このページの本文へ

睡眠の質を上げるウェア、スポーツメーカーなどが続々参入

2019年10月24日 06時00分更新

文● 大来 俊(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

睡眠時間や深さを計測できる睡眠アプリや、香りや光の揺らぎ、雨音などで眠りに誘う睡眠ギアなど、先端テクノロジーを駆使した「スリープテック」市場が拡大中。さらに最近では着て寝るだけで良質な睡眠を促す「リカバリーウェア」市場が盛況だ。

1兆円市場に
アンダーアーマーも参入

快適な睡眠をサポートするグッズが次々に世に出ています
睡眠を改善し疲労回復に導くとされるリカバリーウェア。スポーツメーカーも含めてさまざまな企業が参入している

「寝ても疲れが取れない」「寝付きが悪い」「朝すっきりと起きられない」――。働き盛りのビジネスパーソンの中で、睡眠に何らかの不満を持つ人は多いのではないか。実は筆者もその1人で、50代を目前にして睡眠の質が悪くなったことに悩まされている。

 厚生労働省の「平成29年 国民健康・栄養調査」によると、睡眠時間が6時間未満の割合は男女共に40代が最も多く、それぞれ48.5%、52.4%。一般的に大多数の人は1日7~9時間の睡眠時間が適切といわれる中、寝不足が常態化している中年男女の姿が浮かび上がる。同じ調査で「睡眠で休養が十分にとれているか」と聞くと、これも「とれていない」との回答が最も多いのが40代で30.9%。40代のおよそ3人に1人が“睡眠負債”を抱えているのが日本の現実だ。

 こうした現状から「不眠大国」ともいわれる中、花盛りなのが睡眠ビジネスだ。市場は今や1兆円以上とされ、今後も拡大が見込まれている。盛況な分野の一つが、先端テクノロジーを活用した「スリープテック」だ。スマホで睡眠時間や睡眠の深さを計測できる睡眠アプリや、香りや弱い光の揺らぎ、雨音やせせらぎの音などで眠りに誘う睡眠ギアなど、市場にはさまざまなサービス、グッズがあふれ返っている。

 一方、近年スリープテックとともに注目を集めているのが、着て寝るだけで疲労回復や良質な睡眠を促す「リカバリーウェア」と呼ばれる新しい衣服だ。先導したのが、2009年にプラチナなどの鉱物を練り込んだポリエステル繊維を使用したリカバリーウェアを発売した神奈川のベンチャー企業、ベネクス。着用するだけで、プラチナなどが発する微弱な電磁波が疲労回復を促すとされ、一部の愛好者の間で広がりを見せた。

 その後、2016年にはゴールドウィンが、光電子繊維を採用した「C3fit Re-Pose」を投入。人体から出る遠赤外線の熱を光電子繊維が吸収して肌に輻射し、体を暑くなり過ぎない自然な温かさに保温することで、深い眠りに誘う設計だ。現在も男女のスウェット上下などを販売している。

 さらに、プロ野球の読売ジャイアンツにユニフォームを供給していることでも知られる人気スポーツメーカーのアンダーアーマーが、2017年にアスリートの睡眠専用として「リカバリースリープウェア UA TB12」を発売している。半袖Tシャツや長袖Tシャツの裏地に、体の熱を吸収して遠赤外線エネルギーとして反射するバイオセラミック粒子「セリアント」を含有。遠赤外線によって血流が促進され、深く長く眠れるようになる、というのがうたい文句で、遠赤外線の輻射熱を利用する点はゴールドウィンの商品と同じだ。

着てみて実感した
リカバリーウェアの効果

 そして、リカバリーウェア市場が急速に立ち上がるのをチャンスと捉え、18年からは参入ラッシュが始まった。筆頭格が婦人服縫製国内大手の小島衣料だ。従来はBtoB事業に特化していたが、BtoC事業に新規参入を果たす切り札として、着るだけで安眠や疲労回復を促すパジャマ「リフランス」を開発し、18年度にテスト販売を行った。

