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ヴィームのイベントにFRONTEOが登壇、HCIやストレージ専用機など多様な環境での活用手法を語る

リーガルテックAI企業はなぜVeeamのバックアップ製品を選んだか

2019年10月31日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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HCI/SDSやストレージ専用機が混在する環境でもシンプルに統合できる

 VeeamON FORUMの講演において松山氏は、特に、導入したVeeam製品が幅広い構成形態のITインフラをシンプルにカバーできる点を強調した。

 VMware環境のバックアップを行う最も基本的な構成は、VMware vCenterホストとESXiホスト(バックアップ対象)を、Veeamのコントローラー(管理ホスト)とネットワーク接続するというものだ(NBD転送モード)。松山氏は、最小限のこの構成だけでも「十分に機能する」が、バックアップ処理のワークロードとトラフィックもESXiホストが処理することになり、負荷が大きくなる点には注意すべきだと説明する。

 次にHCI環境だ。vSANによる分散ストレージ環境の場合、VeeamはESXiホストの代わりにプロキシサーバーへ接続する。具体的には、プロキシのロールをアサインしたWindows ServerのVMを複数個用意して、HCIインフラ上に分散配置する。全体の規模にもよるが、FRONTEOでは4~6個の仮想コアを割り当てた仮想マシン2つを、いくつかのHCIマシン上に「適当にばらまく」だけで、「10Gbpsのバックアップ用帯域を使い切るほどのパフォーマンスが出ている」と語った。バックアップ処理にどのプロキシを使うか、負荷分散もVeeamのデフォルト設定のままで自動的に決定してくれるという。

最もシンプルな構成と、HCI環境におけるプロキシを用いた構成

 バックアップ対象として外部ストレージ(SAN)がある場合はどうか。この場合はVeeamホストとプロキシ、そして外部ストレージとをSAN経由で接続する。この構成にすることで、Veeamが仮想基盤の構成を自動的に読み取り、バックアップジョブの実行時にはSAN経由で直接バックアップデータがストレージから転送されることになる。つまり、バックアップトラフィックがESXiホストを迂回するため、前述したような負荷が発生しない。

 松山氏は、この構成で「一般企業が求めるレベルのパフォーマンスは達成できるはず」だとするが、環境によってはさらにシビアなパフォーマンス要件があるかもしれない。その場合は、ストレージ側が備えるスナップショット機能との連携が有効だ。SAN経由でのVeeamの接続先にストレージ管理ホストを加えることで、Veeam側のバックアップジョブ実行と連動してストレージがスナップショットを取得し、それをバックアップデータとして転送する仕組みだ。本番ワークロードのパフォーマンス影響が最も少ない構成であり、NetAppストレージを導入しているFRONTEOでも「その恩恵を最大限に享受できている」と松山氏は説明した。

SANストレージを組み合わせた構成と、ストレージのスナップショット機能と連携する構成

 そしてもちろん、日々の運用監視やバックアップジョブの設定などは、すべて統合された管理コンソールから実行できる。使いこなしもシンプルなため専任担当者が不要であり、「バックアップ運用と人とを切り離せる」と松山氏は説明した。これにより、社内のIT人材はより“攻めのIT”へと注力できるようになっている。

シードデータのオフライン移送、インスタントVMリカバリなど多様な機能

 Veeamの導入によって、FRONTEOが求めていたそのほかの要件も満たされたという。

 たとえば、前述したとおりFRONTEOの保護対象環境は1ペタバイト超の規模である。そのため、初回バックアップ処理(フルバックアップ)時には大容量データ(シードデータ)の転送が必要であり、現実的にリモート転送は不可能だ。Veeamのバックアップデータはふつうのファイルとして扱うことができ、シードデータをローカルのUSBストレージやJBOD、NASなどに保存したうえでオフラインで移送し、移送先でそこから続けて差分バックアップを実行できる。

 またバックアップファイルを直接使って高速に保護対象環境を復旧することができる「インスタントVMリカバリ」機能、同じくバックアップファイルを直接使い、隔離環境でVMを起動できる「バーチャルラボ」機能なども活用しているという。

 インスタントVMリカバリによって、障害や災害の発生時にもデータのリストア処理を待つことなく、短時間での環境復旧が実現する。またバーチャルラボを使えば、差分バックアップで合成されたVMが正常に起動するかどうかを実際にテストすることができるため、「これまでの環境で『何となく不安だから』実行していたフルバックアップの頻度を減らすことができる」(松山氏)。

 Veeamの導入効果はどうか。たとえば従来のバックアップ環境では、遠隔への3TBの差分バックアップに2~3日を要していたが、Veeamによって数時間で完了するようになったという。

Veeamが備える多様な機能によって、FRONTEOがバックアップ環境に求めていた幅広い要件がカバーされた

「単なるバックアップから、より価値の高い業務へと変えていく」

 「Veeamはバックアップのデータやオペレーションを、より価値の高いものに変える可能性を秘めていると考えている」。講演のまとめとして、松山氏はこう述べた。

 たとえばVeeamの提供するさまざまな機能を基準として考えることで、ストレージ購入にあたっての要件を軽減し、より柔軟なシステム設計と最適化されたコストを実現できる。バックアップという業務は、しばしば予算や運用リソースが適切にサイジングされない、軽視されがちな存在だが、ストレージ連携やインスタントVMリカバリ、バーチャルラボといった機能群をベースに、仮想環境との高度なオーケストレーション、自動化も図ることができるからだ。

 「従来のように、単に『バックアップやリストアができます』というだけでなく、Veeamの能力を生かして幅広い運用改善につなげたいと考えている。たとえばパッチ適用やテスト作業などの効率化、さらに将来的にはオートフェイルオーバ、Veeamがビジョンに掲げる“ハイパーアベイラビリティ”のような世界も期待できる」(松山氏)

 現状でもすでにそうした業務効率化に役立っているという。たとえばFRONTEOが保有するバックアップデータを顧客に提供する際に、これまでは動作確認などで長いワークフローが生じていた。だが、Veeamが備えるバーチャルラボを利用すればそのテストが大幅に自動化できる。

 松山氏は、Veeamソリューションの評価は古いPCやサーバーでも十分に可能で、スモールスタートから段階的にスケールしていけることなどを聴講者に紹介したうえで、「皆さんもぜひ、この先を見据えて、Veeamを使う第一歩を踏み出してみてはどうか」と呼びかけ、講演を締めくくった。

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