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ESET/マルウェア情報局

キヤノンMJ、2019年9月のマルウェア検出状況とダークウェブの近況を報告

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本記事はキヤノンマーケティングジャパンが提供する「マルウェア情報局」に掲載された「9月マルウェアレポート」を再編集したものです。

1. 9月の概況について

 2019年9月(9月1日〜9月30日)にESET製品が国内で検出したマルウェアの検出数は、以下のとおりです。

国内マルウェア検出数*1の推移(2019年4月の全検出数を100%として比較)
*1 検出数にはPUA (Potentially Unwanted/Unsafe Application; 必ずしも悪意があるとは限らないが、コンピューターのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があるアプリケーション)を含めています。

 2019年9月の国内マルウェア検出数は、減少傾向にあった7月・8月と異なり、増加しました。直近6か月の中で、最も検出数の多かった6月に次いで、高い水準ということがわかります。

 検出されたマルウェアの内訳は以下のとおりです。

国内マルウェア検出数*2上位(2019年9月)

順位 マルウェア名 割合 種別
1 HTML/ScrInject 21.1% HTMLに埋め込まれた不正スクリプト
2 JS/Adware.Agent 9.9% アドウェア
3 JS/Adware.Subprop 8.9% アドウェア
4 HTML/FakeAlert 3.2% 偽の警告文を表示するスクリプト
5 HTML/Refresh 1.8% 別のページに遷移させるスクリプト
6 Win32/Exploit.CVE-2017-11882 1.2% 脆弱性を悪用するマルウェア
7 JS/Redirector 1.1% リダイレクター
8 Win32/Injector.Autoit 1.0% 他のプロセスにインジェクションするマルウェア
9 HTML/IFrame 1.0% リダイレクター
10 Win32/GenKryptik 0.9% 暗号化/難読化された実行ファイル
*2 本表にはPUAを含めていません。

 9月に国内で最も多く検出されたマルウェアは、HTML/ScrInjectでした。HTML/ScrInjectはHTMLに埋め込まれた不正スクリプトで、Webサイト閲覧時に実行されます。不正なスクリプトが実行されると、不正なWebサイトへのリダイレクト、マルウェアのダウンロード、不正広告の表示、Web閲覧情報の窃取など様々な被害に遭う可能性があります。

 国内で検出された本マルウェアの数は、2019年4月以降、常に増加しています。また、8月から9月にかけては、検出数が特に大きく増加しました。この傾向は、世界全体でも確認されています。

国内で検出されたHTML/ScrInject検出数の推移(2019年4月の国内検出数を100%として比較)

世界全体で検出されたHTML/ScrInject検出数の推移(2019年4月の世界検出数を100%として比較)

 国内で2番目に多く検出されたマルウェアは、Webサイト閲覧時に実行されるアドウェアのJS/Adware.Agentでした。JS/Adware.Agentは、6月~8月まで連続して最も多く検出されていましたが、9月は2位に後退しました。

2.犯罪に悪用されるダークウェブ

●はじめに

 最近、ニュースなどで「ダークウェブ」という言葉をよく耳にするようになりました。

 「ダークウェブ」とは、匿名性の高い特別なネットワーク上に構築されたWebサイトで、昨年発生した仮想通貨NEM(ネム)の流出事件において、犯人が盗み取った仮想通貨をダークウェブ上で販売したことでも話題になりました。

 現在、この「ダークウェブ」では、犯罪を行なう上で必要な情報やサービスを売買できるエコシステムが構築され、サイバー犯罪が増加する要因のひとつになっています。

●ダークウェブとは

 日頃、私たちが閲覧しているWebサイトは、主に3つの種類に分けることができます。

 1つ目は、「サーフェスウェブ(表層ウェブ)」と呼ばれるWebサイトです。

 「サーフェスウェブ」は、Googleなどの検索エンジンで検索ができ、誰でも閲覧することが可能です。具体的には、私たちが日頃アクセスしている無料のニュースサイトや企業のホームページなどになります。

 2つ目は、「ディープウェブ」と呼ばれるWebサイトです。

 「ディープウェブ」は、一般に公開されておらず、特定のメンバーだけに公開されているWebサイトです。具体的には、有料のWebサイトや特定のメンバーのみが閲覧ができるよう設定されているフォーラムなどです。

 「ディープウェブ」は、Googleなどの検索エンジンによってインデックス化されないため、検索しても検索結果に表示されません。別名、「深層ウェブ」などとも呼ばれます。

