このページの本文へ

“データをつなぎ、データ活用を促す”リンケージ・ビジネスへの注力方針を強調

セゾン情報、HULFTやDataSpiderを統合したiPaaS新製品計画を披露

2019年11月08日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 セゾン情報システムズは2019年11月7日、ファイル連携ミドルウェア「HULFT」を中心とした今後の事業戦略説明会を開催した。社長の内田和弘氏は、データ活用に取り組む現在の顧客企業では、業種業態を超えて自在にデータを“つなぐ”ことへのニーズが高まっていると指摘。その実現を支援するために現在注力している「リンケージ・ビジネス」について説明した。

 またHULFT事業部長の山本善久氏は、将来的な製品ビジョンとして、企業内のあらゆるユーザーのデータ活用を支援するデータ統合基盤(iPaaS)“Data Management Solution”を紹介。HULFTや「DataSpider Servista」といった既存製品に加え、データカタログなども新規開発して組み込むと説明したうえで、その一環となる新製品を発表した。

今回、新製品ビジョンとして発表された“Data Management Solution”の概要

セゾン情報システムズ 代表取締役社長の内田和弘氏

セゾン情報システムズ 取締役 HULFT事業部長の山本善久氏

ふたたびの成長軌道に向けて「リンケージ・ビジネス」に注力

 内田氏は、セゾン情報システムズとして“新たなビジネスの柱”に育てるべく注力しているリンケージ・ビジネスについて説明した。

 内田氏が社長に就任したのは2016年4月。その前々年と前年(2014、2015年)、同社ではクレディセゾンから受注した大型基幹システムの開発をめぐってスケジュール遅延を起こし、2016年3月にはおよそ150億円の賠償金を支払う形で和解に至っていた。内田氏の社長就任後は、既存事業の選択と集中、そして徹底的な業務効率化を進める一方で、新たな事業の開発と成長軌道の模索に注力してきた。

 そこで見出したのがリンケージ・ビジネスである。あらゆる業界でデータ活用による新たな価値創出を目指す取り組みが始まる中で、顧客企業ではオンプレミス/クラウドにある多種多様なシステム間を柔軟に“つなぐ”ニーズが高まっている。長年の実績と高い信頼性を持つHULFTやDataSpiderをデータ連携の中核に据え、「Tableau」「Concur」などさまざまなパートナー製品/SaaSなども組み合わせながら、顧客企業への提案を行っている。

 「3年ほど前から(リンケージ・ビジネスを)スタートし、売上は現在10億円ほど、毎年倍々ゲームで伸びるところまで来ている。新規顧客も112社獲得できた。また、当初はTableauやConcurと基幹システムとの連携だけだった案件が、社内全体に及ぶデータ連携基盤の構築案件へと拡大するケースも出てきている」(内田氏)

「リンケージ・ビジネス」の概要。HULFTとDataSpiderを中核に据え、グローバルベンダーの提供する業務システム/SaaS/クラウドとの柔軟な連携を支援する

TableauやConcurといったパートナーソリューションは、まず自社導入してメリットの確認やノウハウの蓄積を図ったうえで、顧客提案するかたちをとっている

 今後のリンケージ・ビジネスの展開としては、経営のデジタル化とスピーディな経営意思決定を支援する「モダン・マネジメントサービス」と、財務/経理部門に業務生産性の大幅な向上を支援する「モダン・ファイナンスサービス」という2方面での展開を考えている。現在はHR系SaaSとして「Workday」を、またファイナンス系SaaSとして「Kyriba」「BlackLine」を新たに自社導入し、将来的な顧客提案に向けてノウハウを蓄積しているという。

リンケージ・ビジネスの今後の展開。さらにグローバルベンダーのSaaSを連携可能にし、顧客企業における経営のデジタル化、ファイナンス業務の効率化を支援していく方針

 内田氏は、自社内でもオラクルやSAP、Concur、Salesforceといったさまざまな業務アプリケーションのデータを集約、フォーマット変換したうえでTableauでダッシュボード化しており、意思決定スピードの向上に役立っていると説明。またファイナンス業務に関しては、KyribaやBlackLineの導入で業務の自動化/効率化を進めて、経理部門が本来の専門性を生かし、経営データに基づく経営層や事業部門への提言を行えるようなジョブチェンジを図っていると語った。

