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住宅用太陽光発電に「価格破壊」の足音、普及の鍵を握る外資参入

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住宅街の屋根
太陽光発電協会のスローガンは「ニッポンのすべての屋根に太陽光発電を!」だが、普及率はまだ低い Photo:PIXTA

日本では災害が起こるたびに停電する様子が報じられる。そんなときに役立つのが住宅用太陽光発電システムによる自家発電だが、なかなか普及しない。その理由とはいったい何なのか。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

自家発電で停電しない
自立運転を知らない人も

「1週間程度停電が続いたが、太陽光発電のみで電気が供給できて大変助かった」

 太陽光発電協会(JPEA)は10月17日、住宅用太陽光発電の自立運転についての実態調査で寄せられた消費者の声を公表した。

 大型台風により千葉県は重大な被害を受けた。その中で大規模停電が起こり、多くの家庭が生活に困る事態に陥った。そんな中、太陽光発電システムを搭載した住宅では自家発電が効果を発揮した。

 住宅用太陽光発電システムは蓄電池を併設しておけば、日常生活で発電した電気を蓄えて停電などの非常時に使える。ただ、実は太陽光発電システム自体にもともと自立運転機能が搭載されており、仮に蓄電池がなくても、それを使えば自家発電で最低限の電気はまかなえるのだ。

 今回、蓄電システムを導入していない家庭は486件だったが、そのうち約8割が自立運転の機能を利用し、停電時に有効活用したという。残り約2割は使用方法が分からなかった模様で、自立運転機能の周知が課題として残る。

 なお、蓄電システムを併設していた家庭は1799件で、そのほとんどが自立運転機能を使って自家発電したと見られる。

コストパフォーマンスが悪く
普及率はいまだに6%

 このように普段の生活だけでなく、災害時にも役立つ住宅用太陽光発電だが、日本ではまだそれほど普及していない。調査会社の富士経済の調べによれば、太陽光発電システムを設置している住宅戸数は2018年度に322万戸と推計されており、普及率は6%に止まるという。

 その理由を業界関係者に聞くと、多くが「導入するコストが高いから」と口をそろえる。

 例えば国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究協力プログラム(IEA PVPS)の15年の調査によれば、住宅用太陽光発電システムの価格は、再生可能エネルギーの先進国であるドイツと比べて日本の方が約6割も高かったという。

 住宅用太陽光発電システムのイニシャルコスト(初期費用)は150万円前後で、これにメンテナンスなどのランニングコストが必要とされている。固定価格買取制度(FIT)による売電価格は太陽光発電の設置費用や撤去費用が回収できることを前提に設定されており、住宅用太陽光発電の電気の買い取り期間が10年間であることから、投資回収にかかる期間はこの10年が目安とされている。ただし、システムが高額などといった理由で、FITで想定している導入コストを上回るようなことがあれば10年以上かかる可能性もある。

 自然エネルギー財団によれば、日本でのイニシャルコストが高い背景には、日本企業製の太陽光パネルのシェアが約7割あり、価格競争が少なかったことが挙げられるという。例えばドイツでは、ドイツ企業製と中国や台湾企業製が大半を占めており価格競争が激しかった。

 これに蓄電システムを導入すると、イニシャルコストが2倍近くになることもある。非常用電源として役に立つとはいえ、年に数回あるかどうかの事態に備えて数百万円のコストをかけることにためらいが出るのは仕方ない。

 コストはメーカーによってまちまちで、ここでの金額はあくまで目安だが、こうしたことから、住宅用太陽光発電システムや蓄電システムはコストパフォーマンスが悪いと消費者にみなされてきた。

売電収入にはもう頼れない
自家消費、価格競争の時代へ

 とはいえ11年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの関心が高まり、またFITが始まったこともあって普及率も少しずつ伸びてきた。

 今後は技術開発でシステム価格が下がると見られていることから、30年度には住宅用太陽光発電システムを設置した住宅の戸数が520万戸に達し、普及率が9.7%になるという予測もある(富士経済調べ)。

 一方で、今年度から住宅用太陽光発電ではFITが順次終わる。

 今年度だけで56万戸が卒FITし、20年度以降は毎年度20~30万戸、25年度以降は毎年度15~20万戸程度が卒FITする見込みだ。

 つまり住宅用太陽光発電を普及させるためには、今後は売電収入の利益に頼るのではなく、自家消費による電気料金の節約によってコストパフォーマンスを高めるしかない。

 そのためには蓄電システムを導入して発電した電気をいつでも使えるようにしておくこと、そしてそのイニシャルコストを下げるしかないのだ。

 そんな中、10月15日にテスラモーターズジャパンが、家庭用蓄電システム「パワーウォール」を20年春から発売、設置すると発表した。米国では15年からすでに販売されている。日本でも16年から予約を受け付けていたが、ようやく実現の目途がついたようだ。

 本体価格は13.5kwhで82.5万円。これに系統電力接続をコントロールする「バックアップゲートウェイ」(16.5万円)と組み合わせた価格は99万円(工事費などは別。いずれも税抜)だ。

 1kwh当たりの価格で国内大手メーカーの半分以下になるともいわれているため、テスラが本格参入すれば日本市場で価格破壊が起こる可能性がある。

 これまで住宅用太陽光発電市場は国内大手メーカーがけん引してきた。太陽光パネルの価格はかなり下がっており、これからは蓄電池の価格も下がってくるとみられる。そうなると普及率は加速していくだろうが、その一方で国内メーカーは外資系との価格競争にさらされることになる。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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