 3つ目は、「ダークウェブ」です。

 「ダークウェブ」は、匿名性の高い特別なネットワーク上に構築されたWebサイトで、Googleなど日頃私たちが利用している検索エンジンでは検索することができません。

 また、通常、Internet ExplorerやGoogle Chrome、Firefoxと言ったWebブラウザーでは閲覧することができず、専用のWebブラウザーを利用して閲覧する必要があります。

 この「ダークウェブ」は、Tor(The Onion Router)やI2P(The Invisible Internet Project)といった匿名化されたネットワーク上に存在するため、Webサイトへのアクセス元などを特定することが難しいのが特徴です。

サーフェスウェブ、ディープウェブ、ダークウェブの違い

●ダークウェブを支える匿名化技術

 「ダークウェブ」を閲覧するには、Torや I2Pといった専用のソフトウェアや通信方式を利用する必要があります。

 このTorやI2Pでは、「Onion Routing(オニオン・ルーティング)」という技術を利用することで高い匿名性を実現しています。

 「Onion Routing」の技術は、元々アメリカ海軍の調査研究所NRL(United States Naval Research Laboratory)によって、捜査や諜報活動で得た情報などを秘匿する目的で開発されました。この「Onion Routing」は、通信を行なう際に、複数のノードを経由し、データを多重に暗号化します。そのため、第三者から送信元などを特定することが難しく、匿名性が高いことが特徴です。この技術は、その後、オープンソースとして公開され、Torや I2Pといった匿名性の高いネットワークやソフトウェアで利用されるようになりました。

●ダークウェブで売買されている情報やサービス

 「ダークウェブ」は、匿名性が高いことから、プライバシーや通信を守る意味で非常に有用な仕組みと言えます。しかし、現在、一部の犯罪者たちにより犯罪に必要な情報やサービスを売買する市場としても利用されています。

クレジットカード情報の売買

 以下のWebサイトは、フィッシング攻撃やマルウェア、盗難などで盗み出されたクレジットカード情報を販売しているダークウェブ上のサイトです。

 通常、フィッシング攻撃やマルウェア、盗難などで盗み出されたクレジットカード情報は、盗み出した本人自らが直接使用することは少なく、第三者に転売され、ダークウェブで販売されるケースが多いと言われています。なぜなら、盗み出した情報を自身が使用するより、他の犯罪者に転売する方が安全かつ確実に収益を得ることができるからです。

 このWebサイトで販売されているクレジットカード情報の金額は、約13,000円~28,000円(1ドル110円換算)で、クレジットカードに登録されている国や利用残高によって販売額が異なります。

ダークウェブ上のクレジットカード情報販売サイト

 また、クレジットカード情報を購入する場合は、購入に必要な情報を入力した後、仮想通貨を使って費用を支払うことで、クレジットカード情報を購入できると説明されています。

クレジットカード情報の購入画面

 この他にもダークウェブ上では、オンライン決済サービスのアカウント情報をはじめ、SNSなどのアカウント、ギフトカードなども販売されており、仮想通貨を利用して購入することが可能です。これらのクレジットカード情報やアカウント情報、ギフトカードなどは、不正な手段で盗み出された可能性が高く、興味本位で購入すると罪に問われたり、犯罪に巻き込まれたりする可能性があります。そのためむやみにアクセスしないことをお勧めします。

SNSアカウントやギフトカードの販売画面

個人情報や偽造した証明書の売買

 ダークウェブでは、クレジットカード情報など金銭に直接関連した情報以外にもパスポートや運転免許証などの個人情報や証明書も売買されています。

 たとえば、以下のサイトは、偽造したパスポートや運転免許証を販売しているWebサイトの画面です。

偽造したパスポートや運転免許書を販売しているWebサイトの画面

 このWebサイトでは、イギリスやアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの偽造パスポートや運転免許証が販売されています。

 このWebサイトでは、偽造したパスポートを約20万円(1ドル110円換算)から購入することできます。価格は、偽造するパスポートの国などにより、異なる値段が設定されているのが一般的です。

 偽造パスポートや運転免許証を購入する場合、クレジットカード情報を購入する場合と同様にWebサイトの画面から偽造パスポートの作成に必要な情報を入力し、仮想通貨を使って費用を支払う必要があります。

偽造パスポートの購入に必要な情報の入力画面(一部)