 「このように、当社では事業の新たな転換に取り組んでいる。売上高は236億円ほどと、ピーク時の310億円より下がっているが、社員1人あたりの売上は25%向上、同じく営業利益は39%の改善と、非常に業務生産性が高くなった。休暇は(夏休みの3日間を含め)年間で19日ほど、またトレーニング日数も年間4日のレベルから12日間まで増えた。アナログな業務のデジタル化を進め、データ活用も行いながらさまざまな『働き方改革』を自ら実践し、それをサービス化して顧客にデリバリできるようなビジネスを行っていきたい」(内田氏)

新製品ビジョン“Data Management Solution”、データカタログなども追加へ

 HULFT事業部長の山本氏は、HULFTとDataSpiderを中心とした将来的な製品ビジョン“Data Management Solution”について紹介した。

 HULFTは1993年の初版発売から25年の歴史があり、導入社数は9800社、導入本数はおよそ21万本という高い実績を持つ製品だ。特にエンタープライズ市場ではその堅牢性や信頼性、安全性が評価されており、たとえば金融分野では全国銀行協会 会員銀行の100%、製造分野では日本自動車工業会 会員企業の100%が導入している。

HULFT、DataSpiderの歴史と実績。エンタープライズが求める高い信頼性や安全性が評価されている

 こうした実績と顧客からの信頼を“強み”として、新たに展開するのがData Management Solutionである。山本氏はまず、社会全体でデータ活用ニーズが強まっていること、企業内の幅広いユーザーが効率的なデータ利用を望んでいることなどを背景として、HULFTブランドのビジョンをアップデート、拡大したことに触れた。

 「これまでの『自由にデータをつなぐ』という基本コンセプトは変わらないが、それに加えて、あらゆるユーザーの『データの発見、理解、発想を促して、情報を有用な“知”に変えていく』、それをわれわれとHULFTがサポートしていく。そういうメッセージを掲げた」(山本氏)

HULFTブランドの新ビジョン。データを“つなぐ”だけでなく“活用する”も支援する

 その実現に向けて、新たな製品も組み合わせながらデータ統合基盤/iPaaSのData Management Solutionを構成していく。これまでHULFTやDataSpiderで実現していた、多様なソースからのデータ転送/収集とインテグレーションなどの機能だけでなく、「社内にどんなデータがあるのか」の可視化や、データクレンジング/品質担保、プレパレーションといった機能/製品も追加し、IT部門に限らずさまざまな現場のユーザーがノンプログラミングでデータ活用に取り組めるプラットフォームを提供する計画だ。

 「たとえばデータの可視化については、現在データカタログの製品を研究開発している。同様にデータ品質やプレパレーションについても研究開発を行っており、HULFTやDataSpiderのアップデートもふまえて、最終的にはデータ収集からデータ活用まで、すべてを一気通貫で取りそろえるというコンセプトだ」(山本氏)

 具体的なロードマップとして、山本氏は今後3~5年をかけて全体を構成していくと述べた。また内田氏は、このData Management Solutionにはさまざまなグローバルベンダーとのアライアンスも組み込む計画であると補足している。

HULFTやDataSpiderを組み込んだData Management Solutionによって、「自動化」「インテリジェント化」「モダナイズ」の顧客課題を解決していく方針

 今回は、このData Management Solutionビジョンの実現に向けた2つの新製品も発表されている。

 1つめの「HULFTクラウドストレージオプション」は、HULFTと「Amazon S3」や「Azure Blob Storage」といったクラウドオブジェクトストレージとのデータ連携を容易に実現するHULFTのオプション製品だ。12月4日より提供開始予定で、ライセンス購入型と月額サブスクリプション型の購入形態がある。ライセンス購入の場合、価格は30万円で、別途保守費用が年額4万5000円から(いずれも税抜)。

 山本氏はこのオプションの特徴について、ユーザーがクラウドストレージ側の設定などを意識することなく、HULFT上の簡単な設定だけで利用できる点を挙げた。これにより、既存のシステムとクラウドの両方に詳しいエンジニアがいなくとも、クラウドストレージを活用することができる。セゾン情報システムズでは、このオプションを活用してDR用のバックアップストレージをクラウド移行し、42%のコスト削減を実現したという。

 もうひとつの新製品が「DataSpider DataRobotアダプタ」だ。これは、自動機械学習プラットフォームのDataRobotを活用するうえで、あらかじめDataSpiderで抽出、統合、整形した学習データをDataRobotに渡したり、DataRobotによる予測(出力)データをDataSpiderで受け取ったりするためのアダプタである。同社では今年8月にDataRobotとのテクノロジ-・アライアンス契約締結を発表しており、ノンプログラミングでの機械学習の活用領域を拡大するものとしている。

今回発表された「HULFTクラウドストレージオプション」「DataSpider DataRobotアダプタ」の概要

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード