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税金逃れで活動停止のチュート徳井氏、プライド高き国税をなめ切った代償

2019年10月31日 06時00分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:JIJI
Photo:JIJI

2回にわたって税金の無申告を指摘されていたのに、改める気配はさらさらなかった――。東京国税局の税務調査を受け、多額の所得隠しや申告漏れが発覚した人気お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さん。「国民の3大義務」を平然と怠り、踏み倒していたツケは大きく、活動停止に追い込まれた。「バレないとでも思ったのだろうか」。あまりの杜撰(ずさん)さにあきれる声も聞かれる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

督促されるまで続く無申告

 全国紙社会部デスクによると、徳井さんは東京国税局の税務調査を受け、2018年までの7年間で計約1億1800万円の申告漏れを指摘された。うち約2000万円は仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う所得隠しと認定された。

 追徴課税額は重加算税を含め約3700万円に上り、既に修正申告や追徴課税を納付したという。

 徳井さんが所属する吉本興業によると、徳井さんは09年、個人会社として「株式会社チューリップ」を設立(決算期は3月)。役員は徳井さん1人で、タレント活動の収入はすべて同社に入れ、徳井さんは同社から役員報酬を受けとっていた。

 しかし、同社は10年3月期~12年3月期をそれぞれ期限内に確定申告せず、税務署からの指摘で12年6月に3年分をまとめて申告した。

 その後も13年3月期~15年3月期を期限内に申告せず、同様に税務署の指摘を受け、15年7月にまとめて申告したという。

 この3年分は申告したものの、法人税は再三の督促にもかかわらず納付しておらず、16年5月ごろに銀行口座を差し押さえられた。

 こうした無申告と不納付のため、税務署ではなく東京国税局が税務調査に着手。無申告のほか、この3年分について徳井さん個人の旅行や衣装代金などが経費として認められず、所得隠しと指摘された。

 また16年3月期~18年3月期も同様に無申告だったため確定申告し、さらにさかのぼって時効になっていない12年3月期~15年3月期までを国税局の指摘に従って修正申告したという。

 徳井さん個人も、12年~17年まで所得税の無申告が続いていた。

脱税事件より悪質の指摘も

 細かく説明すると上記の通りだが、簡単に言うと税務署に2回「申告してください」と督促されたのに申告だけして、税金を納めなかったということだ。

 業を煮やした国税が税務調査に入り、帳簿をガッツリ洗われて不正が発覚した――というお粗末な顛末(てんまつ)だったのだ。

 ここで簡単に新聞やテレビなど使われる「マスコミ用語」と「税法上の用語」を簡単に説明したい。

「所得隠し」「申告漏れ」はマスコミ用語で、前者は意図的にごまかした(前述の仮装・隠蔽)と認定されたケースを指し、後者はそれほど悪質ではない経理ミスの類いとされる。

 所得隠しは当然ペナルティーも重く、一般的には基礎税額の「重加算税」(35%)を追徴される。

 申告漏れは確定申告したものの、少なく申告した「過少申告加算税」(10%)、期限までに申告しなかった「無申告加算税」(15%)が追徴される。

 一般的に税金を免れた場合は「脱税」といわれるが、マスコミ用語でも税法上の用語でも、脱税は所得隠しの手口が悪質だったり、多額だったりして刑事事件として訴追された場合だけに限定される。もちろん、今回は脱税ではない。

 今回、徳井さんのケースは所得隠しが2000万円、申告漏れが1億円なら一般的に報道される脱税事件よりひどくないのでは?との疑問があるかもしれない。

 しかし、問題になっているのは徳井さんが「まったく納税する意思がなかった」と見られていることだ。

 前述の通り所得隠しは国税側が「仮装・隠蔽」を証明しなければならないが、徳井さんは督促されるまで隠そうとも、申告・納税しようとさえもしていなかった。だから「仮装・隠蔽」とはいえなかったが、より悪質と社会的に問題視されているのだ。

国税をなめ切った代償

 基本的に国税は税務に関して「性善説」を旨とし、納税者が正確・正直に自主申告することを前提としている。

 だから、納税者の窓口となる税務署は広報が充実し、問い合わせには丁寧に説明してくれる。

 そういう意味で、基本的に国税は、ごまかした納税者を追い詰める仕事がメインではない。一方で、ごまかした納税者には容赦ないことでも知られる。

 これはなぜか。筆者が聞いたところでは理由は2つある。

 1つは「国民の義務」を果たさない輩(やから)を放置することは、真面目な納税者に対する裏切りだという責任感だ。

 もう1つは、国税の職員はプライドが高い。どういうことかというと、20~30年前まで国税には、地方の進学校で成績優秀だったのに実家が貧乏だったため大学に行けなかった職員が結構いた。

 30~40年前には旧帝大に合格する学力があったのに、進学できなかった人もいたと聞く。

 そうした方々のコンプレックスは「人生・世の中をなめた奴(やつ)は許さねぇ」という意識につながっていたことだ。こうした傾向は今でも引き継がれているようだ。

 今回の税務調査を担当したのは東京国税局課税第1部だろう。政治家や資産家、著名人などの個人を担当する部署で、実施部隊の資料調査第1課~4課のいずれかとみられる。

 国税というと一般的にマルサ(査察部)をイメージされるが、内部ではリョウチョウ(資料調査各課の俗称)と呼ばれ、精鋭部隊として知られる。

 実はリョウチョウが税務調査で多額の所得隠しを発見し、査察部に通告。マルサが強制調査で検察庁に告発し、脱税として刑事事件になることも珍しくない。

 徳井さんは、前述のプライド高き国税職員を怒らせたわけだ。

 2回のチャンスをもらったのに、みすみすスルーすることで「活動自粛」という大きな痛手を負った徳井さん。

 国民の義務、その義務をつかさどるプライド高き組織をなめ切った代償は、ごまかそうとした税金よりはるかに高くなってしまったようだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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