 リフランスは、シリカやトルマリンなど7種類の天然鉱石の混合体「プラウシオン」を、奥深くまで染み込ませた繊維や生地を使用。プラウシオンは全身の血流改善や活性酸素除去などの作用が学会で発表され、“お墨付き”を得ているのがポイントだ。

 人間の体は、睡眠の始まりとともに深部体温(脳や内臓など内部の温度)が下がるが、この深部体温が下がりきらないと入眠が妨害され、睡眠の質が低下する。眠気を感じてくると手足が温かくなるのは、この深部体温を下げるために熱を外に逃がしているからだ。

 リフランスを着ると、プラウシオンが発する遠赤外線によって血流が良くなる。すると、血液が内部の熱を手足に運びやすくなり、放散が促進されることによって深部体温が効率的に下がりやすくなるという。同時にプラウシオンは副交感神経に作用してリラックス状態に導き、筋肉の緊張をほぐすとされている。生地は綿100%の天然素材であり、自然な着心地である点も特徴だ。

 実際に筆者もこのリフランスを、まずは今年8月頃に着て寝てみた。ただ、血流が良くなって温まったせいか、夏場の暑さや湿気の中で寝苦しくなり、寝付きが悪くなったように感じた。

 そこで10月の涼しくなった時期に再度着用して就寝。すると、早く眠りに付けて、翌朝の目覚めはすっきり。疲労が取れたせいか体が軽く感じ、日中も精力的に仕事や活動ができた。念のためその日の夜も着て寝たところ、翌朝も変わらず気持ち良い目覚めに。リフランスを使う前までは、疲れが抜けていない気がして二度寝の習慣が身に付いてしまっていたが、その悪癖から脱却。暑がりの筆者は、秋になってその効果が実感できた格好だ。

ウェア以外にも続々登場
睡眠市場はこんなに熱い

 小島衣料にはユーザーから「寝起きがすっきりした」(30代女性)、「寝付きが良くなった」(40代女性)、「疲労感の軽減を体感できた」(30代男性)などの声が寄せられている。常に効果が実感できる人、筆者のように季節による人など、個人差はあるのかもしれないが、テスト販売は好調で、パジャマ上下で2万円(税別)という高額にもかかわらず、1000着が売れた。

東急ハンズ新宿店に設けられた「リフランス」の売り場。ネット通販も展開している

 今年9月からは縫い目なく編み上げた無縫製ニットのスウェット上下、Tシャツ、アイマスクをラインアップに加え、リカバリーウェアシリーズとして本格的な販売に乗り出した。「百貨店や東急ハンズなどの雑貨店で売り場を確保するほか、ネット通販での販売にも注力する。ネット広告も積極的に打ち、健康を気遣う高齢者や睡眠に悩んでいる方に認知を広げていきたい」と、小島衣料の石黒崇社長は話す。

 他社の動きも活発だ。磁気ネックレスを展開するコラントッテが、磁気を使った休息ウェア「スイッチングウエア」を投入し、その他、AXF(アクセフ)、ACCAPI(アカピ)、A.A.TH(アース)など国内外のさまざまなメーカーが参入している。

 一方で、最近の睡眠市場は他の分野でも話題に事欠かない。例えば、通常のコーヒーとカフェインレスコーヒーを睡眠の前後で飲み分けることで、円滑な入眠と快適な目覚めを提供する「ネスカフェ 睡眠カフェ」(日本ネスレ)、集中仮眠により疲れを取る疲労回復専門ジム「ZERO GYM(ゼロジム)」(ビジネスライフ)、入眠から起床まで睡眠の状態によってベッドの角度が自動的に変わり、快適な睡眠を実現する「アクティブスリープベッド」(パラマウンドベッド)など、百花繚乱状態だ。

“着るだけ”という手軽さで睡眠の質を上げるとされるリカバリーウェアは、活性化する業界の中でも特に伸長するジャンルとして、今後も熱気を帯びそうだ。

(大来 俊/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