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柳谷智宣がAdobe Acrobatを使い倒してみた 第105回

アドビのビジネスカンファレンス「BEYOND」働き方パネル

平成生まれ×昭和生まれの経営者が語り合う令和の働き方

2019年11月21日 09時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

提供: アドビ

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手段として業務効率を向上させるための新しい働き方とは

 ここからはトークセッション形式で、令和の時代の新しい働き方のモデルを探っていくことになった(以下、敬称略)。

秋田:正能さん、先ほどの原田さんのお話を伺って、どう感じましたか?

正能:一番の発見は、働き方を考えるときにタイミングという概念をもっと大切にしてみたら効率が上がるかもしれない、そしてツールを使ったらこのタイミングという概念をもっと大切にできるかもしれない、ということです。私たちも地域の仕事をするときに、農家さんは朝4時に起きて、17時くらいまで畑に出ているので連絡が取れません。そんな時、リアルな人間同士ならタイミングがずれるところ、LINEで連絡をしたり、Acrobatでカタログの校正を見たり、ツールを使うことによって、一緒に働いていける世界もあるのかなと思いました。

(原田氏に)手段と目的が間違っているとおっしゃっていました。間違っている経営者の方から、これを導入しろとか、女性を何人以上活躍させろ、といったことを言われ、それをクリアしないと会社で評価されないのでやらざるを得ない場合、どうしたらいいのでしょう?

原田:まず、政府が言っていること自体が間違っていると思います。ワークライフバランスだとか、子育て支援とか、女性の社会進出とか言いながら、65歳を過ぎても仕事をしろとか。早く帰れといいながら、副業OKとか。考えてみたら、全部税増収のための施策ですよ。そこを勘違いしないようにしなければなりません。手段が目的化していることがたくさんあります。若いベンチャーがIPOと言うのですが、IPOは資金調達をして、何かを実現するための手段の一つで目的ではないのです。

正社員というのは、新しいビジネスのプロデューサーでなければいけません。こういったことを子供の頃からしっかりと教育していくことが日本の命題でもあるにも関わらず、空の色は青、夕焼けはオレンジと教えています。画一的で真面目な質の高い個人を生むのは素晴らしい教育ですけど、イノベーションを起こすという原動力にはなりません。ぜひ、正能さんのような若い世代にチャレンジしていただいて、それを大人が認めなければいけないと思います。

残業をどうやってなくしたか、と言う話をしたいと思います。マクドナルドの時も、残業ゼロを目指せと言ったら、みんなできないと言いました。ともかく6時で帰れと言ったところ、無理です、仕事が終わりませんという反応でした。私は「わかった。残った仕事は、全部持ってこい。責任を持ってごみ箱に捨ててあげる」と言いましたが、誰も持ってきませんでした。残業ゼロで帰っても、業績はまったく落ちませんでした。

特にマーケティングは「忙しいです」「仕事が終わりません」「ただでさえ人が足りません」と言ったので、社員の数を減らしました。そうしたら、残業は減ります。2人で決定すればいいことを、4人で決定していたからです。そうすると、責任の所在が曖昧になり、企画の質も上がらない。そういう悪循環が起きているところは人数を減らすのです。それくらい発想を変えていかないと、残業は減りません。

質の高い企画をして、タイムリーに決定し、強烈なスピードで実行しないと残業ゼロになりません。これができて、もっと残業するのだったらOKですが、それもできないのに、朝来たら午後7時まで仕事するペースで仕事をするのでは、本当に競争力が落ちてしまいます

秋田:いかに業務効率化を進めて生産性を上げていくか、という部分に対して、正能さんいかがでしょう

正能:1時間当たりの価値を最大化するというのは、働き手にとっては幸せに結びつくことです。経営者にとっても資本を最大化することに繋がることを考えると、業務効率化というのはすべての根本になると思います。

そして具体的に業務効率化を進めるにあたっては、「関わる人が自然に使える、あるいは使えるようになっていくツールを選ぶことが重要になります。たとえば先日、学生からレポートがInstagramの24時間限定のストーリー機能のスクリーンショットで上がってきたんです。最初はさすがに「それってありなの?」ともやっとしたのですが、そのもやっとした気持ちを抑えて、どうしてストーリーなの?と聞きました。すると、「だって、スマホで送った方がやりやすくないですか?まゆさんもスマホでそのまま返せたらやりやすそうかなと思って」と。確かに一理ありますよね。

新しい世代の登場にともない、業務効率化のツールや考え方も新しくなっているなという実感が、私でもあるので、おそらく会場にいらっしゃるみなさんはもっと、え? と思うところがあると思います。その、え? と思う違和感を乗り越えていかない限り、業務効率化は実現できないのではないのかと思いました

原田:私には中学2年生の息子がいますが、勉強はYouTubeです。なぜ、YouTubeなんだと聞くと、文字で読むより、動画で説明してくれた方がわかりやすい、と言います。この前の夏休み、温泉旅行行って、大浴場に行って背中流せと。一生の思い出だと言ったら、息子は「昭和」って言ったんです。それだけ、時代が違うのです。

いつも言っているのですが、知識と経験が長いほど、イノベーションの障壁になります。それをいかに捨て、引き出しにしまっておいて、情熱が勝手にその引き出しから出してくる。それが、スティーブ・ジョブスと7年間いっしょに仕事をして、学んだことの1つです。

