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セブンの時短ガイドラインににじむ「24時間営業を死守」の本音

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深夜のセブンイレブン
ガイドラインができてもセブン-イレブンの深夜閉店にはまだまだハードルがあるようだ Photo:Diamond

24時間営業の例外を“容認”する歴史的な一歩となるか――。セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は11月1日、全国の加盟店向けに、深夜閉店する「時短営業」のガイドラインを公開した。無人での深夜閉店を可能とした一方で、事前に従業員の募集の徹底や商圏分析をさせるなど、時短営業にたどり着くまでの“条件”も示された。時短を希望する加盟店オーナーを尻込みさせかねない内容に、SEJの本気度は引き続き問われている。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

深夜閉店は最大8時間、ただし365日連続
お盆や正月だけの深夜閉店認めず

「まあ、一歩前進」――。

 24時間営業問題で揺れるコンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)が、ようやく重い腰を上げた。時短営業を希望するための加盟店向けに「ガイドライン」を作成、11月1日に加盟店向けの専用端末「ストアコンピューター」で公開した。ガイドラインを読んだあるオーナーは、複雑そうな表情を浮かべながら、冒頭のように評した。

 24時間営業を事実上、絶対的なルールとして加盟店に強制してきたSEJ。ガイドラインは深夜閉店という例外を“容認”する初めての指針とあって、加盟店側はその中身に注目していた。

 ガイドラインによれば、深夜閉店できるのは最長8時間。夜23時~翌朝7時までの間から、1時間単位で具体的な休業時間を決める。ただし、深夜閉店に踏み切った場合は原則、365日連続で深夜閉店を続けることになる。

 客の多い特定の曜日だけ24時間営業することは可能としているが、お盆や正月といった特定の時期だけの深夜閉店は認めない。また、「平日は4時間休業、休日は8時間休業」といった、曜日別に休業時間を変えることも認めない。「お客様や配送業者に混乱を来す」ことが理由だという。

 夜間帯の配送を巡っては、SEJは今年3月に時短実験を開始して以降、時短を希望するオーナーに対して本部の担当者が、「深夜に一部商品の納入を止める」「深夜の閉店時間中に荷受けのための従業員を置かないと、時短実験への参加を認めない」などの条件を突き付ける“時短潰し”も問題視されていた。

 今回のガイドラインでは、深夜は無人とする場合、配送用トラックの運転手が店舗の鍵を開けて荷物を運び入れる方式と、店外の倉庫に荷物を入れて施錠する方式の両方が提示されている。

 果たして本部は時短営業を後押ししてくれるのか。今回のガイドラインをオーナーがもろ手を挙げて歓迎できないのは、深夜閉店の条件もさることながら、時短を容認したくないという、本部側の“本音”も透けて見えるからだ。

時短希望店がまずやることは人手不足対応
本部の従業員募集システムを宣伝

「深夜閉店を実施する前に」――。

 ガイドラインはこう始まる。本部側が時短営業の“容認”に踏み切った理由について、「昨今、社会環境は大きく変化しており、私たちも過去の延長線ではなく新しい発想の下でお客様ニーズの変化に対応することが求められています」と高らかに宣言。その一方で、「従来通り、24時間営業を期待してご来店されるお客様がいらっしゃる点にも十分留意し、慎重にご検討してください」と、早速くぎを刺している。

 そして続く項目は、「人手不足への対応」だ。ところがその説明の冒頭に書かれているのは、「人手不足を理由に深夜閉店を検討される前に、求人管理システム『リクオプ』、『派遣センター』の利用をご検討ください」という一文。本部が準備した従業員募集システムの“宣伝”であり、その使い方の詳細な説明がなされている。

「店周辺の世帯数や従業員数を確認しましょう」
地図を用意して書き出すよう要求

 本部のシステムを使っても人が集まらなければ、時短営業の検討に進めると思いきや、“深夜閉店を実施する前に”行うべき項目はもう一つある。それは、「商圏、使われ方の確認」である。

 この目的は、深夜閉店予定時間帯の顧客ニーズの把握だという。そして、オーナーがやるべき具体的な項目として、「自店周辺の地図を用意し、周辺で影響のある施設や事務所、住宅を書き出し、従業員数および世帯数を確認」するよう求めている。

