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働き方改革を推し進める3つのセミナー講演とソリューション展示

2019年11月11日 14時30分更新

文● BookLOUD 根本

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仕事ごっこを蹴っ飛ばせ!
コラボレーションによる新しい価値の創出

 本セミナーの講師、沢渡あまね氏はあまねキャリア工房の代表であり、日産自動車やNTT DATAでの勤務経験を生かして企業の業務プロセスの改善やインターナルコミュニケーションの活性化を支援をしており、業務プロセス改善に関する多数の著書も執筆している。

 まず沢渡氏は、「働き方改革」「少子高齢化」「地域活性」などのマネジメント課題を、個別解決を目指すのではなく、掛け合わせた上での立体的な解決を訴える。そのための軸が「コラボレーションによるイノベーション」である。

 そもそも現代の企業・社会に横たわる課題は、昨年10月にトヨタ自動車がソフトバンクと手を組んだように、どんな企業であっても単独で解決できるものではない。逆に言うなら、他の組織・個人とコラボレーションできない組織・個人はそれ自体が将来の成長に対するリスクとなる、と沢渡氏は語る。

 そのための武器となるのがITによるコミュニケーションだが、沢渡氏は従来のテレワークやサテライトオフィスのような、離れていても仕事ができるとか、災害時の非常手段や福利厚生的なツールはもう古いと言う。これからは、コラボレーションによる新しい価値を生み出す場としてのテレワークをイメージしなくてはならない。

 その例としてNTT Communications が長野県軽井沢に作ったワーケーション(WorkとVacationを組み合わせた造語)の拠点、ハナレ軽井沢を挙げた。家族とレジャーで軽井沢を訪れたビジネスマンが、リフレッシュしつつオフィスの同僚とともにテレワークができるとか、同様にここを利用している異業種ビジネスマンとの交流の場となることなどを企図している。

 また、人手不足やジェネレーションギャップによる人材育成上の課題が重くなってきている地方の中小企業に対しても、コラボレーションによる改革を提案している。そのような企業にいる若手エンジニアにとって、参考になる先輩がいないとか、いても年齢がずっと上で、日常的に相談しづらく、逆に最新の技術に詳しいとも限らないという現実は、自身の将来に向けた成長に対する非常に厚い壁となってしまっている。

 東京・名古屋・大阪のような大都市であれば勉強会などでスキルアップもできるだろうが、地方ではなかなかそのようなチャンスも少ない。コラボレーションの機会が奪われている状態である。

 沢渡氏は、地域のITエンジニアとともに主宰している静岡・遠州地区でのIT勉強会に首都圏からも参加を促し、そこでの交流を推進することにより、地域のITエンジニアスキルアップを図ると同時に、都市部のITエンジニアとの交流や相互学習の機会を提供している。このような双方向にメリットをもたらす共働の場、新たな価値を生み出す場を、彼は「テレワーク2.0」と呼んでいる。これは従来のテレワークとはまったく意味の異なるものとなる。

 沢渡氏にとって働き方改革とは、人や組織が正しく成長し稼いでいけるモデルを作るというビジネスモデル改革である。それにはコラボレーションによるイノベーションが不可欠だが、そのためにはまず自分や自部署が何者なのか、どこに向かっていこうとしているのか、組織をブランディングし、その価値を周囲に発信していかなくてはいけない。

 その時陥りがちなのが彼の著書にもある「仕事ごっこ」である。そこで仕事ごっことは、1)生まれた当初は合理性があったものの、時代や環境や価値観の変化、および技術の進化に伴い、生産性やモチベーションの足を引っ張る厄介者と化した仕事や慣習、2)コラボレーション、ひいてはその組織とそこで働く人の健全な成長を邪魔をする形骸化した仕事や慣習。あるいは仕事のための仕事。と定義されている。

 例えばIT企業に勤めるネットワークエンジニアが、ネットワーク機器の増強をしなければならないとする。そのための稟議の手続きが煩雑で、紙とハンコの作業で忙殺される。それは健全といえるだろうか?

 ネットワークエンジニアとしての本来の業務に集中できず、生産性はもちろん成長の足かせにもなる。あるいはメールでパスワード付き圧縮ファイルを送り、そのパスワードを別メールで送る。受け取る側はパスワードの書かれたメールが届くまでは仕事を進めることができない。ロスタイムが発生する。

 このような仕事ごっこを排し、個人・部署ともに本業や本来価値創出にフルコミットしてプロとして正しく成長していくために、下に示す健全な組織のバリューサイクルを回していくことを提唱した。まず中央にある楕円で示される(現場レベルの)コアサイクルを回すことによって個人の成長実感や組織へのエンゲージメントを得る。

 そして部署の成長からビジネスモデル変革への間には組織のブランディングとともに、組織外部とのコラボレーションによって自社のファンを獲得していく。成長実感やエンゲージメントを高められれば採用にとっても強みとなるし、ファンとの受信/発信を組織内部のユーザーエクスペリエンスの向上やコミュニケーションの促進と並行して進める。沢渡氏はそういった活動全体を健全な組織のバリューサイクルと呼び、それを回すことによって働き方改革(ビジネスモデル変革)を実現してほしいと述べた。

 コミュニティの活用は、個人レベルでは浸透しているものの、企業の業務レベルではセキュリティの問題も絡んでおり、まだまだ進んでいるとは言い難い。しかし沢渡氏の言うとおり、今後はコラボレーション抜きのイノベーションはあり得ない。好むと好まざるとにかかわらず、個人・組織の成長のために進むべき方向であると感じる講演だった。

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