力的に映るはずだ。

 11日の記者会見。福島銀の加藤社長は異業種であるSBIと提携した理由として、新しい技術を持つ企業との連携の重要性を語ったという。

 SBIはインターネットの技術や証券会社流の金融商品の販売ノウハウなど、地銀にはないビジネス上の優位性を持つ。だがそれのみならず、システム面などの障壁が少ないなど、異業種だからこそ実現できるスピード感も提携の一助だろう。今後も銀行の“外の風”が、再編をちゅうちょする地銀の背中を押すかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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