 ダークウェブで販売されているパスポートには、この他にも電子化されたパスポート情報や盗難などで不正に入手したと推測される正規のパスポートなども存在します。特に正規のパスポートにおいては、非常に高額で取引されています。

サイバー攻撃を行なうための各種サービス

 ダークウェブでは、サイバー攻撃を行なうための各種サービスやツールも販売されています。

 具体的には、以前のマルウェアレポートでも取り上げた「ランサムウェアを提供するサービス(Ransomware as a Service)」や「マルウェアを販売するサービス(Malware as a Service)」、「簡単にフィッシングサイトを作成できるサービス(Phishing as a Service)」「サイバー攻撃を請け負うハッキングサービス」などが存在します。

ランサムウェアを提供するサービス(Ransomware as a Service)

 技術力が高くないサイバー犯罪者でも上記のようなサービスの中から自身の目的に合ったサービスを購入し、サイバー攻撃に利用することができます。そのため、プログラミングなど特別な技術を必要とせず、比較的簡単に利用できることから犯罪者にとって、とても魅力的なサービスと言えます。一方で、これらのWebサイトの中には、マルウェアなどが仕掛けられている場合も多く、アクセスすることでマルウェア感染や遠隔操作などのサイバー攻撃を受ける可能性もあります。そのため、一般の人がアクセスするには、非常に危険です。

 この他にも、ダークウェブでは、違法薬物や武器、児童ポルノ、偽造通貨、違法なホスティングサービスなど、違法に入手した情報や違法なサービス、商品が売買されており、犯罪を行なう上で必要な情報やサービス・商品が入手できる市場が形成されています。

●まとめ

 今回、ご紹介したようにダークウェブ上では、サイバー犯罪者などにより、犯罪を行なう上で必要な情報やサービスを売買できる市場が構築されています。そのため、一定の知識とお金さえあれば、犯罪に必要な情報やツールなどを比較的簡単に入手することができます。 しかし、当然ながら正当な理由なしにマルウェアを作成・保管する行為やアカウント情報を盗み出し使用する行為、違法な薬物などを購入・使用する行為などは犯罪です。興味本位でこのようなサービスや情報・商品を購入しないようご注意ください。

 インターネットが私たちの生活を便利にしている一方で、私たちの大切な個人情報がダークネット上で売買されたり、意図せず犯罪に巻き込まれたりするリスクが増加しています。そのため、日頃からセキュリティについて意識し、定期的にサイバー攻撃から身を守るために必要な対策を見直していく必要があります。

 ご紹介したように、9月はHTML/ScrInject と呼ばれるマルウェアの検出数が日本だけではなく世界全体で急増しました。また、犯罪行為に使用されるダークウェブを紹介しました。常に最新の脅威情報をキャッチアップし、対策を実施していくことが重要です。


■ 常日頃からリスク軽減するための対策について

 各記事でご案内しているようなリスク軽減の対策をご案内いたします。
 下記の対策を実施してください。

1. ESET製品プログラムの検出エンジン(ウイルス定義データベース)を最新にアップデートする

 ESET製品では、次々と発生する新たなマルウェアなどに対して逐次対応しております。
 最新の脅威に対応できるよう、検出エンジン(ウイルス定義データベース)を最新にアップデートしてください。

2. OSのアップデートを行ない、セキュリティパッチを適用する

 ウイルスの多くは、OSに含まれる「脆弱性」を利用してコンピューターに感染します。
 「Windows Update」などのOSのアップデートを行ない、脆弱性を解消してください。

3. ソフトウェアのアップデートを行ない、セキュリティパッチを適用する

 ウイルスの多くが狙う「脆弱性」は、Java、Adobe Flash Player、Adobe Readerなどのアプリケーションにも含まれています。
 各種アプリのアップデートを行ない、脆弱性を解消してください。

4. データのバックアップを行なっておく

 万が一ウイルスに感染した場合、コンピューターの初期化(リカバリー)などが必要になることがあります。 念のため、データのバックアップを行なっておいてください。

5. 脅威が存在することを知る

 「知らない人」よりも「知っている人」の方がウイルスに感染するリスクは低いと考えられます。ウイルスという脅威に触れてしまう前に「疑う」ことができるからです。
 弊社を始め、各企業・団体からセキュリティに関する情報が発信されています。このような情報に目を向け、「あらかじめ脅威を知っておく」ことも重要です。

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