若い部下から学ぶことがない組織は死んだも同然です。昔のやり方をトップが強制する時代ではないのです。若い人は現代の合理的な動き方をしているということを認めなければいけないと思います。

それからマクドナルドに就任したときに、ITシステムからの出力データが何種類あるのかを全部調べたら、2000種類ありました。そのなかで、利用されているのはほんの一部です。これ、みなさんの会社でも、ぜひ検証してください。なぜ、こういうことが起きるかというと、上司やトップがあれ作れ、これ作れと言うからです。指示することは簡単ですし、言われた社員はやります。従って、作れという指示以上にやめろという指示もやっていく必要があります。その棚卸しもしないと、業務効率がめちゃくちゃ落ちるのです」

秋田:「私がある金融機関でウェブサイトの構築をした時に、みんな作ってほしいとは言うのですが、いらなくなったということは決して言いません。結果として、1万ページ2万ページ、と膨らんでしまいます。古い情報を載せるわけにはいかないので、結果的にアップデートし続けなければいけません。そのメンテナンスにものすごく時間を取られてしまって、新しいことをしようにも身動きが取れなくなってしまいました。おそらく、日本企業の業務の中にも多々あると思います。そこを棚卸ししてスリムダウンすることによって、生まれた余力で新しいことを進めていくパワーに変えていけると、生産力の向上に寄与すると思います。

私たちは3つのクラウドサービスを通じて、デジタルソリューションをお客さまに提供することで、業務の効率化やクリエイティブで付加価値の高い働き方を支援しています。おふたりにとって、デジタルツールによる、ビジネスや働き方の未来というのはどんなものになると想像していますか?

正能:すごく具体的な話になりますが、私がAdobe Acrobatを使っていなかった頃は、商品カタログのサンプルを郵送したり、FAXで送ったり、持っていって書き込んでもらったりしていました。今は、ツールがあることによって、どこにいても、みんながひとつのものについて議論できる時代になったという実感があります。こうして効率化できるやり方が登場することは、働き方だけではなくて、住む場所や暮らしを変えることができます。つまり、生き方の選択肢を広げていくこともできるのが、デジタルツールが導入される面白さの行きつくところなのではないでしょうか。

一方、地方自治体の方々とやりとりをしようとすると、いつも実感するのですが、メールの使いこなし方については、まだまだ課題があるように感じます。たとえばメールのCC。全体返信で返ってこず、毎度Ccに追加し続けて返信することになることも多いのですが(笑)。これって、CCの意味が十分に理解されていないからだと思うんですよね。でも、LINEだったりAcrobatは、ツールを使う目的が明確なので、上手にやり取りできることが多いです。こうした、使う目的が明確なデジタルツールほど、上手に使われやすいし、本当にあってよかったなという思います」

原田:メールってCCとBCCの使い方がものすごく大きなメッセージです。自分がCCに入ってないとショックを受ける人がいます。BCCを多様する人は処世術ばかりを考える変な人が多いです。やはり、デジタルトランスフォーメーションは上手く使わないと、便利なものが逆に問題を起こしたり、生産性を落としたりするのです。

世の中、AI、VR、IoT、データサイエンス、ビックデータという言葉がありますが、これも手段です。将来、こんな職業がなくなると言う無責任な評論家がいますが、私は仕事というのはなくならないと考えています。仕事の質が変わっていくと思います。たとえば、昔の印刷はピンセットで活字を並べていたのが、今はデジタルパブリッシングです。

デジタルトランスフォーメーションはツールの使い方を一生懸命考えて、仕事の質と競争力を高めることが大事だと思います

秋田:最後に、会場の皆さんにお二人からメッセージをお願いします

原田:ともかく日本のホワイトカラーの生産性が低いというのは、国家命題だと思っています。ITベンチャーのサポートをしていますが、日本人の考え方はこの技術で何ができるか、です。世界で成功した事例を見ると、どういうビジネスモデルやライフスタイルを作るのかが先にあります。しかもオープンイノベーションというエコシステムでやっていて、1社完結型ではありません。その世界の中で、ひとりひとりがどういうミッションでどういう仕事をするかを真剣に考えなければいけない時代に来ていると思います。ぜひ、若い方にがんばっていただきたいと思います

正能:今日は若者側の世代としてお話させていただきましたが、普段はさらに若い人たちと接しているので、どんどん新しい感覚や価値観が入ってくる中で、どうやって受け止めて、どう活かしていくのかが問われる時代になったのだなと感じました。

ただ、ひとつだけ勘違いしてはいけないな、と思うのが、業務を効率化するのは、より大事にしたいところを大事にできるような時間を作るためであって、それ自体が目的ではないということです。最終的にはどう働いて、生きて、どう幸せになるのかが大事だと思います。そのためのツールであるということは、しっかり意識して使いこなしていきたいですね」

秋田:ミレニアル世代の求める豊かな生活や幸せな日々を達成し、同時に日本企業の生産性を上げていくために、まさに業務効率化が手段として必要です。国際競争力を上げていくため、待ったなしの状況にあると思います。本セッションが皆様の何らかの問題を意識するヒントになれば幸いです

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