このページの本文へ

「LINEほけん」苦戦でデジタル戦略がさまよう生保・損保のじり貧

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
LINEほけん
「LINEほけん」では保険料が数百円の小口保険を60種類以上展開している Photo:Masaki Nakamura

昨秋に鳴り物入りで登場した「LINEほけん」。フィンテックの理想形として注目を集めたものの、やや苦戦を強いられる現状に、保険業界のじり貧ぶりと強い閉塞感が垣間見える。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

LINEと損保ジャパン日本興亜が組んで
スマホ保険や自転車保険などを販売

「当初と比べると、だいぶトーンダウンしてしまっている印象だ」

 対話アプリを手掛けるLINEの関係者は、昨年10月に開始したインターネットでの保険販売についてそう話す。

 LINEは、子会社を通じて損保ジャパン日本興亜と組み、「スマホ保険」や「自転車保険」「ゴルフ保険」など、保険料が数百円といった小口の損害保険をアプリ上で販売しているものの、当初の期待とは裏腹に苦戦を強いられているという。

「LINEほけん」の公式アカウントの友だち登録数は、現在930万人を超えているが、実際に契約に至った件数は今年10月時点で約26万件。転換率は5%にも満たない水準だ。

 さらにスマホ保険など一部商品は、期間限定でユーザーに無料で提供し利用を促してきたが、関係者によるとそうした無料分の契約が、件数全体の7割程度を占めているという。

 今年5月には、半日から利用できるスポット型の自動車保険の販売も始めたことで、足元では無料分と有償分がほぼ半々になり、有償分の契約は10万件に達したようだ。ただ依然としてこの規模では、システム開発やプロモーション費用といったコストの回収時期すら見通しにくい。

 テコ入れに向けて、損保ジャパンなどは「日本郵政や大手の小売企業にLINEほけんを代わりに売ってもらえないかと提案をしている」と関係者は話す。

 多くの友だち登録者を抱える郵便局や小売企業の公式アカウント上でも、LINEほけんをPRしてもらうことで認知度を高め、販売拡大につなげようとしているわけだ。

 こうしたLINEほけんの苦戦は、個社の問題として片付けられる話ではない。

 折しも業界全体が、金融とIT(情報技術)が融合したフィンテックの推進に向けて、1000万人単位の利用者を抱えるLINEなどのプラットフォーマーとどう連携し、ビジネスを展開していくか試行錯誤を重ねる中で、保険とネットの親和性が低いことが、改めて浮き彫りになってしまったからだ。

 そもそも、損害保険業界は国内の人口減少と若年層の車離れなどによって、今後収益の柱となっている自動車保険の保有契約が、長期的に漸減するというリスクを抱えている。

 減少スピードを少しでも緩やかにするために、業界として若年層との接点をいかに増やし、自動車保険や火災保険の顧客として取り込んでいくかが課題になっている中で、その解の一つとして手を打ったのが、若年層に人気の対話アプリの活用だった。

 しかしながら、待ち受けていたのはプラットフォーマーの力をもってしても、損害保険という商品が思うように若年層に届いていかないという、厳しい現実だったわけだ。

問われる
保険自体の必要性

 ネットで商機が広がりにくいからといって、損保の売り上げの9割を占めるリアルの代理店に答えがあるわけでもない。

 多くの損保代理店は、経営者の高齢化などによって目下統廃合を進める必要に迫られており、顧客との接点を拡大するどころか、拠点数を削減していく方向にあるからだ。

 業界にとっての最悪のシナリオは、ネットでもリアルでも若者との接点を思うように増やせないという八方ふさがりの状況で、損害保険の必要性すら感じにくくなり、国内市場の縮小が加速していくことだ。

 損害保険だけでなく、生命保険も置かれた状況は同じだ。

 LINEほけんの公式アカウント上に、バナー広告を出稿しているある生保は「数百万円の広告費用に対して、成約件数が1桁だった月がある」(幹部)とその惨状を明かす。

 毎月数千円から数万円というお金を支払い、家の次に高い買い物といわれる生命保険に、スマホで手軽に加入しようという人たちが、ネット全盛の時代にあっても、いかに限られてしまっているのかがよく分かる。

 この生保では来春をメドに、LINE上で医療保険などを販売することを検討していたが、成約率のあまりの低さから、ネット販売をはじめとしたデジタル戦略全体を根本から見直す必要に迫られている。

 デジタル戦略の巧拙が、今後の企業経営の浮沈を握るとまでいわれる中で、生損保業界はその大きなうねりにどう向き合っていけばいいのか。

「無理に冒険せず、他社の状況を見ながら後出しジャンケンするのも正直なところよいのでは」

 大手生保の幹部からそうした挑戦意欲を失ったかのような発言が出てしまうほど、業界には今、デジタル戦略を巡って閉塞感が漂い始めている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