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東大の入試現代文を読めば「生きた教養」が身に付く理由

2019年10月30日 06時00分更新

文● 小柴大輔(ダイヤモンド・オンライン

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東大
Photo:PIXTA

日本一難しい大学として名を馳せる「東大」。近年は、現役東大生が人気クイズ番組に出演するなど受験生以外からも注目を集めています。さらに、予備校の現代文講師として多くの入試現代文を読んできた小柴大輔氏は、東大入試で出題される現代文は「今読む価値のある本はコレだ!」という東大からの提示であり、現代に考えるべきテーマでもあるといいます。つまり、東大の現代文を読み解くことで、現代人が身に着けておくべき「読解力」「記述力」養成にもつながるのです。そこで今回は、『東大のヤバい現代文』(青春出版社)から、実際に東大の入試で出題された問題の一例を紹介します。

東大が先取りしていた「情報化時代とプライバシー」の論点

 インターネットを利用することが当たり前となった現代。今新たに問題として取り上げられるようになったのが、圧倒的な情報強者としてのグローバルIT企業です。

 ある種の個人情報、プライベートな嗜好データが、グーグルやアマゾンに蓄積されています。課題文の筆者・阪本さんが「データ・ダブル(分身)」という言葉で語っているのも、これらに伴うものです。

 膨大なデータから、「私」を「ある嗜好をもった消費者」として“格付け”あるいはカテゴリーに分類し、広告を自動的に選定するのみならず、私たちの選択行動をさまざまに規制します。私たちはネットで「自由に」買い物を楽しんでいるようでいて、実際は企業が設定したフォーマットに沿って注文をしています。

 またソフトウェアをダウンロードするときなど、規約に「同意します」「同意しません」という“選択”画面が出ますが、「同意しません」という選択は基本的にありません。サービスが停止されるだけです。

 ネット・ニュースの類も、「嗜好」に合わせたものに自動化されていきます。いつのまにか「見たい情報だけ」「信じたい情報だけ」の環境になっていきます。この社会が本来多様なメンバーから成ることを忘れ、耳の痛い話はスルーして(なかったことにして) いくのは社会の分断をもたらすでしょう。

 いまや「環境」として、「情報インフラ」として、ネットが空気のような存在になりつつある現代社会において、プライバシーの変容についての課題文の読解を課すことには知的な意義がありますね。(中略)ネットの「ヘビーユーザー」を自負している人でも、それが自己およびこの社会にもたらしつつある事態に自覚的な人は多くはないかもしれません。

 2019年5月にグーグルはプライバシーの観点から、検索履歴について3ヵ月もしくは18ヵ月で自動的に削除できる仕組みを選べるようにすると発表しました。

 その9年も前、2010年度の入試で、東大は現代社会、情報化社会における「ポスト・プライバシー」、つまり新しいプライバシーの問題を受験生に問いかけていました(課題文は2009年に出版された『ポスト・プライバシー』〈著・阪本俊生〉)。

「個人を知るのに、必ずしもその人の内面を見る必要はない」、
「個人の内面の役割が縮小し始める」、
「プライバシーの拠点の移行」、
「自分自身を評価するのに、他人の主観が入り交じった内面への評価などよりも個人情報による評価の方が、より客観的で公平だという見方もありうる」

 といった筆者(阪本氏)の言葉を引きながら。

 そして、課題文につづく設問が“ヤバい”ほどよいのです。筆者が課題文の中に書いていることを正しく読み取れたつもりになっていたり、「情報化時代のプライバシー」についてわかったつもりになっていると必ず足元をすくわれるような問題を出してきます。

AI時代に、大人が東大現代文を読むべき理由

 世は教養ブームですが、これさえ読めば教養の基礎固めは完璧だ、などという“魔法の一冊”は存在しません。ところが東大現代文を集めてみると、あら不思議!現代社会をポジティブに生きようとする私たち大人の知的栄養になる有益な一冊になるのです。テーマの表層ではなく根源を探る、「読書的価値が高い」文章で満ちています。

 東大現代文は、大人が“生きた教養”を獲得する上で最良のテキストです。東大からの「今読む価値のある本はコレだ!」「今考えるべきテーマはコレだ!」という提示です。しかも通常200ページ以上ある本の中で「イイところ3~4ページはココだ!」というメッセージといえます。巷で常識とされている考え方が本当に正しいのか、「知っている」とはどういうことを言うのか、本物の知性とは何かといったことにしっかりとした意識・自覚を持って欲しいという受験生への期待が反映されているのです。

 そういった本物の知性は、受験生だけでなくビジネスパーソンも身につけて損はないはずです。ぜひ、東大現代文で知的な読書習慣を体験してみてください。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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