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二子玉川・武蔵小杉、台風被害で「資産価値暴落」説の真相

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●(写真キャプション) 多摩川の氾濫で浸水被害の重大さを改めて認識させられた
多摩川の氾濫で浸水被害の重大さを改めて認識させられた 写真:東阪航空サービス/アフロ

日本列島を2度の台風が襲った。そんな中、東京都の二子玉川や神奈川県の武蔵小杉といった関東屈指の人気エリアでも浸水被害が発生。この災害が今後、不動産市場にもたらす影響について見てみよう。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

セレブの街、住みたい街が
台風で浸水被害に遭遇

「数十年に一度」といわれた台風19号は、全国各地に大きな水害をもたらした。

 その中で話題に上った1つが、東京と神奈川を流れる多摩川の氾濫による“セレブの街”二子玉川(東京都世田谷区)と“住みたい街”武蔵小杉(神奈川県川崎市)の浸水被害だ。

 二子玉川では、地元住民との堤防整備をめぐって交渉が長引き、ようやく整備に向けて動き出した矢先に氾濫した。

 また武蔵小杉では、増水した川の水が排水管から逆流して浸水する「内水氾濫」で、タワーマンションの地下にある配電盤が壊れて停電。住民らが管理会社に対し、不満をぶつけるシーンが報じられた。

 今後もこうした水害が毎年起こる可能性がある。そんな中、今回の被害は不動産市場にどんな影を落としたのか。

 ここでは資産価値と管理という2つの観点から、今後の不動産市場に与える影響について見てみよう。

浸水したかどうかで
価格差は瞬間的に大きくなる

 今回の件で、インターネット上では「二子玉川や武蔵小杉の資産価値が暴落するのではないか」という憶測が飛び交った。
 
 もしそうだとすれば、デベロッパーとしては開発戦略の変更を余儀なくされるだろう。

「物件開発では事前にさまざまな想定をしている。今回の件が当社の開発戦略に影響を与えることはない」

 二子玉川と武蔵小杉の両方の開発に関わっている、東急不動産の広報担当者はそう話す。

 浸水の危険性を示す「ハザードマップ」は一般公開されている。不動産会社は開発する際、その点はある程度織り込み済みという訳だ。

 また「不動産の公的な評価ではハザードマップや土砂災害警戒区域などは当然踏まえている」と不動産鑑定士の武藤悠史氏は話す。 

 武藤氏によれば、国税庁の路線価を見ても、今回氾濫した土地の方が価格は低く評価されていたという。

 とはいえ、住宅被害は命に直結する。そのため、浸水エリアとそうでなかったエリアの価格差は瞬間的に大きくなると想定される。これからずっと住もうとする人が、浸水エリアを今あえて選ぶことは少ないとみられるからだ。

 さらに今後は、アクセスの良さや人気度だけではなく、天災による被害を受けやすいかどうかが、市場間取引におけるリセールバリュー(再販価値)や金融機関の担保評価にも影響を及ぼしてくるだろう。

 ただし「数十年に一度」クラスの災害で起こった出来事は、復興に伴い人々の記憶から少しずつ薄れる。それにつれて、大きく下げた地価も次第に戻していくというのが、不動産鑑定の世界では一般的な見方のようだ。

 東日本大震災でもタワーマンションは停電したが、それでも価格が暴落することはなかった。

「二子玉川でいえば、今回浸水しなかったエリアはさらに人気が高まる。浸水エリアは数年間、地価を下げ、次第に下落率は薄れていく」と武藤氏は見ている。

これから住む人は管理も大事
倒れた植栽が1カ月放置も

「今回の浸水被害は、ハザードマップを注意深く見ればある程度予想できるものだった」――不動産投資家の依田泰典氏はそう話す。

 とはいえ、マンション販売業者が商談の場で、今回のような被害を想起させることをじっくり説明するとは考えにくい。またハザードマップの説明には法的な義務がない。そのため、業者側から説明がなければ、購入者が自ら詳しく調べるしかないのが現状だ。

 二子玉川や武蔵小杉のタワーマンションの居住者も、「購入時の説明でそこまで想定していなかった」と話す。

 一方で、これから価格が下がれば、この辺りで浸水被害が報告されなかった中古物件なら買いたい、もしくは賃貸マンションに住んでみたいという人もいるだろう。

 その場合、「安全安心という観点から管理が行き届いているかというのも大切だ」と依田氏は指摘する。

 実際に、依田氏の自宅付近で台風の影響により、高級賃貸マンションの敷地にある植栽が根元から風でなぎ倒され、1カ月以上放置されていたそうだ。そこは高級賃貸マンションで、家賃は月数十万円クラス。管理会社は誰もが知る大手だという。

 他にも被害があり、人手不足で手が回らなかったのか。単純に管理がずさんなのか理由は分からない。ただ、こうした管理は資産価値や居住の快適性に直結する。管理が行き届いているかどうかは、実際に自分で物件を見たり、販売業者に細かく聞いたりしてみないとわからないことが多い。

 住宅は高い買い物で、不動産業者にもさまざまな災害対策や詳細な説明が求められるのはもちろんだが、購入するのは最終的に自己責任だ。ハザードマップの確認や現地視察、ヒアリングなどで自分の身を守るしかない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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