 近隣にある事業所の従業員数や世帯数を地図に書き込んでいく作業は結構な手間が掛かりそうだ。そして、人手不足で深夜に自らシフトに入らざるを得ないような多忙なオーナーが、こうした作業に時間を割けるかどうかは疑問符がつく。そもそも、こうした商圏分析は、本部が出店時に実施しているはずである。

 加えてオーナーは、自店のストアコンピューターで時間帯別の客数や売り上げを把握できる。深夜の客の動向はこれで推測可能で、あるセブンのベテランオーナーは、「本部は時短営業を諦めさせるため、オーナーに無意味で無理難題なハードルを設けている」と指摘する。

 他にも、オーナーに時短営業をためらわせかねない説明がガイドラインにある。

社会保険未加入問題は放置する一方で
深夜従業員の解雇ルールは詳細に説明

「深夜閉店に伴う雇主としての責任」――。時短営業を始めれば、深夜に勤務している従業員の夜間の仕事はなくなることになる。その場合について、「従業員の労働条件を一方的に不利益に変更することはできません。また、深夜シフトの従業員に休業を強いた場合、事業主都合による休業に該当し、最低でも休業手当として平均賃金の60%を保証しなければなりません(労働基準法第26条)」と言及しているのだ。

 そして経営上の必要性、従業員側の不利益を回避する努力、対象となる従業員の人選の合理性について、「妥当な手続きにより複数回、時間をかけて説明・協議します」と記されている。

 さらに、従業員の退職が必要な場合も、「万が一深夜閉店をはじめるという理由のみで従業員を解雇した場合、解雇は無効となる可能性が極めて高く、解雇予告手当の支払いだけでなく、あっせんや訴訟等のトラブルになるため慎重な対応が必要です」と念押ししている。

 それ以外にも、有期労働契約の場合は期間満了の30日前に予告することや雇用保険の資格喪失手続きの必要性、在職中の有給休暇の取得を雇用主側が拒否できないことなど、懇切丁寧な説明が続く。

 これらの説明それ自体は正しい。だがその一方で、労働法制上、本部が長年放置してきた問題がある。

 コンビニの加盟店では、従業員が社会保険に加入していないケースが多い。近年、日本年金機構がこうした加盟店の捕捉と加入促進に取り組んでいる。そのため、低収益で保険料負担ができない加盟店の場合、オーナーが法人をやめて加入基準の低い個人事業主となる、法人成りならぬ“個人成り”が発生している。ただ個人事業主であっても、社会保険の加入基準を満たす従業員が常時5人以上いれば強制加入となるため、個人成りは根本的な解決策にはならない。

 社会保険への加入も法律で定められた義務だが、SEJに限らずコンビニ各社の本部はどこも「加盟店の責任」であるとして、まともに対応してこなかった。その姿勢は今も変わっていない。

 こうした事態を直視しないまま、いざ時短営業を始めたいと希望するオーナーに対して、労働契約上のルールと手続きを事細かに求めるSEJの姿勢に違和感を持つオーナーは多い。まず従業員を社会保険に加入させる余裕のないオーナーに対して、何らかの手立てをするべきではないか。

 本部がわざわざガイドラインで雇い主の責任について事細かな説明を繰り広げる狙いについて、前出のベテランオーナーは、「公正取引委員会や経済産業省へのアピール」に加え、「さも複雑なルールや手続きが求められるように見せて、気が弱く従順なオーナーの時短希望を封じたいのではないか」との見方を示す。また別のセブンの現役オーナーは、「幹部はマスコミで時短営業を認めると言いながら、現場で実質的に認めないという状態になるのではないか」と危惧する。

 業界2位のファミリーマートは10月から、全国600超の加盟店で時短実験を始めた。この実験への参加オーナーを集める説明会では、6〜7月に行われた小規模な実験の結果について、期間中の個店別の売り上げや従業員数の実数、オーナー利益の増減の傾向まで詳細を開示していた。SEJの時短実験が、参加した加盟店数程度しか公表されていないのと比べ、その姿勢には大きな違いがある。

 加盟店支援の中心となる時短営業の容認について、SEJの本気度は今後も問われ続けることになる。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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